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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
175/363

174.筋肉会話※筋肉で解釈してください

 ここまでの試合で思っていることを正直にぶつけて聞いてみようと思う。


 「あの、ろくな接触もなしに1戦目2戦目と勝ってしまったんですが、本当にこれでいいんですか?」


 「何の問題もないっすよ?さっきも言った通り、何が起きるか分らない所がいいっす。笑いあり筋肉ありのエンターテイメントが重量部門っす。今の戦いも一人は沈み、一人は流されどっちが勝つのか皆手に汗握ってたっす」


 「自分にはこれで一体何が盛り上がるのか分らないです。それに自分はもっと強くなろうと思って【闘都】に来たので、出来れば普通の闘技がしたいです」


 「ふむそうっすか……ソタローはまだ気がついてないっすね?その超重量装備を身に纏ったまま行動していて、何か動きのキレが良くなったな?とかないっすか?」


 「え?まあ動きやすくはなってますけど、慣れたっていうかなんというか」


 「慣れでどうにかなる重量じゃないっす。この祭典に隠されたもう一つの意味は、参加者及び勝利者の筋力が高まるって事っす。そもそも祭りとは、神や信奉するものを奉る行事っす。つまり筋肉を愛し信じる心が参加者の筋肉を次の次元に押し上げるっす」


 「自分の知らないところで、そんな事が行われていたんですか?」


 「そうっす!つまり筋肉を信じる者達がどんな結末であれ大盛り上がりする事も祭事の大事な一環っす!そしてこの重量部門は最も予想外な事が起き易い故に、筋肉が欲しくともつきづらい【教国】のヒトや、そもそも筋肉大好きな【帝国】のヒトも多く参加するっす。勿論他の国でもそもそも筋肉が嫌いなヒトなんて存在しないっす。何しろどこの誰であれ、筋肉にお世話になってるんすから」


 「嫌いなヒトがいないって言うのは賛否両論ありそうですけど、まさか自分の筋力を高める為にこの祭典に参加させて貰っていたとは!」


 「そうっす。正直ちょっと偏った思想なので、好き嫌いのある祭典っすけど、参加には結構ハードルがあるっす。でもソタローは【帝国】の過去の記録保持者達からお墨付きを貰っているので、あとは自分がねじ込んだしだいっす」


 「なるほど、でもそれならカピヨンさんとかの方がよっぽどいい成績残せそうですけど……」


 「さすが【帝国】所属っす。かのカピヨンを知っているっすね。カピヨンと言えばドワーフ一強と長年いわれ続け、最もどんでん返しのない競技とされていたポージング部門で、ヒュムでありながら圧倒的筋肉を見せ付けた偉人っす!その時カピヨンの筋肉を見た者は口をそろえてこう言ったっす『背中に鬼が住んでいる』と!凝縮され圧倒的密度の筋肉を持つドワーフ達が涙目になったと言う伝説の祭典っすよ!」


 「カピヨンさんって只者じゃないと思っていたら、筋肉界の伝説だったんですね」


 「そうっす。そしてソタローも伝説になるっす!予選の相手は運よく殆ど動けない相手ばかりだったっす。でもここからは本選!これまで通りはいかないっす!相手も筋力を増量してるっすから当然っす」


 「つまりここからは本格的な闘技、それも筋力重視同士の危険な戦いの始まりって訳ですね」


 「超重量装備を身にまとってお互い決定打がないまま殴りあうのは、筋肉にとって最高のスパイスっす。是非全身の筋繊維が引き千切れ、それを超回復させるサイクルを楽しんで欲しいっす。何しろ闘技の最中も観客の盛り上がりによって、一時的な筋力補助も与えられるっすから」

 

 「観客の盛り上がり次第って言う所はやっぱり闘技なんですね。分りました!全身の筋力を振り絞って盛り上げる戦いをします!」


 「そうっす!その意気っす!そうと決まれば食事っす!」


 「ここで食事タイムだったんですね」


 「本選で力を使う参加者への配慮っす。安心するっす。何しろ祭典期間中は筋肉にいい最高の食事が提供されるっす。ソタローも気に入る筈っす」


 そう言われて、鼠のヒトと一緒に【闘技場】に隣接する施設に向かう。


 そこには既に大勢の筋肉の塊達がいたが、皆同じ物を食べている。


 鼠のヒトの後ろに並んでいると、割とすぐに順番が来て手渡されるのは、ブロッコリー?


 「これはなんていう料理なんですかね?」


 「これは柔らかく蒸した鶏肉とブロッコリーっす。筋肉の完全栄養食と言われてるっす!あとは食べてみれば分るっす。シンプルに見えて奥が深いっす。作っているのも有数のシェフっすから味も保障するっす」


 言われてつい理由もなく奥の中央の方を見るとチラッとカピヨンさんのような体型のコック帽をかぶったヒトが見えた。


 まあ変なものではないしと、一個ブロッコリーを口に放り込む。


 見えたのは、たった一口のブロッコリーから供給されるあらゆる栄養素が全身を駆け巡る幻覚。


 まだ消化も何もされていないのに吸収される訳がない。理屈では分っていても、自分の舌と筋肉がその幻覚こそが真実だと伝えてくる。


 筋肉のみならず全身の細胞が覚醒する感覚!体中のミトコンドリアからエネルギーが生産される!


 早く二口目を放り込めと囁き叫ぶ細胞になけなしの理性で待ったをかけて口に入れるのは鶏肉。


 コイツもヤバイ!


 ぐらぁっと、思わず仰け反ってしまったのは全身の筋肉を伸ばす事でより深く吸収したいという体の欲求そのもの。


 切れた筋繊維が一瞬で回復していく感覚。ミチミチと音をたてて、筋肉が超重量の鎧を内側から押し上げる。


 完全に臨戦態勢だが、寧ろ心地いい!


 緊張感のない興奮が、手を動かし手ブロッコリーと鶏肉を摂取する行動に没入させる。


 筋肉は言うに及ばず、体温も何なら免疫力も高まり、万能感に支配され、食べ終わると同時に足は闘技場へと向かう。


 あとで自分の異常行動に周りが心配していたと聞く事になるが、これは到底抗えるものではなかったし、何なら歴代のマッスルマスターは同様の反応をする者も少なくないらしく、鼠のヒトは自分の優勝を確信して、大金賭けたそうな。

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― 新着の感想 ―
[一言] す、素直が過ぎてなんかやべーもんに浸食されてやがる……
[一言] ブロッコリーと、鶏肉のドーピング……………ww ついでに見える幻覚 ( ̄□ ̄;)!!ヤバいもの?
[一言] ナニカサレタヨウダ(食事)
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