247.対北辺の怪物準備完了
ガイヤさんとの闘技の後はログインする度に、情報収集を続けつつ<治療術>用の薬の生産練習に勤しむ。
ちなみに薬作りはカピヨンさんがいない日でも【古都】の診療所に行けば、薬の生産をさせて貰えるので、山に入って薬草を集めてきて薬を作るだけ。
何しろ自分の作る薬は<治療術>でしか使い道の無い術の媒介なので、薬草の種類もシンプルだし全部色分けされてるし、お手軽そのものでしかない。
偶に間違ってハーブなんかも手に入るが、これは料理長の所に持っていけば調味料の瓶と交換してもらえるので、それはそれで腐る事もない。
いつからか、気がついたら二種類の薬草を混ぜて使う事も可能になったので、やっと赤薬草の出番となった。
基本的には赤薬草を混ぜて一緒に煎じたり、潰して丸めるだけで効果が跳ね上がるのだから使い勝手良すぎる。
まあ汎用スキルを取得してから随分と使用しないと辿り着けない術だし【衛生兵】との縁もあるから、手に入れるまでの道のりが長い事も踏まえての、効果の高さ。つまり運がよかったと捉えておこう。
そして、もう一つ分ったのだが、体力と言う曖昧な何かについて理解が進んだ。
お腹が空くと体力がなくなる。もしくは体力がなくなるとお腹が空く。この相関関係は間違いないが、どうやら見えない許容値というか数値に体力と言うのが設定されているっぽい。
例えば自分が連戦して疲れるのは、単純に空腹になるからじゃない。別に体力と言うのを消耗しているので、それの残量によってパフォーマンスが徐々に下がっていくのだ。
それは連戦のみならず、一回の戦闘でも粘られたり、自分が全力を振り絞るような攻撃を繰り返すとグッと消費してしまう。
その体力回復に食事をして溜めたエネルギーが使用されて、お腹が減ると見て間違いないだろう。
だがそれは自然回復であり、生命力や精神力よりはよっぽど回復スピードが早いとは言え、連戦中などは回復が追いつかず、疲労状態になると見て間違いなさそうだ。
そして黄色の薬草はその体力を一気に回復したり、丸薬なら自然回復速度をかなりアップできる。
問題は消化速度を早める様な仕様らしく、お腹が空くスピードも早いという事。
もしかしたら最大体力や最大空腹度もステータスとして設定されていて、徐々に上昇するのかもしれないが、今の所被験者は自分だけなので、比較対象がいない。
もしかしたら食べた物によってもその体力回復の仕方が変化するのかもしれないが、自分はまだそこまで料理系の知識がないのは、いずれ研究の余地ありと言う事にしておこう。
そんな事をしていたらクラーヴンさんから連絡が入り、ゴドレンの店へと向う。
「あの!装備が出来たって!」
「ああ、1000人分とあって時間が掛かっちまったが、仕上がりは悪くない。量産品としては十分な出来だろう」
「ポッターさんもありがとうございました」
「僕はずっと作りたかったセラミック装備を好きなだけ作れたからそれで十分だよ!しかも兵科に合わせて複数種作らせて貰ったから研究も捗ったしさ!」
二人共十分満足と言う顔だし、きっといい物が作られたのだろう。あとは自分がしくじらない様に全力を尽くすのみ!
「じゃあ、装備の説明を聞いていけ!まずは金属装備の方だが【帝国】の【重装兵】に合わせて、チェインメイルを基本としているが、バランスのいい鉄とこの前のイベントで指定されてたステンを使用し……」
これは参ったと思い、ポッターさんに顔を向けると、
「うんうん、安心したまえ!まず大盾はセラミック製だが金属と比べかなり軽く、行軍が楽になるだろう。その上で防御力、熱や酸耐性も十分!修理不可と言う大きな弱点を補うだけの高性能なんだ!体に馴染むほど使い続けられないと言う不利な点は認めるけど、今回のような特化型の敵への特殊装備と考えれば……」
こっちはこっちで困った事になった。
つまり、どちらの装備も高性能だという事は間違いない。トッププレイヤー達が合作した量産品を超える超量産品装備が国から支給される予算ギリギリで作られたと言う事らしい。
なんならもう、予算なんか知らんとばかりに持ち出しでこだわり抜いてしまったらしく、何か二人は研究費のつもりで別にかまわないつもりだったとの事だ。
だったと言うのは、途中監査に来た軍所属のヒトに開発段階装備を見せた時点で、驚いて引き返し、予算増額を認められたという話だ。
後は自分の北辺の怪物討伐結果如何と言う事で、追加報酬もあるかもしれ無いという事。この人達は本気で予算を材料費と研究費で使い尽くし、手間賃とかそう言うものは全て切り捨ててしまったらしい。
変な所で利益度外視で本気を注ぎ込むのがトッププレイヤーの所以だろう。
こういう人達に自分の装備を作って貰っていると考えたら今更自分の装備が怖くなってきた。
もしかして、自分の装備ってちょっと異常なんじゃなかろうか?でも今やジャストフィットした白装備に変な所は一つもないし、多分大丈夫……。