204.賭博の都
外は風塵舞う砂漠、一歩街に入れば煌びやかでいながら退廃的な空気の漂う怪しげな街。それが【砂国】の賭博の都の印象だ。
そんな街でもヒトは多く、寧ろそんな街だからこそ惹かれてくる人種がたくさんいると言って方が正しい表現なのだろうか?
街の片隅でとりあえず、何となく街に馴染もうと周囲を窺っている自分の格好というと、
まず怪しげな黒い仮面に白髪なのだが、これはこの前の百足頭部防具にマンモスの毛をつけ毛にしたもので、耐性が乗っている上、例の黒い霊亀の甲羅?が混ざった鉄で内側が強化されているので物理防御と丈夫さが尋常じゃないとの事、更に百足の効果で何種類かの状態異常に強い。
髪の毛状に植毛しても違和感ない程ベースの冑部分が薄いにもかかわらず、まあまあ安心の重量感という仕上がりだ。
上着はタキシードだと思ったら、フロックコートというらしい、肩から詰襟にかけてやはり例の金属で強化されているのだが、非常に薄く、尚且つ地味ながら趣のある意匠の模様が入っていて、そういう飾りの服にしか見えない。そして謎の社交界適応効果。
フロックコートの中はやはり黒い全身タイツが耐寒耐暑、薄い黒い鋼板のベストに腕防具に腿当てが、これも薄いにもかかわらず重量感的には安心できる代物となっている。
手にはオフホワイトの皮手袋、これも氷精の耐性付き。
ブーツは百足のブーツなのだが、凄くシンプルでスマートデザインをやはり極薄金属で補強されている。ちなみに百足の効果で地形適応と移動速度に補正がかかるって言うのは、重装の自分としては助かるがずるい気がしなくもない。
後、フロックコートの上からベルトをしてるのは変な気もするが、ゲームなので許されるらしい百足のベルトを装着。これの効果は緑の状態で自然回復力補正なのだが、バックルを操作すると赤くなる。赤くなると武器装備が出来なくなり術も使えなくなるが、全てのステータスが上昇するのだ。
天崩 や 天破 、 獅子追 、 獅子反射 、 耐守鎧 、彩光鎧 、なんかは言うに及ばず、
天荒 や 獅子打 の様なずっと精神力を流しっぱなしにしないといけない術は使えない。
天沼 や 空流鎧 、多富鎧 、 天衣迅鎧 、灰塗鎧 の様に解除しなければ一定時間掛かりっぱなしの術は赤くする前に使っておけば問題ない。
この辺は事前に確認しておくように言われたので、実践でうっかり何て事はないだろう。多分。
ちなみに、治療鞄とアイテムバッグはドレスコードに引っ掛からないらしいので、フロックコートの上からちゃんと装備している。
クラーヴンさんが本当に大急ぎで作ってくれたのであろう装備だが、今回の任務用かと思いきや大真面目にちゃんと通常地形用にコンセプトを持って設計した物だったらしい。
はっきり言って相変わらずおかしな性能をしている。特殊効果や装備スキルこそ少ないが、物理防御と重量は過去最高との事だ。
自分の状態を確認して少し気持ちが落ち着いてきたので、都を散策してみよう。
今は真昼間で、照りつける太陽でかなり暑い、耐性と耐寒耐暑がなかったらきつかったかもしれない。
色んな雰囲気を持つ顔のヒトがぞろぞろといて、多分ターバンにゆったりした長い服を着ているのが【砂国】のヒトなのかな?と予想している。
中心となる大通りには結構な数の馬車が行き交い、宿泊施設と思われる場所にも停車している。
大通り向こう、多分この都の中心というか位置的な意味ではなく、一番偉い人がいそうな方にはやたら大きな木が一本見えるが、どうやったらあんな大きな木が育つのか不思議なレベルで大きい、アレが賢樹様なのだろうと、見当をつけておく。
肝心の賭博場?に関しては、昼日中は締まってる店が多い。
暑いから夜活動するのか、賭場だからなのかその真意は不明だ。
それでも空いてる店からは、喧騒というか、それこそ喧嘩の声が聞こえてくるし、荒っぽくて苦手な都かもしれない。
何しろ【古都】は雪が音を吸う所為もあるのか比較的静かだ。だからこそギャップのように普通の家の温かさが、沁みる土地ともいえるだろう。
ちなみに自分の怪しい仮面だが、この都では特に目立たないみたい。
何しろさっき横を通って行った豪華な馬車から降りたヒトも仮面してたから。偉いヒトが仮面してるならドレスコード的にも問題ないだろう。
あちこち見回しながら、うろついていると、誰かがぶつかってきて勝手に跳ね飛ばされた。
「テメー!やんのかコラ!」
「え?何の話ですか?」
「見てみろ!俺の酒が割れちまったじゃねぇか!弁償するのか痛い目見るのかどっちか選べ!」
「そちらから、ぶつかってきたんですよね?何で絡まれなきゃいけないんですか?」
「あぁぁん!テメーどこのぞの田舎者知らねーが、随分威勢がいいな!あん!どこから来たんだ?」
「【帝国】の【古都】ですけど?」
「世界の果てじゃねぇか!田舎者にちっとこの都の生き方って奴を教えてやらにゃ、ならなそうだな!ついてこいや!」
何故だか、賭博の都の奥まった裏道に連れていかれる事に……。
周囲にはぼろいが気配でヒトがひしめいてると分る建物。それが周囲からのブラインドになっていて、ここで何が行われても外からはバレないであろう広場で、行われる事といえば?