表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
227/363

226.トサカワニは餌に過ぎない

 見た目は凶悪、サイズも自分達と比べれば圧倒的な赤いトサカのワニだったが、自分達が力を合わせて当たれば、大した事無かった。


 しかし、まだ油断は出来ない。何しろ本命は足元の永久凍土に封印されてる北辺の怪物だ。


 その時ふと気がつくのは、


 「何か皆生命力の消耗が激しくない?もしかして結構攻撃力の高い敵だった?」


 「ソタローも気がつきましたか。よく見てください、攻撃を喰らった形跡のない【弓兵】や【衛生兵】まで消耗してるんですよ。つまり足元の化け物はこの一帯から生命力を吸ってるって訳です」


 「カピヨンさ……このまま行って、回復は追いつきますか?」


 「今の所はと言ったところですね。本命が現れるまで、どれだけの敵が控えているのかも分らない状態ですし、慎重に戦うしかないでしょう」


 これは予想してなかった。てっきりよっぽど強い敵が眠っているのだろうと思っていたが、強制的に生命力を徴収してくる相手だとは……。


 とにかく回復しつつ、トサカワニの処理を急ぐ。


 最後の一体を倒したと同時に地面が揺れて、雪を割って生えてくるのはユニオン級サイズの四足歩行タイプの恐竜だが、背中に生える背びれのような鱗がやっぱり赤いのは、何か意味あるのだろうか?


 頭が小さく、牙が目立たない事から草食恐竜にも見えるが油断は出来ない。何しろこの辺には氷で出来たような透明な木こそあれ、普通の木は存在しない。


 つまり、草食恐竜が生きれる環境では無いと言う事。つまり魔物として変な特性の生き物だと考えた方がいい。


 トサカワニと比べるとかなり動きの緩慢な相手だが、近づいてくるのを見ているうちに首後ろの赤い鱗に光が灯った。


 もう少し待っていると、次の鱗に光が灯る。これで確信した。コイツ何かチャージしていると。


 「楔隊形!自分が先頭に立ちます!敵が何を溜めているか分かりませんが、数を減らします!『行きます!』」


戦陣術 激励

戦陣術 突撃


 自分を先頭として三角形に広がった集団で、一気に走りそのままの勢いで四足歩行の恐竜を蹂躙していく。


 体の大きい分的が大きいのは助かるが、その分生命力の量も多いのか、一体倒すのに時間がかかってしまう。


 敵の攻撃は頭突きか尻尾攻撃だが、巨体の分だけ結構重い、しかし重さなら自分にだってある。


壊剣術 天荒

殴盾術 獅子打


 剣と盾でひたすら押し込み、敵が攻撃に移る隙を作らない。攻撃には攻撃で応じて、やっと一体倒しきった。


 敵の数はおおよそ50体、攻撃手段の乏しい相手とは言え、生命力強制徴収も含めるとかなり負担が大きい。緑色の〔生命薬〕を取り出して、


治療術 範囲回復


 取りあえず自分の近くにいた【兵士】の生命力を回復して次に向う。


 すでに敵の背びれの様な鱗には半分近くチャージがされている。今のうちに一体でも二体でも削り倒さねば!


 敵の頭突きをしてくるような体当たりに対して、味方の士気の籠った先の平らな重剣で応じ、頭を叩き潰す。


 仲間の士気こそ自分のエネルギー!糖質、脂質、蛋白質、そして士気!これが筋肉を動かすんだ!


 「ここが正念場です。敵一体削る事がこの先の展開に繋がります『行きます!』」


戦陣術 激励


 高まる仲間の士気に更に筋肉が自分の全身装甲を押し上げ、逃げ場のない筋肉の膨張が、自分という存在の密度を上げて行く。


 そしてもう一体、更に一体とユニオン級を倒し、半数も減った所で敵の鱗のチャージが溜まりきった。


 「総員集合!密集隊形で自分の後ろに固まれ!『行きます!』」


戦陣術 激励

戦陣術 岩陣


 四足歩行の恐竜の口から一斉に吐き出されるビームが、襲い掛かってくる。


鋼鎧術 耐守鎧


 まさか火でも風でもなくビームなんて、とは思ったが目が焼きつくような強力な光線に盾を構えて踏ん張る事しかできない


 目を閉じて尚真っ白い世界に、ふと幼い頃の記憶が甦り思い出す。


 あの恐竜ステゴサウルスだ。確かあのヒレみたいな鱗って、骨板だったような……。


 光線の照射が終わると同時にすぐ〔生命薬〕を取り出し、


治療術 範囲回復


 すぐさま回復を施す。


 ビームとは言え、術の範疇だったのだろう。クラーヴンさんに作ってもらった白い氷精耐性防具と 耐守鎧 を使えば、かなりダメージを軽減できた。


 問題は自分の後ろにいた味方達にリタイヤ状態の者が予想より多いことだ。


 岩陣ならば、範囲攻撃なんかにもかなりの防御力がある筈なのだが、それだけ今の一撃は重かったのだろう。


 ここは指揮官である自分の判断次第だ。こうしている間にもステゴサウルスのチャージは溜まっていく。


 「次の魔物も見ておく必要があると思います。なので戦闘不能者救助を優先としつつも戦闘は継続。今の魔物までは倒しきり、次の相手が確認できた所で退きます!」


 という事で、今回は撤退を視野に入れて動く事にする。


 どうせここまでという事で、自分はステゴサウルスに全力攻撃を見舞い、後先考えず叩き潰す。


 それに触発された幹部陣は皆想定以上の攻撃力を発して、ステゴサウルスを倒していく。


 普通の【兵士】達がちょっと引き気味に見えなくもないが、【帝国】は上に行くほど化け物の世界なんだから、これが当たり前なんだよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 帝国】は上に行くほど化け物の世界なんだから、これが当たり前なんだよ。 と、その化け物に足を突っ込んでるソタローが申しています(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ