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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
269/363

268.邪神の化身進捗状況

 とっくに生命力は回復したが、不思議な疲労感に体を動かす事が厭わしい。


 「考えうる最高の結果を出してくれた事にまず礼を言おう」


 いつの間にか横に立っていた気配の静かな男が、話しかけてきた。


 「ブラックフェニックスの依頼人なんだから、向こうに行かなくていいんですか?」


 「そうだな。まだ全てが終わったわけではないし、すぐに向うが、君は流石に限界まで力を振り絞ったろう?」


 「どうなんでしょうか?動きたくないという気持ちだけはありますね」


 「ふむ、筋肉の世界という物は縁がないが、途中から明らかにあのベガの攻撃を受けにいっていた様に見えたな。生命力的なダメージ以上に、筋肉同士で受け取った情報量が多すぎたのだろう。封印してもらったベガの肉体は我等が預かる。君は帰ってゆっくり休むといい」


 「マダム・アリンはどうするんですか?」


 「既に逃走し、ブラックフェニックスが追っている。何度でも言うが君は最高の結果を出してくれた。報酬は君の上司から受け取ってくれ」


 このあとの記憶は無い。


 別に記憶を操作されたとか、そういう大仰な話ではなく。普通に【古都】の【兵舎】に帰って休んだだけだ。


 大事な戦いの最中だった筈だが、燃え尽きてしまった自分はただログアウトするのがいっぱいいっぱいで、


 再ログインした時には空腹と渇水が限界を迎えていた。


 「料理長!お願いします!何も言わずに厨房を貸してください!」


 「その前に手を洗え!事情は知ってるから、なんでも好きな物を食え!」


  そう言って差し出される食材の山!ただ本能の赴くまま、まずは肉!アリェカロは硬いけど味は牛寄りだし、煮込めば柔らかく食べられる気がしなくもない。


 そうなるとまずは、薄切りアリェカロ肉と、細切り玉ねぎを炒める。


 そこに砂糖・酒・みりんを投入していくのだが、この辺の調味料は料理長が指し出してくれた物からそれっぽいやつを選んで突っ込んでいるだけだ。特に酒に関しては使う量から火の通り具合までしっかり見られている。


 本当にこのゲームは未成年の飲酒に厳しい。


 いい感じに色づいてきた所で、青い瓶のスープの元と醤油とすりおろし生姜を投入!


 さらっと煮立てて一回そのままにして置くことで、味が染みるのを待つ。


 とは言え何もしないで待つわけがない。ご飯を炊く!ホッカホカの白ご飯!はじめちょろちょろ中ぱっぱ!


 ゲームなのでそこまでシビアな物ではないのだが、今日は自分へのご褒美のつもりでこだわってみた。


 ご飯にさっきの煮込んだ牛肉をかければ、牛丼の完成だ!


 自分へのご褒美に牛丼?と思うかもしれないが、やはりコレこそ大変な仕事を終えたあとのご褒美飯じゃなかろうか?


 そりゃチェーン店に行けば、未成年の自分でもお手頃価格で食べる事は出来るけども、そうじゃない。


 これは特別な牛丼なんだ!


 丼を持って、食堂で食べようとすると、ルークが目を輝かせながら待っていた。


 「ソタロー!一人で随分美味しそうな物食べようとしてるじゃないですか!」


 「なんで、気がついたか知らないけど、ルークも食べる?」


 「勿論!幸せは共有して何ぼですよ!」


 と言う事なので、ちょっと多めに作っていた牛丼の残りをルーク用に盛り付けて渡す。


 ちょっと汁ダク目に作った牛丼だが、米が程よく汁を吸って甘しょっぱい!


 アリェカロの肉は焼くと硬いが、煮たらやっぱり柔らかかった。コクというか、味わい深さが煮ても衰えない。凝縮された旨味で口が唾液で満ちる。


 ガンガンかっ込めば、脳が痺れ、ただ無限の満足感に溺れた。


 どうやらルークもお気に召したらしい、あっという間に平らげ満足そうな顔をしている。


 「そう言えばソタローは大変な任務だったみたいですね。お疲れ様です」


 「……色々と関わってる内密な任務だと思ってたんだけど、そうでもなかったのかな?」


 「いえいえ、任務の内容は知らないですよ。ただ、ソタローが裏社会で脳筋の名前を欲しい侭にする人物を打ち倒して、名実共に『脳筋』になったと聞いて!」


 「そう言えば、そんな事言われた気がする。なんかやたら危険な匂いのするヒトから、脳筋の称号?を認められたとか?」


 「そうです。剣聖の名前で正式にソタローは『脳筋』であると発表されましたよ。今後は自称脳筋共に狙われるかもしれないですね。もしくは世界中の筋肉達から羨望の目で見られたり、慕われたりする事もあるかもしれません」


 なんてこった。ログアウト前は疲れすぎてよく考えていなかったが、今後は自分が脳筋なのか……。


 「どうしたんですか?ソタロー?」


 自分が考え事をしていたのを心配されてしまったので、ちょっと話を逸らす。


 「ああ、いや……ところで邪神の化身はどうなりましたか?」


 「それだったら、霧の中を泳ぐ魚を倒したとか。ただまだ霧は消えないので、次の作戦を考えているみたいですね」


 「じゃあ、まだ自分の出番はもう少し先ですね」


 「ところが、別の依頼が隊長から出てるんですよね~!」


 「え?そうなんですか?」


 邪神の化身は瘴気を纏っていて、NPCは戦闘に参加できない筈なのに妙に楽しそう?


 「実は、霧周辺の監視を隊長から依頼されたらしくて、自分達も平原に行って監視任務が始まるんですよ!」


 「へ~ところでなんでそんなに楽しそうなんですか?」


 「何しろ公費で他所の国に行って、任務ですからね~どんなご飯が待ち受けてくれるのか、今から楽しみですよ!」


 今牛丼食べたばかりなのに、ルークは他所の国に行っておいしい物を食べる事が優先のようだ。


 さて、自分はどうしようか?

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― 新着の感想 ―
[一言] ルークは、ただ飯にわっくわく あぁ、だから隊長と一緒に居た間、ずっと男だと信じてたのか…………… ルーク、女子力何所に忘れてきた(笑)
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