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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
231/363

230.国務尚書への取次ぎ

 「すっかり忙しくなって現れなくなってしまったと思ったら、国務尚書に会う方法を知りたいと?」


 「すみません師匠、困った時ばかり頼りにしてしまって……」


 自分が今回頼ったのは、セサル・ホアン師匠兄弟だ。何しろ貴族の中で縁の深い相手といえば、この二人がまず筆頭と言ってもいいだろう。


 確かに師匠に言われた通り、最近修行をサボってはいたし、言い訳は出来ない。当然ながらまだまだ教わる事はあるし、更に強くなる上で二人の教えは必要な物だろう。


 「ホアンよ……我らでもまだソタローの役に立つ事が出来るんだな?」


 「そうだね兄さん!すっかり立派になって独り立ちし、噂では北辺の怪物討伐の指揮を任されるに至ったと聞いているのに、まだ僕達をちゃんと頼ってくれる。それがーソタローだよ」


 すると、いつもより目のハイライトの輝きを増したセサルさんが、両肩をガシッと掴み、こちらの目を見ながら言う。


 「こんな不甲斐なく、まだまだ未熟な我らを未だに師と仰いで、こうして訪ねてきてくれるなんて!なんて本当にいい弟子なんだ!」


 「そうだね兄さん!どんなに偉くなっても変わらぬ謙虚さを備えた我らの弟子に協力できる事なら何でもしよう!」


 「あの、本当になんとお礼を言ったらいいか分りませんが、自分が強くなるにはまだまだお二人の指導が必要です。ただ最近あまりにも筋肉で物事を解決してばかりで、北辺の怪物ともなると自分にはお手上げでした。どうにか赤竜の情報とヒトを率いる為の新たな力が必要なんです」


 それを聞いた師匠兄弟は、お互いに顔を見合わせ目で会話している?


 「つまりソタローはより上位の戦陣術を必要としている訳だね?確かに我らにどうにか出来る事ではないが、国務尚書へ取次ぎを頼むのは間違いではない。もしかしたらそれすら見越しての任務だったのかもしれない!」


 「確かに【帝国】指揮官達が共通して使う<戦陣術>には上級術が存在しますが、それこそ選ばれし者の術となっている筈です。ソタローに覚悟はありますか?大軍の指揮官、将と呼ばれる地位につく覚悟は!」


 「えっと、どういう事でしょう?上級術があるのは分りましたけど、将って言うのはまだ先だと思ったんですけど?取りあえず【上級士官】と堂々と名乗れるような実績作りが必要で任務を言い渡されたんじゃないですか?」


 「ふふ、1000人を率いるという事は一国の軍の一角を任されるに等しい。そしてそれだけの大人数を率いるにはそれ専用の術が必要となる。同時にそれは戦況一つ一つに惑う事無く大局を見て広く大きく軍を展開させる事に繋がる。陣形と戦略を決め、局地的な部分は他者に任せる事で成り立つのが、将というものだ」


 こう、なんていうか敢えて核心に触れないような言い方は、詳しい事は国務尚書に聞けって事なのかな?


 今の所思い当たるのは以前【座学】で集団戦について習った時に<戦陣術>の原型がまだ残ってるとかそういう話なのだが、それとは関係ないのだろうか?


 言葉の端々から予想出来るのは、上級術と言うのは今までのように部隊や中隊を動かすような小回りの効く術ではなさそうって事だ。


 本当に大軍特化の指揮官になるかどうか、決断の時か。だが隊長も確か<戦陣術>使いだった気がするし、敢えてこのまま現状維持という選択も出来るのか?


 「その上級術について詳しく聞きたいです」


 「分った。僕達から父上に伝えて、速やかに国務尚書とあえる段取りをしようじゃないか!未来の【将官】の為にね!」


 そう言って、自分の願いを聞き届けてくれる師匠兄弟だったが、一旦ログアウトして翌日ログインした時には、既にアポイントが取れていつでも国務尚書宅に来るように兵長に伝言があった。


 国務尚書って政治のトップじゃん。なんでこんな一瞬でアポイント取れるの!って思ったが、そもそも気になる事があったら自分の足で国内を走って現場を確認しちゃうトップだった。


 即決即断、無駄なく迅速に事を運び、余計な附帯作業を徹底的に切り捨てて、最短距離で話が進むこの国が怖い。何しろ昇級すら気がついた時には『偉くなったからね』で済まされるのだから、このスピードについていけなくては振り落とされてしまう。


 早速国務尚書宅を訪ねるべく、場所を聞くと【帝都】と【旧都】それぞれに邸宅があるらしく、今は【帝都】にいる事が多いらしい。


 それはそうだ。政治の中心が【帝都】にあるのだから、近くに住むのが合理的というもの。寧ろなんで【旧都】なんて中途半端な場所にも家があるんだろうか?別荘?


 この国のど真ん中に位置して、尚且つ大河沿いにある都だし、立地的には悪くもないのだろうか?


 まあ、もし聞く機会があったら聞いてみよう。


 取りあえずポータルで【帝都】に飛び、さらにそこ警備に立っている【兵士】に国務尚書宅の場所を聞くと、最初は怪訝な顔をされたが【上級士官】の身分と自分の名前で、すぐに話が通り案内の【兵士】をつけてもらえる高待遇なのだが、自分の様な田舎の現場指揮官には勿体無い。


 しかしそれにしても案内の【兵士】は足腰が弱いのか、とても足が遅い。もっと雪の中を歩いた方がいい。【歩兵】装備でノロノロ歩いていたら、魔物に襲われた時後れを取ってしまうよ?

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― 新着の感想 ―
[一言] 歩兵の足の遅さを心配するソタロー それって、普段、周りに居る半分、人間を止めてる集団と比べてないか?
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