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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
220/363

219.先輩の奥さん

 やっぱり上級【闘士】との闘技はきつい。文字通りボコボコにされて鼠のヒトの店へと戻る。


 「あ~うめ~やっぱ戦いの後は肉だな~芋じゃ駄目だ!肉持ってこ~い!」


 女傑が既に来て、肉を豪快に食い散らかしている。名前が女傑の割りに見た目は結構若そうだが、しかし実力は体で理解したし、一体何者なんだこのヒト?


 「お疲れ様です。対戦ありがとうございました」


 「ああ、いいよいいよ!うちの旦那がいつも世話になってるんだし、しかも実力を上に示せとか面倒な事言われてるんだってね可哀想に!私からも知ってる連中には伝えておいてやるから、安心しな」


 「え?あの【帝国】の方ですか?【闘士】と聞いたので【王国】の方かと思ったんですけど」


 「なんだい?余所余所しいね。アンタもあれだろ?北砦で【下士官】になった口だろ?だったらうちの旦那に会ってる筈だよ」


 え?……盾と斧の女傑……!!!先輩の奥さんだ!斧で先輩をボコボコにするって言う!


 「あのいつも先輩にはお世話になってます。本当にまだ誰を率いれるわけでもない頃からよくしていただいて」


 「ああ、いいのいいの!旦那は面倒見の良さが取り柄なんだから、それがなきゃまだ昇級出来てないよ。アンタは早々と【上級士官】だって言うし、タダ者じゃないね~。旦那と同じで戦ってばかりいそうな面構えだけどね。まあいいや!私は旦那に代わってアンタと手合わせをしに来たけど、実力は申し分ないと思うよ」


 「ありがとうございます。ところで奥さんは何でまた【闘士】に?それとも先輩と結婚する前から【闘士】だったとか?」


 「いや、元々は【帝国】の軍属だよ。最前で戦ってたら偉くなっちゃったんだけど、生憎事務作業とか他人を率いたりってのが苦手でね。結婚を機に【兵士】を引退して、面倒の無い殴り合いの世界に飛び込んだって所かね。気がついたら上級とか言われてただけさ」


 「気がついたら言われてたって……元々相当な実力者だったんじゃないですか?それで【兵士】引退しちゃったらもったいなかったんじゃ?」


 「そんな事無いさ。アンタだってあの国の歪さは分るだろう?」


 【帝国】の歪さってなんだ?と首を傾げるが、何のことか良く分からない。皇帝派と宰相派で別れてる人達はいるが、そんな致命的なものでもなさそうだし、いまいち何のことかよく分らない。


 「皇帝派とか宰相派のことですか?」


 「あんな意味もない派閥争いなんか、関わらなくていいよ。そうじゃなくてもっと根本的な事さ。元々【帝国】民ってのは独立不羈の風潮が強いんだよ。独立農家に独立商人、果ては元々独立都市国家だったんだから」


 「らしいですね。ヒトによっては白竜様の下、皆平等に完全実力主義の方がいいとか?」


 「そういう奴もいるだろうね。でもさ実体はどうだい?軍の階級に縛られてるだろ?勿論優秀な奴が早く昇級する事は当たり前だとは思うけど、元来のあり方とはちょっと違うように思えてこないかい?」


 「まあでも、それが今の【帝国】の支配体制として合ってるから、今のあり方になったんじゃ?」


 「そうかもね。でも私なんかはそういうの面倒なんだよ。実力や武器をそろえて並んで進軍みたいなやつがね。何でか知らないけど、こと軍関係になると急に没個性、独立より従属を良しとするだろ?そんなもん生粋の【帝国】人には絶対合わないし、実力者ほど忌避するものさ」


 言わんとする事は分らないでもない。確かに独立を良しとする風潮に対して、従属を強いる体制は合わないかもしれない。


 しかしそれがまかり通って【帝国】を支えるシステムの基幹になっているのだからどうしようもない。


 だから先輩の奥さんは実力を十分につけて独立して【闘士】として闘う様になったのか。そして先輩は稼ぐために昇級を目指していると……。


 こんな実力者の奥さん貰って先輩も大変だな~。


 「ところで、さっき知ってる連中に伝えるって言うのは?」


 「だから、私が知る限りでアンタと闘うかもしれない連中の頭を一発づつ引っ叩いて、相手になるような実力じゃないんだから、諦めなって言っておいてやるからさ。それで負担はかなり減る筈だよ」


 どうやら先輩同様凄く面倒見の良い奥さんだったようだ。頭引っ叩いて言う事聞かせるのはどうかと思うが、自分としては助かる事だし、否はない。


 って言うか、自分が闘うのって【上級士官】及び【将官】だった筈なんだけど、そんな人達の頭を引っ叩くとか、実は凄い階級の高いヒトなのか?


 「あの……ちなみに【帝国】にいた時の階級って……」


 「ん?別に大した階級じゃないよ。ただ【帝国】人ってのは場合によっちゃ殴り合いで物事決める事があるからね。そう言う時は階級関係なく、ボコボコにして己の意見を押し通す事も必要なのさ。そういう関係で殴りあった仲の奴等が昇級していくからさ。自然とね」


 「そうでしたか。自分には余り馴染みの無いことです。隊の皆も言う事聞いてくれるし、別に理不尽な命令もされませんし」


 「うん、そりゃアンタの実力が突出してるからだろ?だからこそ何やらお偉い奴等と闘技させられる羽目になってるんだし、結局腕っ節で我を通してるのと、結果は変ってないんじゃないか?」


 言われて見れば、闘技で実力見せろって言うのも、実力で自分の階級もぎ取ってるのと変わりないのか?

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― 新着の感想 ―
[一言] あげすぎた階級を今更、殴り合いで帳尻を合わせようとしている模様(笑) 誰の思惑だかは知らんが(笑)
[一言]  気持ちはわからなくもないが、より強力な相手と戦うときにただの烏合の衆なんて相手にならない。そういうバラバラな連中を率いて戦うのはかの隊長ですら大変だったことを考えると、統一して底上げという…
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