188.今時の子達についていけない
そそくさとリングを降りると、本戦二戦目の日程を伝えられる。特に現実の予定を変更しなくても行けそうな日がいくつかあったので、こちらからも伝えておく。
その間に対戦相手のセコンドもいなくなっていたが、表に出ると直ぐに声をかけられた。
「あっソタロー!お疲れー」
「お疲れ様です対戦ありがとうございました」
「っていうかさ!ソタローやばくね?マジ『もののふ』じゃん!全然ダメージ入らねーのうけんだけど!」
「そうですか?術とかは流石にダメージになったので焦りましたけど」
「え~絶対嘘じゃん。あーし今回優勝するつもりだったのに、本戦一戦目で負けるとか絶対先輩に笑われるんだけど」
「そんな事無いよ!アンちゃんじゃなきゃ、本戦出場も無理だったって!」
「先輩っていうのもいるんですか?」
「そう!【森国】の『隠忍』って言うクランだけど、超人気ねーの!絶対知らないでしょ?」
「いや、確か……楽しいサバイバルに出場してた気が?隠れるに忍ぶって忍者みたいだなとは思いました」
「え~知ってんだ!凄いじゃん!やっぱ忍者だよねあーしもそう思った!でさでさ!先輩達さこの前今度こそ有名になるぞ!とか言って指名手配犯倒そうと超イキッてたのに、本当の忍者にボコボコにされてるのしかも相手はたった三人!あーしは大人数で一人倒すとか好きじゃないからパスしたんだけど、忍者とは友達になった!めっちゃ面白くて~佐助と半蔵と小太郎といるんだけど、サイゾウはいねーのかよ!ってつっ込んだら、玄蕃はいるって!マジうけるっしょ?何で忍名人玄蕃が出てくるんだよって!」
「いや、自分は忍者詳しくないので、ちょっと分らないですけど」
「え~マジで!もののふなのに?って言うか盾と剣とか何やってる人?」
「いや現実では普通の学生です」
「マジか!それでそんなに強いのとか意味わかんないんだけど!この前の決闘王の大会とかは皆ガチ装備だから勝てるか分んないから諦めたけど、今回は装備差ないじゃん?しかもあーしの相棒のチーちゃんは絹も金属も柄の部分の木も生産できるから超器用だし、絶対勝てると思ったのにさ~」
「自分はゲーム内で【訓練】してるだけですね~。でもそういうので強い人もいますよ」
「へ~!あーしは子供の頃から爺ちゃんに薙刀教えてもらってるから、自信あったんだけどな~……」
「あ~ところで、お二人ともかなり若そうですけど、その割りにSNSとかゲームとか慣れてなさそうなのは、やっぱり薙刀に熱中してきたからですか?」
「え?いやだってSNSとかやばくない?個人情報とか流出したら怖いじゃん。知らない人があーしの事しってるんだよ?絶対やばいし」
「薙刀の試合とか出てたら結局知ってる人も多そうですけど」
「そういうのは、いざとなったら爺ちゃんの薙刀で斬るから大丈夫」
「ああ……」
「アンちゃん本当に強いんだよ。昔アタシがいじめられた時、本当にお爺ちゃんの薙刀持ってきて、相手ぶっ殺そうとして校長にめっちゃ怒られたの」
「あ~、でも校長よりママの方が超怖かったから、すぐ殺すとかそういう手段に出るのは弱いからだっつって、死ぬほどしごかれた」
「ね~ボコボコだったよね~でもアンちゃんママ地元最強だから仕方ないよ」
「地元最強って言葉使う人初めて見ました」
「いや、まじでママやばい!今は杖術の先生やってるけど元陸自だから、ガチソルジャー!」
「それはまた大変そうですね。それこそ【兵士】なんてゲームの中でしかやってないですけど、それでも大変ですからね~」
「え~!ソタローもソルジャーなの!もののふなんだから将軍に仕えればいいのに!【森国】にいるよ将軍!」
「そう言われても自分は【帝国】で他人を率いる身なので、そう簡単に移籍とかは出来ないですね」
「そうなんだ!え?何人?何人率いてるの?」
「一応今は100人ですけど、1000人率いる事ができるようにクエスト受けてる所です」
「やべー!!!実質大名じゃん!何万石?」
「いや給料制ですけど?一応ニューターは他所から来てる訳ですから、直轄地を治めたりとかはないですよ。っていうかさっきからかなり戦国事情に詳しいみたいですけど、何故それでその喋り方なんですか?」
「戦国知識は爺ちゃんに教わった。でもママが~学校で浮くといけないからって、色々教えてもらってるうちにこうなった」
「お母さん陸自なのに、何でこんな方向に……」
「分んないけど、何か心配だったってさ。ちなみにソタローの推しは?あーし石舟斎!イケオジだから!」
「アタシは立花宗茂!最強の戦国武将だから!」
「あ~相棒も戦国知識あるんですね」
「そう!アタシはアンちゃんと友達になってからアンちゃんのお爺ちゃんに手裏剣教わってるんだ~」
「チーちゃんは腕立て一回も上がらないのに、手裏剣だけ超強いの!やばくない?」
「別に強くはないよ!アンちゃんだって腹筋割れてるじゃん!」
「あーしは腹筋バキバキだもん!薙刀やってるからご飯何杯食べても太んないし!でもチーちゃんこの前飛んでるカメムシ、フランクフルトの棒で倒してたじゃん」
「カメムシは遅いんだから当たり前でしょ!子供でも出来るよ!」
ん~なんか変わった子達と知り合いになっちゃったな~。