191.本戦三戦目?
[ソタローVSレオン Fight!]
「参ったギブアップだ」
三戦目始まった瞬間に終わってしまった。
相手は軽装の大型ナイフの使い手、どんなフェイント共に斬りかかってくるのか、どう重装鎧を抜いてくるのか、想像を高めた所にギブアップって!
これは、表で会ったら文句の一つも言わねばなるまい!
四戦目の予定を決めて大急ぎで、外に出ると、
「よう!この前ぶりだな」
かなり軽い感じで声をかけてきた対戦相手、グリンと首を回して顔を見るが、多分知り合いじゃない?
「対戦相手の方ですよね!なんでギブアップなんて!」
「そりゃこの前二対一で負けてるんだから、流石に無理だろ」
……?コローナファミリアの人?大型ナイフ使いといえば5戦目の?
「えっと、だとしてもここまで勝ち残ったんですから、一戦やってみるとかそういうのは?」
「いや、だから俺は重装相手が苦手なんだよ。寧ろよくこの暑さの中、重装備で参加したな?やっぱりあれなのか?姐御が言う通り【帝国】の連中は強さよりその根性が異常だっていうアレなのか?」
「いや、暑いは暑いですけど、気合で我慢すればどうという事はないですよ?」
「いやいや、気合とかそういうレベルじゃねえって!いいか?重装備の連中はほぼほぼ根こそぎ予選で落ちちまってるんだよ。なんでかっつうと、暑さに我慢できずに自滅だ。5戦の予選に耐え切れなかったってのが、ほぼ共通なんだよ。それをお前ときたら気合でって、それは無理な話だろ!」
「じゃあ、なんで自分は本戦でここまで残ってるんですか!【帝国】所属で、寒さにはある程度強いかもしれませんが、暑いのは無理な筈ですよ!」
「説明してやろう!」
「あ?なんだ?」
「クラーヴンさん!このちょっとも刃を交わさずにギブアップする変な人に気合の大切さを教えてやってくださいよ!」
「気合じゃない!俺もソタローの装備を作るに当ってあちこち相談して回ったんだが、ツタンは腐食に強いと言っただろう?あれはこのゲーム的には水精に強いって意味だったらしい」
「はぁ?」
「だからなんだって言うんですか?」
「つまりこの湿度が高く、気温以上に暑く感じる環境下において、ツタン製品は抜群に効果を発揮する。俺は元々鉄以外殆ど扱ってこなかったせいで、ツタンの熟練度は初心者並みに低いが、それでもソタローの鎧の贅沢かつふんだんに使われたツタンの量のおかげで、そこはかとなく耐水精機能が発揮され、ソタローはカラッとした暑さに身を置いているので、耐えられるんだ!」
「なにぃい!!まさかツタン製品にそんな裏があっただと!」
「え?じゃあ、金属と肌が張り付いているのに何かサラッとしているのはそのおかげ?」
「そうだ!ちなみにステン製品は融点が高いと言ったろう?つまり火精に強いので、大量に使えば耐暑機能を発揮するらしい。つまり運営も何も考えずに今回の素材を指定した訳じゃないって事さ」
「まじかよ!じゃあ重装備連中も変に気温の事を考えず、必要以上に素材を使っていれば寧ろ耐えられたと?」
「じゃあ、プロンはどんな効果があったっていうんですか?」
「うむ、つまりソタローは結果オーライで、この気候に適応したわけだが、プロンは比重が高くて、変形しやすい代わりに打撃に強い!重装備の苦手とする打撃対策だな。特に気候とは関係ないと思うぞ」
「この話が真実とするなれば、やっぱり俺がソタローに勝つのは無理だったろうな。軽装相手には隠れて致命の一撃を与えられるが、重装相手じゃ刃物は分が悪い」
「だとしても、これだけ隙間があるんだから急所を狙うとか色々あるでしょうに」
「まあ確かに腕の内側は割りとすかすかだし、脇腹から肺に穴をあけるとか色々あった筈だ」
「何をグロイ事言ってるんだか分らないが、そんな狙った場所に正確な攻撃できたら、こんな状況で燻ってないんだよ。今頃姐御ともっと戦えててもいいだろうが」
「自分は今回剣聖の弟子と戦わなきゃならないんです。それをこんな風に集中が途切れるような事ってありますか?」
「世の中にはあらゆる攻撃を確実にブロックする異常な正確性をもつ奴もいるらしいから、お前だってやりようで、ちゃんと当てられたろ?」
「今ので誰の事を言ってるかはコローナファミリアの人間なら大体分るが、それが異常だっつうの!修行不足はわかってるが、ついこの前二人がかりで不覚をとった相手に何度も恥じ晒せねぇよ」
プイッとそのままどこかに行ってしまうレオンさん。戦いたいあまり追い込みすぎてしまったかもしれない。
確かに自分だって複数人で掛かった相手に一蹴されて、もう一度戦いを挑むのは勇気がいるだろう。
しかもレオンさんは今回の出場者は大半が軽装と踏んで、得意のナイフで勝つ気で出てきたのに、現れたのがゴリゴリの重装の自分じゃ気分が萎えても仕方がない。
しかし、今更だが本戦三戦目まで残るとはやっぱりコローナファミリアの対人戦能力は高いって事なんだろうな。