248.再戦北辺の怪物-食事-
整列するのは北辺の怪物討伐大隊。その装備は【帝国】軍正規兵とは大きく異なり、不思議な感覚だ。
【重装兵】の大盾は白く、まるで高級な白磁器の様な見た目ながら、その性能がそん所そこらの盾とは一戦を画す物だと言う事は十分に理解している。
その他の兵科の装備にも積極的にセラミックが使用され、軽いのに強いを実現しているし、つなぎに使われるステンのチェインがどれだけ火精に強いのかも加味すると、最早完全に特化装備と言ってもいいだろう。
これで火精の得意な【砂国】や【王国】と戦争したらどうなってしまうのだろうか?ちなみに【海国】の得意な水精にも強いらしいので、訳が分らない。
ちなみに武器は【帝国】で山程採れる鉄製中心だが、それはクラーヴンさんの得意分野となっている。
つまり鉄専門のトッププレイヤーの作る全力鉄製武器であり、その武器で戦えない敵は多分いない。
クラーヴンさんは量産品と言っていたが、性能を聞く限り大型ボスを倒した時のような特典を使用していないと言う意味でしかない。
つまり特殊能力の無い高性能武器と言う事になる。
しかも何を考えているのか【兵士】達に取材を行い、投擲武器まで製作しているのだから、消耗品まで異常性能と言う始末だ。
【歩兵】の背中に担がれている短槍の威力が既に一級品というのは、オーバースペックと言う物ではないだろうか?
まあ物理だけでも強化されたんだから良かったじゃない?と思ったが、生産系トッププレイヤーの横のつながりは、そんな物ではなかった。
そもそも自分のアンダーアーマーである全身タイツを作っている皮革職人が【帝国】にいる上、術士装備といえば木製武器と布防具らしい。
そう……木と言えば【森国】に続く大量生産地が【帝国】であり、それ故クロスボウが発展してるとの事だ。
鉄と木の量産地である【帝国】にその職人がいないわけも無く、ビエーラさんのクロスボウを作っている職人のつながりで強力な杖も量産を可能とした。
最後に布防具だが流石にこれは無理ですよね!うん無理なものは仕方ない……。って言うか現時点で強すぎだし、一応極寒の【帝国】において温かい服の開発は進んでいるので、それで十分だろう。
自軍の陣容に何か頭が痛くなってきた所に、ポーさんがやってきた。
この人は【帝国】の料理系プレイヤーで、ちょっと地味な割りに一度イベントで優勝していると言う華々しい経歴を持つ人でもある。
「ソタロー君!なんか大変なクエスト受けてるってクラーヴンさんに聞いたから!」
そう言って、何やら大きな箱を手渡してくる。この人が持ってくるといえばほぼ確実に食材だろう。やはり体力と言うのは重要だし、素直にお礼を言っておくのが吉だろう。
「ありがとうございます。多分これご飯ですよね?【兵士】達も喜ぶと思うので、決戦前に食べさせてもらいます」
「うん!そうして!温めればすぐ食べられる魚スープと肉料理が入ってるから、焼きパンと一緒に食べてね!」
「じゃあ、現地に焚き火かオーブンを作らないとですね」
そんな会話をしていると、ムジークがニコニコしながら焼けばすぐ食べられるパンを箱で目の前に置いていくので、もうパン食不可避である。
そうして、準備が整い一斉に北辺へと出発。一度は行った事ある地なので多少余裕もあり、サクサクと現地まで移動。
雪と氷の広がる真っ白な非現実的光景を前に、食事をする事でここが勝負所だという認識を新たにする。
何かの白身魚と根菜を具にしたお腹に溜まるスープは透き通っている割に淡白すぎる事もない。
そして肉料理として渡されたのは安定の串焼きだ。
妙にスパイシーと言うか下味のしっかりついた肉はしっとりしていて、それでいて活力の沸いてくる不思議な味で、極寒の地に負けないほど体がポカポカしてくる。
それらをムジークのパンを焚き火で炙って、それと一緒に食べるのだが妙にお腹に溜まりそれでいて限界を越えてエネルギーを溜めている気がしなくもない。
気がつくとバフが複数ついていて、中には食欲と言うのもあるが、つまりは食べられる限界量を増やす物だろうと仮定するなれば、体力回復の底上げに繋がるし悪いバフじゃないだろう。
おおよそ全員食事が食べ終わった所で、再び氷像地帯に行くとまた頭の赤いワニの様な恐竜が凍ってその場に佇んでいる。
いきなりティラノサウルスから始める事は出来ないのだな~とも思ったが、敵は地中でエネルギーを溜めている存在だし、致し方ない。
まずは陣形だが、どうするか?
ワニっぽい敵はある意味力押しでひき潰せる程度の相手だし、何でもいいのだが……、ステゴサウルスの時に最大火力を使いぶっ潰したいと言う気持ちもある。
ここは 衝軛陣 を選択し、一先ずバランスのいい陣形で様子をみようとミランダ様と相談して決めた。
先陣に【歩兵】が固まり消耗が不安な陣形ではあるが、敵の弱い序盤なら多分大丈夫だろう。
なんなら自分が先頭に立つような陣形で行きたかったのだが、それは周りに止められてしまったので仕方ない。
北辺の怪物と再戦開始だ!