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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
222/363

221.【帝国】東部-山-

 【北砦】から山の方へ向かう。今回はのんびりする事が目的なので、一人で力を抜いてプラプラと山道を登り、雪道を踏み分けて進む。


 ただでさえヒトの少ない【古都】周辺だが【北砦】から更に山側へ向かうと更に人通りが少なくなる為、あまり馴染みがない土地だ。


 ただヒトが少なくて寂しくなっていくと言うより、人里離れる事で、魔物が徐々に強力になるイメージの方が、何となく強い。


 もし自分が戦闘狂だったら、これまでもあえて踏み込んだかもしれないが、寧ろヒトを預かる身だ。普段は不要な危険を冒さないように慎重な行動を求められ、今はちょっと慣れない土地柄に何となく緊張を感じる。


 しかし緊張と同時に自分一人の身の事だけ考えていればいい、気楽さと開放感を感じている事も自覚しているし、これが一人旅かと正にのんびり過ごすという目的に沿っていて、そう悪いものでもない。


 かつて狼に襲われた辺を抜けるも、遠巻きにこちらを見ている狼が襲ってくる事がないのは、実力差がつきすぎてしまった所為だろうか?


 徐々に森が深くなり、ヒトの歩ける道も狭くうねり、視界は悪く代わりに足場の雪が幾らか減って動きやすくはなっていく。


 ゆっくり息を吐くと、このゲームはどこまでリアルに作られているのか、かぶとの隙間から漏れる呼気が白く漂う。


 アビリティの()()にかかる敵の数は2体、じわじわとこちらに近づいてきている。


殴盾術 獅子打


 裏拳気味に、後ろから迫ってきた敵を適当に盾で振り払う。


 盾が敵に当った手応えと同時に、


壊剣術 天荒


 重剣を思いきり木の隙間の藪に振り込むと、それもまた手応えあり!


 ここで敵を確認すると、ベースとなる動物の種類も分らない黒い塊だが、邪神の尖兵の様なぶよぶよでもない。


 目だけは爛々と輝き、カマの様な両手に、長い首の二足歩行生物は、本当にどういう存在なのだろうか?


 一応今の所攻撃は二発とも当ったが、術ダメージが入ったのか、物理ダメージが入ったのかも、判別できていない。


 ヌルッと移動して距離を詰めてくる敵魔物は、滑るというより雪上ギリギリを浮いているようにも感じられる。


 質量のある影にカマと目をくっつけた異様な姿の敵に、思い切り重剣を振り下ろすと、地面に文字通り影の如く溶け込み、消えてしまった。


 そしていつの間に移動したのか、近くの木陰から攻撃してきた所を盾で弾き飛ばし、仰け反った相手を重剣で斬り裂く。


 そのタイミングで飛んできた隠れていたもう一体の遠距離攻撃を


鋼鎧術 耐守鎧


 術で受け止める。


 手が鎌だけあって、斬撃を思わせる三日月形のエフェクトだが、ダメージは大した事無い。


 近づく前にまた姿が影に溶けてしまうが、まだ戦闘状態が解除されていないという事は、どこからか狙っているのだろう。


 少し待っていると魔物の方が痺れを切らせて、再び襲い掛かってきた。


 足元から急に現れたので、反射的に頭から剣を突き刺し、地面に貼り付けになった所で、


武技 踏殺


 踏み潰して、終わらせる。


 フィールドの一般魔物ながら、異形感と隠れ潜む能力と中々侮れないものを持っている敵だった。


 死体を試しに<採集>してみると、


〔カマイタチの鎌〕〔カマイタチの毛皮〕……


 カマイタチシリーズが手に入る。つまり異形の敵の正体はカマイタチだったと……。


 基本的な部分としてヒトの踏み入らない場所に近づくに連れて、魔物の異形化が進み強くなっていくのだが、今自分のいる辺は相当深くなっている証拠なのだろうか?


 何しろヒト通りの多い場所は兎角魔物が弱い。あえて弱い魔物の生息地域にヒトが住んでいるのか、ヒトが片っ端から魔物を駆逐する所為で、繁殖力の強い魔物だけ生き残るのかは知らないが、基本的にど田舎ほど敵が強いって事になる。


 その割りに【古都】の周りはそこまで魔物が強くないのは【帝国】スタート地点だからだろうが、もし運営が【帝国】も相応の数のプレイヤーがスタート地点に選ぶと思ったなら、寒すぎる。


 雪に足を取られ、寒くて防寒具が欠かせない土地にどれだけのプレイヤーが集まると思ったのだろうか?


 まぁ、逆に言えばマイペースに楽しみたい自分なんかには結局合っていたのだから、文句はないのだけれども。


 ふむ……確かに魔物は少し強いが、倒せない程ではないし、一人旅というのも面白いかもしれない。


 自分はどうしても重装備で歩ける条件や範囲が少ないと思ったが、回りを気にせずマイペースに歩く分には、別に誰を気にするものではないし、自分の思考に没入しながらただ歩くといのは悪くない。


 散歩の延長のような旅の楽しさに身を任せ、出てきた魔物を緩やかに倒していく。


 正直な所、そん所そこらの普通の魔物が自分の防御力を抜けるものではないし、襲い掛かってきたところを重剣でぶん殴って、倒せない魔物もいない。


 セーフゾーンを見つけて火を灯して焚き火を作る。


 火を見つめながら、お湯にスライスしたジャガイモを落とす。料理長から貰える青い瓶の調味料で味付けし、ただのジャガイモスープを作って啜る。


 お米と味噌汁が食べたいな~と思いつつ、降り積もる雪を眺め、孤独に身を任せ、雪国の単独行にのんびり過ごす。

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― 新着の感想 ―
[一言] 味噌汁か~ ニンニンな国ならあるんだっけ?
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