189.本戦二戦目
予定通り【海国】のイベント会場に向かうと、クラーヴンさんがセコンドに立つために待っていてくれた。
「俺は戦闘に詳しくないからただ見てるだけになるぞ?」
「別に構わないですよ。一応生産職と戦闘職がタッグで出るのがこのイベントみたいなので」
一戦目はなんか人当たりのいい相手だったから良かったが、試合後絡んでくるような相手だった場合、力づくなら自分が盾になるが、口喧嘩になった場合自分はあまり自信がない。
クラーヴンさんが口喧嘩に強いのかと言われれば、それは分らない。しかし他人の話を聞く度量と大人の粘りに期待して、付いて来て貰った。コレで安心して戦える。ちなみにアンデルセンさんは煽るから付き添いは断った。
受付を済ませれば、そう待つこともなくリングに呼び出される。
相手はヒョロッとした色黒の男性で、軽装に丸い中盾と湾曲した刀持ち。露出部に刺青がいっぱい入っててなんか怖いが、何となくインドとかのイメージなんだけど、やっぱりもっと色んな事知っていればな~。自分の知識のなさが恨めしい。
[ソタローVSブーディー Fight!]
という事で、あいも変わらずあっさり始まるのだが、相手は何故か脚を大きく開き膝を曲げ、前傾に体を縮め始めた。
次の瞬間、一っ飛びで大ジャンプ斬り下ろし思わず盾を持ち上げ受け止めたが、術効果が乗っていたのか軽装ではありえない重量に足が止まる。
そこからは呼吸をしていないのではないかというレベルの高速連続斬り、上上下下上下……。
相手に合わせるだけでいっぱいいっぱいの所で、姿が消えたと思ったら、足を斬られた。
ぺシャッと意図的に体を潰し地面スレスレを斬り払われ、脛当てのないブーツ部分を斬られ、流石にダメージが入る。
上から重剣を振り下ろした時には、体を引きながら体勢を立て直し再び連続攻撃が襲い掛かってくるが、速いというよりは柔らかい。
絶え間ない攻撃は体を柔らく使う事で、コンパクトな振りになっているだけで、息を詰めた無理な連打ではない事が窺える。
武技 盾撃
逆に自分は息を詰めた一撃で盾ごと押し込んで相手を飛ばす。ちなみに元は 盾衝 だったが、ノックバックをある程度調節できるようになり、更にダメージ量が自分の重量で増すようになった。
鎧の上から一撃貰ったが、結局金属装甲の上からならば<防御>が掛かりダメージは大した事がない。
距離を取って睨みあい、と言っても自分は盾裏からだが……。相手の剣を持つ手の刺青がうっすら光り始めると、大きく横薙ぎに払ってくるが、明らかに間合いの外。つまり術の範囲攻撃だろうと踏んで、
殴盾術 獅子反射
盾から飛び出す獅子のエフェクトが術打ち終わりで足の止まってる相手を吹き飛ばす。
いつもならここで追うのだが、足を斬られてデバフが発生したらしい。左足が動かない。
これがフィールドだったら、治療キットで足を治すだけなのだが、このイベントどうやら回復アイテムの使用は一部術の触媒以外は不可だとの事で、棒立ちで自然回復待ち。
どうやら相手もこちらのデバフに気がついたのか、余裕を持って距離を取り、考え中?
しかし結局は離れれば自分の術反射があるため、近距離で仕留めるしかないと踏んだのだろう。しなやかな走り方で、真っ直ぐ向かってくる。
間合いに入った瞬間にまた姿勢が低くなったので、盾を地面に打ち付けるように足を<防御>しようとすると、頭に衝撃が走る。
だが直ぐに理由は判明、剣はフェイントで寧ろ体を回転させ蹴りが死角から入っていた。
重装備は打撃ダメージが比較的入りやすい、昏倒まではいかずとも剣より重いダメージ量に多少ふらつく。
そこに丸盾で横殴り、それは重剣で弾き返す。多分重さが違うのだろう大きく弾き飛ばされた相手を
殴盾術 獅子打
盾で強引に殴りつけると、それを剣で受けようとした相手が飛ばされ転がる。
相手は立ち上がると更に術を発動、両上腕から肩にかけて、脛から腿にかけての刺青が光りだし、全開といった所か?
と思ったら、剣を一回地面に突き立て、体の何箇所かを自分の指で突くと、更に全身からエフェクトを発し始める。
どうやら、バフを多重にかけてくるタイプだったらしい。しかし勿論自分もその隙を逃しはしない。
一旦重剣を地面突き刺し盾をそこに立掛け、
鋼鎧術 多富鎧
鋼鎧術 天衣迅鎧
を発動からの剣と盾を手に持ち、
壊剣術 天荒
殴盾術 獅子打
相手が接近してくると分っている以上、もう発動しっ放しでいいだろう。普段は精神力節約と 獅子反射 の切り替えがあるのでオンオフしているが、次に猛攻がくるであろう事は想像に難くない。
石の地面を揺らすほどの一歩の重さとそれに反するスピードで一瞬で間合いに入ってきた相手を盾でぶん殴る。
読んでいたかのように盾で打ち返してきたが、自分の力勝ち。だが体が柔らかい相手は直ぐにその衝撃を受け流して、鋭い剣の攻撃が冑を揺らす。
それを無視して相手の足を蹴りにいったら、どうやら相手も同じ考えだったらしく、脛と脛がぶつかる。
術を発動する刺青が入っている為、露出していた脛を金属の塊で蹴られた相手はその場に体勢を崩すが、転がらないボディバランスはモノが違う。
だが、その隙に重剣を地面に突き刺し、盾を放り投げ、
壊剣術 天沼
から、鉄擁 のつもりでギリギリと締め上げれば、相手がダメージを負う。本当は膝蹴りを入れるつもりだったが、何か想像以上に相手が削られているみたいなので、そのままにしたら勝ってしまった。
鉄擁は拘束技だし、天衣迅鎧はそこまでのダメージあったっけ?