表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
180/363

179.筋肉を信じる

 さて、筋力が高まったと周囲から言われ、それを確認するにはどうすればいいのか?


 答えは師匠に聞く!と言う訳で訓練場に向かう。


 「師匠!お父様に会いましたよ」


 「そうらしいね。父が今時見所のある若者だと仰ってたよ」


 「ソタロー!よく無事で還ってきた!しかもかの筋肉感謝祭重量部門黄金王級で優勝を飾るなど、欲しいと言って得られる栄誉ではないぞ!おめでとう!これで名実共に【帝国】の筋肉となったな!素晴らしい!」


 ホアンさんは相変わらずだが、セサルさんはいつものキラキラに妙なポージングが加わって一層気持ち悪い。


 細身美形のポージングで、何の筋肉の隆起もないのだが、どうしたものだろうか?


 「それで師匠達に相談なんですが、自分の筋力がどれ程になったのか今ひとつ分らないので、是非教えていただけないでしょうか?」


 「何をそんなに固くなっているんだい?固いのは上腕二等筋だけにするといい」


 「そうだぞソタロー!我ら師弟の間に遠慮なんて要らないのだ。父上も仰っていたもっとソタローを見習えとね!そう!我らは教えているばかりではなく、教えられる立場でもあるのだ!」


 「いえ、お父様から、さん付けはやめなさいと言われまして、しかも身分制度が悪いから、いずれなくすつもりだと打ち明けられたりしまして、何か気になっちゃったんですよね」

 

 「その話をするとはよっぽど父上に気に入られたのだね。父上のみならず我が家は代々白竜様への信仰心が強く、力を求めるのが当たり前で育ってるし、まず己の実力を磨く事をこそ重用としているからね」


 「だが!ソタローは何も気にすることはないさ!好きな道を歩んだらいい。何しろそれだけの筋肉を手に入れたんだからね!誰も止める事の出来ない無双の筋肉を!さあ!私にも見せておくれ!」


 「それで、そのどうやって見せたらいいですか?強くなった強くなったって言われて、自覚がないんです」


 「ならじゃあ、先に僕から相手してもらおうか!」


 言うなり、ホアンさんが鎧のまま頭から突っ込んできたので、自分も頭を下げて肩で受け止める。


 伝わる金属の感触で皮膚が冷たく感じるが、不思議と痛みはない。寧ろホアンさんの金属鎧がホアンさんに帰属するものではなく、ただの間に挟まる壁の様に感じる。


 ぐいぐい押し込むが、師匠は全く動かない。


 よく考えたらどういうルールかも分らないまま正面から押し合っているだけだが、これでいいのだろうか?


 こう着状態が続き、セサルさんの合図で別れたのだが、さてホアンさんの評価はいかに?


 「じゃあ、次は私だ!」


 評価を聞く前に始まってしまった。


 自分は借り物の重剣を構えて、セサルさんの打ち込みを受けとめる。ホアンさんは相変わらず重い剣を扱ってるとは思えない巧妙な剣捌きだが、追いつけないほどではない。


 タイミングを合わせて弾き飛ばせば、その分時間を稼げるので、体勢を整えながらひたすら打ち込みに耐えているうちに今度はホアンさんの合図で、別れる。


 「えっと、どうでしたでしょうか?」


 「うん、ソタローの筋力は確かに上がっている。それこそ筋力のみで対したら僕達では手に負えないレベルでね。じゃあ何故こう着状態になったのか?本来はもっと圧倒してもおかしくない程、差があるにもかかわらずだ」


 一応本当に上がっているようでちょっとほっとしたが、しかし本来なら圧倒できるほどの筋力差をどうやって埋められたのか?


 「術の使い方ですか?」


 「ノ!それは違うぞソタロー!いいか、ソタロー最大の弱点は己の筋肉を信じていない事だ!」


 この世の悲劇の全てが集約したかの様なオーバーな崩れ落ち方をしで天を仰ぐセサルさんの周りは心なしか真っ暗で、舞い振る雪が散る花びらにすら見える。


 「筋肉を信じる?」


 「そうだね。いいかい?筋肉が強ければそれだけ重いものも運べるし、健康にもいいだろう。だが破壊力を出そうとすれば、自ずと身を守る為それを抑える力もでてしまうものだ」


 「じゃあ、プラスマイナス0じゃないですか」


 「そんな事はないぞ!今のソタローは身を守る為だけなら自然と力を使えている!つまり守り100だ!」


 「つまり筋肉を信じれば、攻撃にも振ることが出来る?」


 「そういう事だね。つまり大きな力を出す事で、己が傷つくかもしれないから、勝手に制御してしまってる状態なんだ。そのリミッターを外せば、攻撃力にも転化できるし、きっと自覚も出来る様になるんじゃないかな?」


 言われれば、その通りなのかな?そりゃ大きな力を出せばそれだけ怪我のリスクは高まるし、だから守る方に多くの力を割いてるのも分らないでもない。だとしてだ?


 「それって、リミッター外したら自分が怪我する事になりませんか?」


 「それが、筋肉を信じる事が出来てないと言うのだよ!大丈夫!筋肉はソタローを傷つける為に育ったんじゃない!寧ろソタローを害するものからソタローを守る為にそんなに大きく立派に育ったんじゃないか!」


 思わず左肩の筋肉の盛り上がりを触れて確認してしまう。


 「安心したまえ、何のために僕達がいると思う?ソタローはそろそろ殻を破ってもいい頃合だ」


 「殻ですか?」


 「その通り!開放だよ!祝福されし筋肉よ!目覚めの時間だ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] (・・)筋肉は裏切らない(笑) しか~し アバターなので、見た目は多分、変わらない つまり、本人が一番、変わったかを実感できない(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ