250.再戦北辺の怪物-強化-
自分を中心に【重装兵】隊が正面、残りの隊は左右に薄く広がり戦場を囲み、U字に隊列を作りつつ、ステゴサウルの最後の一体に止めを刺した。
生命力の強制徴収に抗う為に【術士】と【衛生兵】をフル稼働しつつ、自分のバフも忘れない。
鋼鎧術 多富鎧
ここからは本格的に自分も最前線に出て戦わねばならないだろう。
揺れる地面から生えてくる巨大な影を見つめながら集中力を高め、
壊剣術 天荒
殴盾術 獅子打
全身の筋力が鎧を押し上げる感触を感じる。
「ここからは前回の続きになります。油断はしないで欲しいですが、勢いを抑える必要もありません。行きます!」
八陣術 鶴翼陣
高まる士気にざわつく【兵士】達に不安や惰弱さは一切感じない。どの術でもステータスにかなりの補正が掛かっている筈だが、それに振り回されている様子もないし、自分は自分の戦いに集中しても大丈夫だろう。
現れた10体のティラノサウルスを包囲して攻め潰すべく、まずは自分から一歩踏み込み戦線を押し上げて行く。
正面のティラノサウルスと目が合うと、微妙に口元が歪む。北辺の怪物は自分の事を覚えているのだろうか?
雪を巻き上げながら大きく踏み出すティラノサウルスの足音は、見た目の派手さと裏腹に雪にかき消されてしまう。
大きく開いた口が、自分を噛み砕こうと迫ってきた所で、
壊剣術 天崩
強大化した剣のエフェクトで正面から頭を叩き伏せ、前のめりに雪に頭を突っ込むティラノサウルスに駆け寄りながら重剣と盾を仕舞う。
雪から頭を引っこ抜こうとするティラノサウルスに飛び乗り、
鋼鎧術 天衣迅鎧
武技 鋼締
光球を吐き出させないように、全体重で踏み潰しつつ大きな頭を支える首を締め上げる。
自分が動きを封じているのをいい事に、仲間達が一斉攻撃でティラノサウルスを攻撃するが、敵も然る者で、生命力が削れてきた所で様子が変わり、背中の赤い体毛が棘の様に逆立つ。
それまで自分の体重に抗えなかった筈だったのが、急に足場にしていたティラノサウルスの頭が動き始める。
すぐさま担いでいた中盾を左手に持ち、精神力を込めて中盾の面で地面をぶん殴り、
殴盾術 獅子錨
発生した重力場で自分の重量が急激に上がり、再びティラノサウルスの頭を雪の中に沈めた。
ただ仲間達も重力場に取り込んでしまい、攻撃の手数が減ってしまう。
どうした物かと周囲を見回すと、範囲外から、
「ソタローが足止めしてる個体からトドメを刺しますよ!」
とルークが仕切って矢の雨を降らすことで、倒しきってしまった。
獅子錨 の重力場と 天衣迅外 を解除し、次のティラノサウルスに向おうとすると、最初の一体が倒された事に呼応する様に、全てのティラノサウルスの背中の赤い毛が逆立ち始める。
一体倒すごとに強化されるのだとしたら、一気にまとめて倒した方がいいのか?否そんな器用な事は出来ないし、力づくで押して押して押し切るのみだ。
重剣と中盾を構えなおし、次の一体に向かうと敵もこちらを向いて、大きく開いた口の中にいきなりエネルギーを溜め始める。
壊剣術 天荒
殴盾術 獅子打
鋼鎧術 耐守鎧
吐き出された光球に剣盾鎧を総動員して立ち向かい、直撃を正面から耐え抜く。
その間に周りの仲間達が、隙だらけのティラノサウルスに仕掛ける。
プスプス音をたてながらも、その場で耐え切った自分は赤と緑の混ざらぬ薬液を取り出して、
治療術 自己回復
食らったダメージを無に戻す。
その間にも【重装兵】が一人ティラノサウルスに噛み砕かれ倒されてしまった所を【衛生兵】が安全地帯へ連れ出した。
更に【重装兵】隊のムジークが長柄鎌にエフェクトを乗せてティラノサウルスを傷つけると、ティラノサウルの全身が真っ赤に変わり、同時に元の色の残った部分が青黒い模様のようになった。
そこで、自分が足元に追いつき、足の指先を思い切り叩き潰す。
それによって横倒しになったティラノサウルスに何人か巻き込まれたが、今はかまっていられない。
一斉に攻撃を仕掛け、とにかく起きられない様に一歩方向から押しまくり、最後に頭を叩き割って、この個体も倒しきった。
やはりと言うか、想像通りというか、周囲のティラノサウルの体の色が変化していく。
どうやら色が変化したティラノサウルスは足が速くなったようで、遠くから一体こちらに向って走ってくる個体がいる。
そこで近くにいたムジークが、
戦陣術 激励
戦陣術 壁陣
他の【重装兵】達と戦列を作ったのでそこに自分も入り、走ってきたティラノサウルスを迎え撃つ。
頭を低く下げ、頭突きしてきた所を
殴盾術 獅子揺
足場を揺らして体勢を崩してやると、勢いの弱まるティラノサウルスにチャーニンが長柄鎌で足を刈り取って転ばせた。
コイツも蛸殴りにして、殴り潰す。
本来の中隊級ボスなら100人がかりでなんとか倒せる程度の筈なのだが、ティラノサウルスは一体倒される毎に強化されこそするものの、他の攻撃は単調なのでこれならなんとかなりそうだ。
蛸殴りにされているティラノサウルスは、尻尾に棘が生え始め、もし振り回されたら大きな被害が出るだろうと予想こそさせてくる物の、今は横倒しのまま徹底的に起こさない事に集中している為、奮う機会もなく倒された。