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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
215/363

214.氷海の厄介者

 顔が無いな~。折角海割って出てきたのに、何か透明な中にオレンジの核のある不思議な生き物は、白スライムかな?


 伸ばしてきた触手は頭から生えていたみたいだし、頭の下の体部?は何かヒラヒラしてる。


 何をどうやってるのか浮いてる?と言っても尾の先だけは水に浸かってるので、厳密には浮いてない?


 どんよりした曇り空を透過する白透明な謎生物は、まるで風に揺れる氷の花の様にも見える。


 何の前触れも無く、まるで蕾が開くように頭部が割れて、船を丸呑みにする勢いで襲い掛かってきた。


壊剣術 天崩


 重剣を巨大化して、思い切り殴って海に返す。大きさの割の大した重量ではなさそうだ。


 すると、周囲が若干歪んで見えたと思った瞬間には、異様な臭いが充満して吐き気を催す。


 普通の生物から出ちゃいけないような、化学物質臭いというか、塗装臭いというか、なんにしても頭痛がしてきそうな臭いに、思うように息が出来なくなる乗組員達。


 しかし何の状態異常も出ないという事は、ただ臭いだけなので我慢する他ない。


 頭がクラクラしてくるのを我慢して、体勢を立て直した敵に警戒していると、こちらの調子が悪いのが分るのか、余裕ぶって触手を伸ばしてきたので、重剣でぶん殴る。


 それでもうろうろと周囲を探るように触手を動かすのは、あまり効いてないという事か?


 よっぽど力が入っていなかったのだろう。ならばやる事は一つ。重剣を鞘に戻し、盾を背負う。


鋼鎧術 天衣迅鎧


 重量を嵩増しして、


武技 踏殺


 踏み付けなら力も何も関係ない。


 踏まれた触手の先端を自分の足の下から抜く事が出来ずに、慌てて引き戻そうとする敵だが、こちらは臭いで味方の調子が悪いので、ここは時間稼ぎさせてもらう。


 ただ押すばかりじゃなく、有利な状況になるまで待ちに徹する事も戦術だ。


 徐々に臭いが薄らぎ仲間の動きが戻ってきた所で、重剣と盾を構え直し、


壊剣術 天荒


 踏みつけていた触手をぶった斬る。


 残るは触手一本と本体だが、さてどう来るか?


 その時船首から、ロープ付きの銛が飛び白スライムに突き刺さった。


 艦上舵の正面に謎の器具がついているとは思っていたのだが、帆を上げるロープでも巻いてあるのだろうと思ったら、突き刺さった銛を引っ張る為の器具だったらしい。


 数人がかりで動かしても中々回らないので、自分が交替して入り、グルグル器具を回すとどんどん白透明の生き物が近づいてくる。


 「とりあえず【弓兵】は削れるだけ削ってください『行きます!』」


戦陣術 激励


 士気を高めると、それを利用してクラークが、


戦陣術 斉射


 一斉攻撃でダメージを蓄積させていく。


 スライムっぽいが、剣でも普通の弓でもダメージが入っているようだし〔竜の歯片〕とかは出さなくても大丈夫だろう。


 もうあと一息かという所で敵の姿が完全に白くなり、白いエフェクトを発する。


 何か氷精系の攻撃がくると、盾を構えたら流氷が水海から浮かび、そのまま飛んできた。


 サイズは小粒なものでも頭くらい、大きなものでは大人数人分のサイズのも物が、次から次へと降り注ぐ。


 【重装兵】が体を張って飛んでくる流氷を受け止め、隙間を縫って【弓兵】の矢で攻撃、自分はというと、


壊剣術 天崩


 大きな重剣で攻防一体の範囲攻撃で加勢する。


 敵の大味な攻撃の隙間を縫って、チャーニン、スルージャが突撃を仕掛け、あとは手数でちくちくと叩きまくり、力を失った白い生き物がまた透明になって、海に浮く。


 「なんだったんだろこれ?」


 「知らないのか?クリオネって言う貝の仲間なんだぜ。貝殻は無いんだがな」


 「へ~」


 頭の中にファンファーレが鳴り、


特定部位破壊 透明な素材×3

最大ダメージ 透明な中にオレンジ色の核風のポッチのついた篭手素材


 の二つが今回の報酬だった。


 まあこれもクラーヴンさん任せだな~と思いつつ、船を見回すとかなりダメージを負った様子で、あちこちボロボロだ。


 甲板に穴が開いているのは、大きな流氷がぶつかった事で、足場を減らされたって事なのだろうが、貫通して沈む所までリアル表現じゃなくて良かった。


 もしくは一定以上ダメージを受けたら、船も沈むのだろうか?だとしたら軍用船を借りられたおかげで、寒い流氷浮かぶ海に投げ出されなくて済んだのか。


 何か思ったより綱渡りだったのかもな……。


 ぼろくなった船で、元の港まで無事帰り、地面に降り立つと、足場がしっかりと安定している事に対する感謝を感じつつ、船の修理代を請求されたらどうしようと不安がよぎる


 「船ぼろくなっちゃいましたけど、怒られますかね?」


 「何言ってんだ。任務で氷海に住む厄介者を倒したんだから、褒められこそしても、怒られる事はないだろ」


 それならいいが、借りた船がボロボロだし、できればもうあまり船上戦闘はやりたくないな。


 一先ず中隊を率いて【古都】へと帰還する前に【帝国】の海鮮を味わおうと思ったら、イカが名産らしい。


 微妙に白いその姿はクリオネになんか似てて、食欲が失せたので、今回は名産を食べなかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] クリオネ\(^O^)/ ちっさいクリオネは細かいところが見えないから、かわいいけど、頭?上の部分で食い物丸かじりだから、捕食シーンはえげつないので、こんなサイズのリアルクリオネは恐い…
[一言] >その時船首から、ロープ付きの銛が飛びクリオネに突き刺さった。 この時、まだコタローはクリオネの名前を知らないので白スライム呼びなんじゃ?
[一言] 世にはクリオネを食べた剛(業?)の者も居るがシンナー臭くて食えたもんじゃないそうな…この巨体だと死体だけでも相当シンナー臭いことであろうて…
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