193.白騎士意外と気さく
決勝の予定は問題なくログインできそうだ。普通の学生なら余裕の時間帯だし、ほっとした。
人数が減るほど対戦マッチングが難しくなるんじゃないかと思っていたのだが、結果的に自分はスムーズに決勝まで戦う事が出来る。
表に出ると、白騎士さんがいた。なんかこう本戦始まってから皆戦い終わってから話すの好きだよな~。
でも、NPCは闘技場で戦った後にわざわざ鼠のヒトの喫茶店に顔出すし普通そういうものなのかな?
「よっ……やぁソタロー、集団戦ではいつもお世話になってるのに、ちゃんと話すのは初めてだね」
「いつもお世話になってます。対戦ありがとうございました」
「こちらこそ、ところで少し見ない間にいい腕になったね。このイベントは優勝する気だったんだが、急成長には何か秘密でも?」
「いえ、特には?いつも通り普通にクエストしたり、頼まれ事したり、時々【闘技場】で戦ったりですね」
「だから何で隊長みたいな……エフン!エフン!いや、行動パターンが隊長にそっくりだし、流石は次なる1000人長と言ったところか」
「ところで、一対一の対戦で優勝を決めるシンプルなイベントなのに、4回戦で準決勝って、何でこんな出場者が少ないんでしょう?」
「ふむ、確かにこういったシンプルなイベントはどのプレイヤーも待ち望んでいたし、本来は2周年記念イベントでやる予定だったのだろう。ところがRMT問題で延期、その内にゲーム内で通称『決闘王戦』があったのは知っているかい?」
「はい、見てました。仮面武闘会ですよね?何か変な戦闘員が優勝してましたけど、アレに何かあったんですか?」
「どうやら一線級の者はあの闘技で出せる手は出し尽くしてしまったらしい。つまり燃え尽きてモチベーション不足だということだね。逆に不完全燃焼だった者やそもそも当時実力が足りなかった者達がこのイベントに参加している」
「なるほど、つまり最初から強プレイヤーの出場率が低かったと」
「それに加えて、この素材と生産者縛りで十全な装備を手に入れられない者も多い。逆に言えばボス討伐で手に入るレア装備なんかの分の戦力差が埋る訳で、この状況で上級者を食えれば躍進できるといった野心家にとっては面白いイベントだった筈なんだが」
「この暑さで軽量装備の人しか勝ちあがれず、しかも軽量装備の人は元々技量で戦ってる事が多いから、差は埋らない?」
「正解!本当は剣聖の弟子と一戦交えるつもりでいたんだが、まさかソタローが壁となって立ちはだかるとはね」
「そうでしたか……ところで、もしかして白騎士さんって歳近くないですか?何か喋り方無理してません?」
「え?ソタローも学生なの?」
「ええ、まだ未成年ですけど、一応バイトもしてます」
「ああそうなんだ。いや……そうだったのか……。もういいか!いやでもソタローは一周年から始めた筈なのに、凄く強くなったじゃん?もう何発かクリティカル入ればと思ったところに、一気に畳みかけられるんだから、攻撃力バグってじゃないか?」
「ああ、それが素なんですね?普通に話せばいいのに……。まああの自分は筋力重量なので一発当てられるかどうかで勝負なんですけど、でも倒れこんだ所に追撃した筈が喉貫かれたのは驚きましたよ」
「話し方は、あれだ向こうではフェンシングばっかりやって、脳筋とか言われてるから、ゲームの中で位頭いいキャラやりたかっただけだよ。で、あと貫通系な?アレは剣速、突きタイプは使ってくるから、気をつけたほうがいいぞ。バッシュは特に剣速型には食われるから<防御>で我慢するのも戦術だぜ」
「確かに自分はバッシュ使いですけど、何かそういう相性とかあるんですか?」
「知らなかったのか?そうか元が堅すぎて打撃くらいしか貰ってこなかったのか!バッシュ<剣速、ブロック<剣撃、パリィ<剣力って言う相性だな。あくまで盾防御の抜かれやすさだがな。逆にバッシュ>剣力、ブロック>剣速、パリィ>剣撃で盾での防御しやすさだな」
「へ~!あれ?じゃあ白騎士さんがパリィ使ってきたら、危なかったの?」
「え?いや無理だろ。俺の細いレイピアであの分厚い金属の塊受けたくねぇよ!あと『さん』とかいらないから。あ~でも普段装備の方なら有りだったかな~最近サブウエポンとの二刀流やってるから、マン・ゴーシュも作ってもらえばよかったぜ」
「やっぱり素材制限と作り手に制限が掛かるって重いですよね。ところでちょっと思ったんですけど、この大会優勝するつもりだったって言うのは剣聖の弟子に勝つ算段があったんですか?」
「まあ、かなり強敵だろうと思ってたし10に1つ位だが、やってやれないこともないとは思ったんだよな」
「瞬間移動からの高速オシャレ攻撃相手にやれない事もないって、やっぱり凄いですね」
「オシャレ攻撃?居合の事言ってるのか?あのな鞘から抜き打ちで攻撃する剣術は日本の伝統武術や武道にもなってるんだから、それ位は知っててもいいと思うんだが?まあいいや!俺の場合は動き続ける事だろうな。確かに高速攻撃だが剣を鞘から抜く瞬間は足が止まる。その一瞬でどの程度身をかわしてカウンターを打ち込めるか、そういう勝負になると思うぜ」
「動き続けるとかは完全に自分には無理そうですね」
「ああ!何か倒すヒントが欲しかったのか?ん~やたら強い相手だし、最強の一角を味わってみるつもりで、精一杯やるしかないんじゃないか?」
「だよね~」
剣聖の弟子との戦い方は結局何も思いつかないが、白騎士は付き合いやすいトッププレイヤーのようだし、それが今回一番の収穫かな?