表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
274/363

273.地味竹藪刈り

 死者の平原のど真ん中にもかかわらず、明らかに武装をしていない集団がうじゃうじゃと集まっている。


 服装もどことなく動きやすさ重視。初心者服や生産者が着ているような服ならまだしも、小豆色ジャージなんかはどこで手に入れるのだろうか?


 手に持つのは、鉈やら桑やら手斧やら……、ちょっと地方の日曜地区清掃を髣髴とさせる集まりだが、一応ゲームの中だ。


 集団の前には隊長とアンデルセンさんが少し小高い場所に立ち、号令をかけようとしている。


 しかし、アンデルセンさんの、どこにいても規模がどうあれ、No.2オーラを出しているのは一体普段どういう生活をしていたら、ああなるのだろうか?


 「はいじゃあ、作戦を説明します」


 と隊長がいつもの気負わない雰囲気で話し始めると、


 「いや、もう集めたメンバーと格好で分かるわ」


 すかさずアンデルセンさんがツッコム。本当にいいコンビだ。


 そして二人で何やら話していたかと思えば、


 「うん、アンデルセンの予想通りなんだけど、この竹やぶを皆で開墾します」


 誰もがそりゃそうだろうなと思う指示が出た。


 当然アンデルセンさんのツッコミが更に入るが、その後お金の話になると、やはり隊長の金遣いはおかしいのか、やっぱりツッコマレている。 


 何のかんの話しているうちに自分達は勝手に作業をスタート。


 まずは<伐採>可能なプレイヤーが竹を倒し、<採取><採掘>可能プレイヤーが根っこをひっくり返し、掘り出す。


 さらに、竹の間に詰まった薮は<採取>プレイヤーがやっぱり刈り出す。


 そしてそんな作業の中一際輝くのは、プレイヤー最強の騎士さん。


 以前魔将の時に見かけて以来だが、いつの間にか邪天使戦にも参加していたらしい。


 まあ、そりゃそうか。最強の敵に最強のプレイヤーをぶつけるのは至極当たり前の発想だし、自分だって知り合いなら助けを求める相手だ。


 しかし、その作業スピードが明らかにおかしい、誰がどう見ても戦闘職には見えない作業効率!


 それの手際の良さはまるで、熟練の【兵士】が初期の任務をこなす様な無双状態……。


 何か隊長が未だにフラッと【料理番】をこなす時の分身をしているかのような処理速度を思い出した。


 騎士は【王国】の【兵士】らしいから、やっぱり通ずる物があるのかな?


 最強のプレイヤーは草むしりでも最強なんだな~。


 自分も<採集>をしつつ、飽きないよう程々に辺りのプレイヤーの観察をしながら、のんびり作業につく。


 そして、偶々隣にいた人物もやたら、気合の入った雰囲気を醸し出していたので、様子を伺う。


 白いジャージに麦藁帽子、手鎌を振るって一心不乱に藪刈りをする若い男性……が、急に振り返り、


 「おい!ソタロー!手が止まってるぞ!」


 「あ!白騎士じゃないですか!最強の騎士もあっちで凄いスピードで作業してましたけど、騎士団って草刈が得意なんですか?」


 「いや、マスターは困ってるヒトを助けてたら勝手に早くなったらしいが、俺は違う」


 「そうだったんですか。じゃあやっぱり邪神の化身戦の報酬目当てで?」


 「それが無いといえば嘘になるかもしれないが、何よりこの戦いは負けられない戦いなんだ」


 「そりゃ、何か意味ありげなワールドボスですし、勝つ気ではいますけど」


 「そういう事じゃない。必ず勝つと約束したんだ」


 白騎士から妙な気迫を感じ、ちょっと怯んでしまったが、それほどの思い入れのある人を邪魔しちゃいけない。


 「そうだったんっですか。じゃあお互い頑張りましょう」


 そう言って、刈場を移動する。


 すると隊長に目ざとく見つけられ、


 「あっソタロー!ちょうど良かった手伝って欲しい」


 「何かありましたか?」


 「うん、これだけの人数がいるんだし、炊き出しした方がいいと思うんだ。藪を刈るより料理の方が得意そうだし、こっちを手伝ってくれない?」


 「そういう事なら協力しますけど、何を作りますか?」


 「さっきあっちに平原の野生馬がいたから、馬肉料理にしようと思うんだけど、どう?」


 「馬肉ですか、扱った事無いですけど、何とかやってみます」


 自分が返事をするやいなや、目の前から消えるスピードでどこかに向う隊長。何かまた速くなったなって言うか、瞬間移動と変わらない気がする。


 まあ多分、隊長は馬を狩りにいったのだろう。その間に自分は料理の準備をするとしよう。


 まずは鍋にニンニクとオリーブオイルをひく。


 香りが出てきたら、玉ねぎとセロリを炒めて、


 玉ねぎが透き通ったら、ウィンナー、茄子、ズッキーニ?、人参を入れて更に火を通す。


 刻んだトマトを突っ込んで、ピーマンと料理用(酔わない)赤ワインを投入して弱火でコトコト煮込んで、塩コショウで味付けと調整!


 そこで隊長が案の定馬肉を引っさげて戻ってきて、


 「何作ってるの?」


 「馬肉ステーキにするなら、付け合せにラタトゥイユもいいかなと思いまして」


 「へぇ~~……トマト味か……。自分は味噌煮込みでも作ろうかな」


 と、どうやら隊長はトマトがあまり好きじゃないらしい。


 付け合せは出来たので、ステーキを焼いて付け合わせと一緒に盛って、出していくとどんどん消えていく。


 どうやら、みんなの口に合ったみたいでよかった。


 そんなこんな交代で休憩しつつ、作業を進める事、数日。周辺の竹藪が完全に綺麗になった。


 当然ながらその間、炊き出しは自分達以外にも有志のプレイヤーが代わる代わる作りに来てくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 有志のプレイヤー 女性と、帝国兵士……………ww 後は、本当の趣味料理な人(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ