192.準決勝
四戦目にして準決勝だそうな。既に今の時点でイベント4位以内とか出来すぎじゃなかろうか?
4位でも十分頑張ったよな~。何しろ今回の相手は……
[ソタローVS白騎士 Fight!]
とまあ明らかな格上だ。騎士団の幹部の一人が相手とか聞いてないし、二つ名で登録可能だとも聞いてない。
相手は皮服と皮鎧で非常に涼しげかつ軽そう。全体を通して白で決めているのが【海国】の風土とよく似合ってて、いい味でてる。
ゆっくりレイピアを引き抜くがこれも、支給品とは思えないところから、白騎士と組んだ生産職は複数生産型だという事が分かる。
自分も盾と剣を構え、警戒を高めていく。
切っ先を地面に向けるように握りを軽くレイピアを提げているが、どの角度からどれだけ早い攻撃でも捌くという自信が見て取れる。
相手から動き出し、完全に間合いの外から突いてきたと思ったら、何かが盾を掠める。距離から言って多分術だろう。
白騎士は細かくステップを刻みながら、こちらの様子を伺っている。さっきの術の時も足は止まっていなかったし、ただ反射しただけでは避けられてしまうだろう。
次の攻撃は自分の少し手前に向けて細長いエフェクトが射出された。
それが、地面で跳ね返り腿に当るが装甲版の上だったおかげか、術ダメージではあるもののいきなり大ダメージとはならずに済んだ。
しかし地面を使った跳弾も有りとは、軌道が読みづらいことこの上ない。
タンッタンッと軽いステップで一気に間合いを詰めて、異常に早い突きを放ってきたが、モーションだけ見て盾をぶつけていくと、
何故か盾をすり抜け、冑の端を掠めた。
それで終わらず、引き手も更に早い。心臓に向かって突いて来た所を体を回すようにして軸をづらし、
壊剣術 天荒
重剣で斬り返すと、軽々ステップで下がって間合いの外に出られてしまった。
寧ろ振りきったところを狙われ、また術で今度は肩にダメージが残る。
かなり早い相手なので 天荒 は維持したままにしておく。いちいちオフにしてたら当るものも当らない。そういう相手だ。
また距離を詰めてきたので、
殴盾術 獅子打
盾側から回り込んできたところを裏拳気味に振り回すと、手応え有り!
今回もバッシュだと思ったのだろうか?盾縁が白騎士の体に触れて、よろめいた所を重剣で横薙ぎに払う。
腕の上からでクリーンヒットとはならなかったが、それでも軽装の白騎士には結構なダメージが入ったか?
何しろ、自分の重剣が当った左腕がブランと力を失っているのは部位破壊ではなかろうか?
代わりに自分も胴を突かれたが、装甲の上からなので、本当に大した事ない。
ふむ、相打ちだろうがなんだろうが当てさえすれば、こちらの方が有利だ。問題はこちらの攻撃力を警戒して、かなり遠めからこちらを窺っている事!摺足でじりじり近づいていくが、一定の距離を保ち続ける。
いっその事敵を引きつける術でも持っていれば良かったな~などと思うが、もっと早くに思いついていれば、教えてもらえたかもしれない。
人間、不便を感じて初めて必要なものを悟るのだろう。今度会ったら絶対師匠達に相談せねば。
時々ちくちくと射出してくる術にも慣れ、頭を狙ってきたものを屈むように避け、深く踏み込んだところで、
殴盾術 獅子追
盾ごと体当りで白騎士を轢き飛ばす。
急な加速に回避が間に合わなかったのか、肩にぶつかり独楽のように回って、倒れこむ白騎士に追撃の串刺し!
間髪いれずに刺しにいったが、転がって避けられてしまった。
しかしここで諦めては折角のチャンスが不意になってしまう。白騎士が転がりながら起き上がろうとして頭が浮いた所に、満身の力を込めたキック!脛が顔面を捉え、再び仰向けに倒した。
今度こそと突き刺せば重剣で脚を貫き、動きの止まった所を盾で殴りにいく。
同時に足を刺されても怯むことなく、レイピアで喉笛を貫いてきた。
「カッハッ!!!」
思わず何かを吐き出すような乾いた咳が出ると、その間に白騎士は突き刺した重剣から逃れていた。
やられた。
相手は指折り数えられる上級のプレイヤーなんだし、重装備を貫通する攻撃の一つも持っているだろう。
接近で確実に急所攻撃できるタイミングを狙って訳だ。それまでは遠間から様子を見てじりじりと削る事で、こちらを焦らしていたのだろう。
しかし、相手もそれを重装備の自分相手の切り札と考えていたのだろう。距離を取るのをやめ、近距離で高速の連続突きを放ってくる。
盾で受け、何発かすり抜けてきたものは鎧で弾き、その上で脇腹に貫通攻撃が一発突きこまれた。
最早自分のスピードで追いつく回転速度じゃない。遮二無二重剣を振り回すと、必要最低限距離を取られ、カウンターが更に肩口に突き刺さる。
それでも、強引に振り回し何回目かの回避とカウンター、そこからはただの勘だったが、自分の中の何かが噛み合う感覚に任せ、
壊剣術 天崩
一瞬で重剣がエフェクトに包まれ巨大化する。それまで自分の重剣の軌道を完璧に読んで避けていた白騎士のこめかみに、重量級の一発が決まり、首が変な方向に折れ曲がった?
そのまま腹に一撃蹴りを打ち込み、トドメの唐竹割で完全に頭を潰す。
勿論本当に潰れるようなグロ表現はこのゲームにはないが、潰したと言っても過言ではないダメージで、白騎士の生命力を削りきる。
肩で大きく息をして、倒したという実感が湧き上がってくるまで随分時間が必要だった。