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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
254/363

253.北辺の邪神の尖兵

 赤い巨体から溢れ出すのは黒いゼリー状の異物、その臭いは自分にとって結構慣れた強敵の臭い。


 大急ぎで鞄から取り出すのは〔竜の歯片〕〔竜の鱗片〕〔竜の爪片〕だ。


 ドラゴンを倒すのに、竜の末端の更に一部で足りるのか?不安しかないが邪神の尖兵の対抗する手段がこれしかない以上、仕方ない。


 黒いゼリーはまるで今迄の体の形を覚えていたように、ドラゴンと同型となるが、その姿に偉容も何もない。


 例えばドーベルマンがいたとして、その姿を模しただけのコーヒーゼリーがあったら、怖いだろうか?


 「まさか……こんな所で……」

 「赤竜様の化身は邪神の尖兵に取り付かれていると聞いていたが……」

 「く、グフッ!ソタロー!お前だけでも逃げろ!」


 うん、自分以外はかなりのピンチを感じているみたいだ。ちょっと認識を改めよう。


 しかし、巨大な力を持つであろう赤竜の化身が同化してまで抑えるほどの相手だろうか?それとも時間をかけて、かなり弱らせたのかな?


 今迄、楔で戦ってきた邪神の尖兵よりよっぽど密度が薄い気がするんだけど?


 四足で立っていた邪神の尖兵が、まるで赤いドラゴンの真似をする様に前足で、こちらを踏み潰してきたので、氷の剣で斬り落とせば、あっさりと蒸発して消えてしまう。


 ついでに、もう片方の足も斬り払えば、バランスを崩して首が手頃な位置に来たので、断頭する。


 面倒なのは部位を破壊した所で、あっさり再生する所だ。


 やや体積を縮めた偽ドラゴンは、まるでオリジナルを真似するかのように口元に何か溜め始め、そのまま放たれる赤い閃光を氷の盾で弾く。


 そして、吐き出すポーズまで真似たのが運の尽き、低くなった首を再び切り落とし、頭部分が丸ごと蒸発した。


 コイツ弱い邪神の尖兵だなと断定!何しろ赤いドラゴン、つまり赤竜の化身と同化してる所為か自由に動けないし、何か密度が薄いのに虚勢を張って大きく見せようとしてくる。


 次から次へと、斬り払えばその分だけ体積が縮んでいくだけの薄黒い臭いコーヒーゼリーを只管殴る。


 何しろ【兵士】達は瘴気の影響で動けないのだ。瘴気が苦手とは聞いていたけど、ここまで完全に動けないとなると、やはり邪神関係のクエストはプレイヤーでクリアするしかないんだな~と実感してしまう。


 そんな事を考えていたら、追加の様に邪神の尖兵が赤竜の化身から吐き出され、元の体積に戻ってしまった。


 これってもしかして、赤竜の化身が敵の強さを調整してるのか?


 となると、長期戦と言う事になる。空腹度はまだ大丈夫か?お腹の空き具合的にはまだいける気がする。となれば黄色い丸薬を取り出して、


治療術 自己回復


 体力を継続回復状態にして、邪神の尖兵をみじん切りにしていく。


 時折爪のついた<蹴り>も使いつつ、押して押して押し斬る。


殴盾術 獅子打


 盾で思い切りぶん殴ると飛び散り、蒸発していく邪神の尖兵だが、いつまで経っても核が出てこない?


 そんな事を思っていると、ブルンと震えた赤竜の化身の口から、吐き出されるでっかい魔石?


 このサイズの核だと、ちょっとやそっとの邪神の尖兵じゃなかったのかと、勝手に目方で敵の実力を測ってしまう。


 それだけの大きな石に、瞠目し息を飲んだのは自分の戦いを見守ってくれた【兵士】達だ。


 ゆっくり核に近づくと、そこから最後の力を振り絞るようにゼリー状の黒いブヨブヨが撒き散らされ、

纏っていく。


 それは地を駆けるには最適そうな四足歩行の獣の姿、スレンダーでいてしなやかな姿は猫科の大型肉食獣を思わせる。


 筋肉も何も無い筈なのに、不思議と力を溜めるように四肢を曲げるので、


殴盾術 獅子錨


 そのまま重力を増してやると、伏せのポーズになってしまったので、頭を真っ二つにカチ割ってやった。


 頭を再生する間もなく、前足で攻撃してきた所を氷の剣で斬り払う。


 崩れ落ちながらも再生する敵をよく観察すると、黒の中にも縞模様があり、虎だったのだな~と何かよく分らない納得感に満足する。


 そして、竜の時同様口から吐き出される赤い光線を盾で防ぎ、また斬れる場所を斬り落としては体積を減らしてやり、虎型の邪神の尖兵を削り倒す。


 あと一息で、核に辿り着くなと言う所で、動きの止まる虎型邪神の尖兵に、更に一歩踏み込む。


 そこに、虎柄の縞が急に伸びて全包囲攻撃で、自分を取り巻いた。


 思わず、


 「あ……やっちゃった……」


 声が漏れてしまった。


 ここまで来て失敗したと、深い悔恨に奥歯を噛み締め、悔恨する。


 なんとか核を潰せないかと、必死に手を伸ばし重剣を差し出すと、周囲が赤く染まった。


 そのまま核を突き刺し、黒いブヨブヨが霧散していく。


 その黒い霧の向こうでは赤い巨体がこちらを見つめている。

 

 全く種族も何も違うのに、赤竜の化身が笑ったと感じ、背筋に冷たい汗が流れた。


 『勝負しようぜ』


 頭に流れ込む声に、全身が痺れるのを感じ、不思議と全身が燃え上がるように熱くなる。


 きっと自分も笑っているのだろう。

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[一言] 強敵?( ̄□ ̄;)!!
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