276.決戦準備
邪天使監視の為に魔物を狩り尽くし、そこに順調に街を建設していく。
順調というか、異常なスピードで、といった方が正しいかもしれない。
各国余った資金を投入して、死者の平原に道を巡らせ、街道沿いに宿場街を作っていくのだが、メインは【王国】から【馬国】への道になる。
何しろ、邪天使の移動予測ルートが【馬国】方面になるので、そちらに人を割く比率が自然と多くなるのは仕方がないだろう。
一度空に飛ばされた隊長がしれっと戻ってきて、現状を【帝国】の偉いヒトと見て回ったそうだが、きっとこの程度の事は予想通りだったのだろう。
さっさと【帝国】に戻り決戦の為に奥義の取得を目指すらしい。
そして、自分の任務はというと、
「ソタロー!上からの指令だ。どうやら邪神の化身は既に【馬国】に入った模様、不審な中隊級ボスの消失が確認された。邪神の化身は他の魔物を取り込むことでエネルギーを蓄えていると見られる。その為【馬国】高原に生息する中隊級ボスを狩り、進行ルートを限定せよ」
レギオンボス狩りをしろという事らしい。ロデリックを通じてもたらされた任務に従い【馬国】へと向かう。
あまり馴染みのない国だが【馬国】の高原は広大な一枚MAPで、あちこちにレギオンボスが点在しているとの事だ。
【帝国】のボスの様にクエストやイベント的に現れるというよりは、普段からそこいらを闊歩している巨大魔物を避けながら、移住生活をするのがこの国のスタイルらしい。
大隊を組んで高原に入れば、あっさりとレギオンボスをひっかけ、戦闘に突入。
一体目は大きな鳥、クロスボウで撃ち落としたところに自分が全力で体重をかけて、再び飛び上がるのを阻止し、
その間に他の虫型レギオンボスも引っかけてしまったので、隊列を組んで押し潰す。
鳥を倒す頃には、獣型のレギオンボスに襲い掛かられたので、こいつも別働隊を作り倒した。
獣型は好戦的だったので比較的楽だったが、虫型が逃げ回るタイプだったので追うのが難しく、戦力を分散させつつも、何とか動きを止めてこれも倒した。
はっきり言ってこの高原、大隊で歩いているだけでいい稼ぎになる。
何しろ100人で戦う敵を1000人でタコ殴りに出来るのだから、大した印象もないまま倒し終わってしまうのだ。
こりゃ、楽だと思っていたら、はるか遠方でも戦闘の砂煙が上がり、他国も絶好調なのが見て取れた。
自軍を見渡すとみんな目が爛々と輝いている。
そりゃそうだ、稼ぎ時だもの。近くに友軍はたくさんいるし、戦力は明らかにこちらの方が上だし、倒せる内に倒しまくったもの勝ちだ。
という事で、獣型、爬虫類型、虫型と目に映ったそばから襲い掛かり殲滅、殲滅、殲滅!
日が暮れる前に、宿営所の建設をして、自分はご飯の準備だ。
何しろ稼ぎ時だからと連戦に次ぐ連戦だったので、皆お腹がすいているだろう。
爬虫類型を倒した時に食用の肉が手に入ったので、本日のメニューは、ローストトカゲ肉~!
作り方は簡単!まずは切った肉に塩をよくまぶす!
ニンニク、生姜、砂糖、はちみつ、料理長の赤い瓶で味付け!
そして、焼くだけ……。
「オーブン忘れてた!」
自分の言葉を聞いたルークがすかさず、
「簡易石窯がありますよ!」
と、宿営所と一緒に作られたやたらと大きな石窯に案内してくれた。
「なんでこんなのあるの?」
「こんな事もあろうかと、職人に依頼しておきました!やはり食事こそ力の源ですから念には念を入れておくのが【帝国】の行軍というものですよ!」
うん、理にかなってる!流石ルーク、あの隊長の下で鍛えられたと話すだけのことはある。全く抜け目がない。
そんなことを考えている内にも、下拵えの済んだトカゲ肉を石窯に放り込み、焼けたそばから配給していく。
やっぱり肉料理は、力がつくのか皆がっついているので、自分も一口食べると、すっごくジューシー!
なんか噛めば噛むほど味の出る濃い味の鶏肉?
現実で爬虫類は食べたことないが、レギオンサイズの通常魔物から採取出来た食材だし、ちょっといい物だったのかもしれない。
気が付くとバフが乗り、料理をする手が心なしか早く正確になったような気がする。
途中でつまみ食いをしておいて良かった!全部終わってからバフがかかっても意味がないところだった。
その後も、自分用のローストトカゲ肉をちまちま食べながら作業を続け、全部終わった所で一旦、他の事は大隊の皆にお任せする。
邪神の化身、邪天使との決戦は近い。多分?
話によると残る能力は、攻撃を防ぐ透明の壁、強固な壁すら破壊する衝撃、瞬間移動、完全隠蔽、必殺の剣、遠くの標的を消し飛ばす破滅の光だと、アンデルセンさんから聞いた。
つまり、残る能力的の数的には折り返しだ。
しかし、目的地が大霊峰の向こうだとするならば、【馬国】の高原からよく見える東の果ての山向こうという事だ。
敵の目的地は近い、どんな手で来るのだろうか?6つの形態をバラバラにして進むのか、はたまた残りの戦力を一つにして突破してくるのか?
しかし瞬間移動を使えば、一瞬で大霊峰まで辿り着くんじゃないかっていう?
剣聖の弟子が居れば、瞬間移動について少しは聞けたのだが……。一抹の不安を抱えつつ、ログアウト。