280.邪天使-復活-
あっれー?いや、あっれー?
カウントを見つめながら、次どうするか考えていたら、いつの間にか明るくなって元の開けた高原地帯に立っていた。
どういう状況だ?よく分らないまま手の甲を見れば、生命力がゲージが見えない……。
やっぱり死に戻ったよな~……。
「あっやばい!」
つい今の状況が飲み込めずに、ボンヤリしてしまったが、まずは回復だ。すぐに緑と赤の液薬を取り出して、
治療術 範囲回復
生命力を回復して人心地つく。
「参ったな……どういう状況?」
『総員、復活したばかりで状況が飲み込めないだろうが、現在邪神の化身は大霊峰方面に移動中、ビエーラとカヴァリーが後を追っている。とにかく全員で追いついて邪神の化身を今度こそ倒しきる。ちなみに隊長はこの場のプレイヤーを復活させる為に死んだ』
アンデルセンさんの声で、現状説明があった。あったはいいが、隊長が死んだ?
『それじゃあ俺は隊長復活の為に〔アスクレピオスの杖〕を使うんで各自の判断で最速で邪神の化身を追ってくれ』
復活させるのかよ!
いや文句を言ってる場合じゃない!騎士団は早速馬を用意してるし、忍者達は既に己の足で駆け始めた。
自分も大急ぎで追わねば!重剣を腰の鞘に戻し、盾は背中に背負って、両手を空ける。
鋼鎧術 空流鎧
とりあえず、大霊峰目指して走り始める。
いくら術でスピードを早めたとは言え、所詮は重装備の速度低下を補う程度の物、更に移動速度を鍛えているのであろう忍者達には到底追いつかない。
それでも馬を準備中の騎士団よりは先に出発して単独高原を駆ける。
高原の魔物は大半倒したとは言え、通常魔物のリポップ速度は早い。避けて通れるほど自分は小回りが効かない。
ならば、
武技 撃突
高原で草を食ってる草食?魔物を弾き飛ばして走る。
後ろから追ってきて背中を突き飛ばされたので、振り向いて膝蹴りを頭部に打ち込めばその場に倒れ伏したので、また走り出す。
大霊峰は流石にそのシルエットを見逃す事はない。道案内がなくてもとりあえずそれっぽい方向に駆け続け、
『ビエーラの目印は矢だ!矢を見かけたら周りに報告!』
隊長からの指示が飛ぶ。残念ながら今の所自分はその矢を見つけていないが、とりあえず真っ直ぐ走り抜けよう。今の自分にはどんな障害物も障害物足り得ない!
時々そこいらを転がっている岩を弾き飛ばし、ただ真っ直ぐ走り抜ける。
何しろ自分は足が遅いのだから、真っ直ぐ最短を走る他無い!
「邪魔!!!!」
叫びながら魔物を蹴散らし、場合によっては魔物の方が逃げていく。
どれ位経ったろうか?とにかく必死に走り続けたのだが、誰とも合流しないし、誰も自分を追ってこない。
その時遠くから明らかに異音と言うか、地面が揺れる音が聞こえ、
「もしかして、さっきの地面を揺らす攻撃か?」
誰もいない事に心細さを感じたのか、つい独り言を言ってしまう。
そしてそこに続くのは、巨大な爆発音。
これは流石に魔物の出す音じゃないと、音の方向を向いて走り出す。
正直確信はないのだが、しかし今この高原でそんな巨大な異音を出すのは、明らかにおかしい。
走っている内に2発目3発目と聞こえてくるのだが、中々音の元に辿り着けずもどかしい。しかしこれは絶対戦闘音だろうと言う確信だけが深まっていく。その時、
「お~い!ソタロー!」
遠くから自分を呼ぶ声が聞こえると思ったら簡素な馬車が一台通り、荷台には重装備のヒーロー達が乗っていた。
「自分も乗せてください!」
声を掛ければこちらに近づいてきて荷台に乗せてもらえた。
「随分と進路を外れてたみたいだな!重装備とは思えぬ足の速さだったが、それでも方向が違えば永遠に辿り着けないぞ?」
代表してプロミネンスレッドさんが声をかけてきた。
「今は音に向かって走ってたんですけど、そんなに進行方向づれてましたか?」
「うん、なんであんな方から走ってくるのかちょっと疑問なレベルだった。まあ現地は馬持ちと足の速い奴等が先行して時間を稼いでくれてるだろうし、ピンチに駆けつけるのがヒーローというものさ!」
「駆けつける前に終わってたらどうします?」
「……それでも全力を尽くすのがヒーローだから!」
「そうですよね」
爆発音が一発鳴り響く度、まだ終わってなかったかと言う安堵と、これが最後の一発だったか?という焦りが心を支配し心拍数をいやがおうにも上げて行く。
そして、馬車が止まった。
大急ぎで飛び降りると目の前は低い崖、下ではトカゲのような生き物を見慣れた人達が囲んでいる。
つまり今の邪天使の形態はトカゲ型という事だ。
ふと、邪天使を見失う。
気がついたら爆発が起き、空中に舞い上がる邪天使と、そこに攻撃を集中するプレイヤー達。
「ソタロー!何はともあれ我等も行こう!まだ戦いは終わってないぞ!」
そう言うなり、崖際でポーズを決めて、そのまま滑り降りていくプロミネンスレッドさん。
更に別の赤い人がマイクのような物を持って滑り降り、緑の人もエレキギターの様なものを持って滑り降りていく。
一々崖際でポーズをつけてから行くのだが、自分はそんなポーズのような物は一つも持っていない。
鋼鎧術 天衣迅鎧
さあ、飛び込め!飛び降りるようなスキルは持ってないが、防御力で耐えればなんと言う事は無い!