27.ダンジョントライ
入って早々駆け寄って来るのは、イタチ?テン?イタチ科の生き物。
見た目は可愛らしいが、牙をむき出して完全に戦意むき出し。スキルを合成してしまって殺気は分からなくなってしまったが、攻撃しても問題ないだろう。
剣で掬い上げるように斬り上げて、さほど大きくも無いイタチ?は床に転がり、そのまま消えて小さな毛皮だけその場に残る。
いきなりの襲撃で周囲の様子を確認する余裕も無かったが、ダンジョン内部は氷の壁で出来ている。
不思議と内部は明るいが光源は不明。寒さを示すようにうっすらと靄がかかっている様に見える。
道幅は三人が横に並べる程度なので、余裕を持って自分が先頭、真ん中に術士のニャーコン、後ろをガンモとシラッキーって言う布陣で進む。
ちなみに、特に隊列を組んでる訳ではないので、何の効果も無い。
白い氷の壁は特に鏡のようにこちらを写すわけではないが、中々に寒々しくて【帝国】らしいダンジョンだ。
その後も、イタチ?が走り寄ってくるが、1匹いようが、2匹いようが、まあさくっと倒せてしまう。
後ろから攻撃してくるイタチもガンモとシラッキーが上手い事倒してくれるので、今の所問題ない。
ふと、嫌な予感を伴う音が頭上から聞こえ、咄嗟にニャーコンを突き飛ばすと上からツララが降ってくる。
盾で頭を庇い受け止めるが、多少のダメージを受けてしまう。
「コレがトラップかな?」
「そうだな。シラッキー、どうだった?」
「悪い、気が付かなかったわ。多分これ定期的に視界を切り替えないと罠とか見えないし、罠の仕掛けられてる場所に視点を合わせないといけないから、中々難しいな」
「まあ、大したダメージじゃないし、とりあえず進もう」
そのままイタチを倒しながら、時々降ってくるツララを盾でガードし、時折包帯で回復。
すると、妙に天上の高い大部屋に辿り着く。そして大部屋に4人が入るなり入ってきた道が塞がれてしまう。
大部屋の床はつるつると、よく滑りそうな、うっすらと姿が映し出される鏡面になっていて、
それ以外これと言って特徴の無い白い大部屋を観察していると、天上から黒い大きな影が降ってくきた。
ボスサイズのイタチだが、何故か二足歩行で弓を持ってる。
弓と言ってもなんとも雑な作りどころか、子供の落書きのような半月型の何か。
矢も番えずに大きく弓を引くと矢状のエフェクトが現れ、放つ。
先頭に立っていた自分に向かってきた矢を盾で受け止めるが、それでも貫通ダメージが結構重い。
そして、再装填が早い。あっという間に弓を引き、次の矢を放つ。
それも盾で防御しつつ距離を詰めるが、更に一射。
だんだん残生命力量が不安になってくる。
そこで、ガンモとシラッキーが飛び出し、ダッシュ。二手に別れ両サイドから距離を詰めるが、シラッキーに一射。
その場に転ぶようにして回避すると矢はシラッキーの頭上を抜けていく。
そして、その間に床の氷を滑って逃げていくイタチ。まるでスケートを履いているかのようにすいすいと、
それも背後も見ずに後ろに滑りながら更に矢をガンモに放つ。
二人が標的になっている間に[回復液]を飲んで、回復しつつ自分もイタチ?を追うが、
自在に滑って逃げるイタチに全く追いつけない。
二人も回復しながらイタチを追うが、追いつけずにジワジワ矢でダメージをくらい、回復のために足を止めざるを得ない。
ニャーコンは自分の後ろから出ないように上手くくっついて来てくれて、
丁度自分に矢が飛んできたタイミングで、放ったファイアーボールがイタチ?に直撃。
ちなみに放たれた矢は自分がきっちり盾で受けている。
その内時間切れになったのか、天井の上に帰っていくイタチ。
来た時の道だけが開き、それ以上何も起こることなく、すごすごと帰るしかなかった。
「うん、追い足がある人か遠距離攻撃の使い手じゃないと倒せそうも無いね」
「一応シラッキーが遠距離攻撃の使い手だが……」
「いや、あのスピードで動く標的には当てられないぜ」
「確かに滑って移動してたし、いつどこのタイミングで滑る方向を切り替えるかも分からなかったもんな」
「ん~でも、矢を放つ瞬間だけは直線に滑ってたな。その動きを読んで上手く狙い打つしかないか」
「でもあのサイズだと、何発当てれば倒せるのかも分からないぜ?」
「なんとか遠距離でデバフ掛けられる様な術か技でもあればいいんだがな」
「いや、ニャーコンが一発当ててただろ。ソタローの裏に隠れて、敵が矢を放つ瞬間に相打ちで攻撃しかないんじゃないか?」
「貫通ダメージが結構重かったし、最後まで立ってる自信が無いかも」
「それだけの重装備に盾持ちで、貫通ダメージが重いってのは辛い所だな……」
「俺も一発食らったしダメージもそれなりにきつかったが、ソタローの防御力だったらもっとダメージ軽そうな気もするけどな」
「もしかしたら、貫通ダメージ量が大きい攻撃なのかもな」
「まあいずれにしても、まずはあのイタチを倒せない事にはどうしようもないし、一旦引き上げて売った毛皮の金で道具やら整えて、再挑戦しようぜ」