173.水の闘技場-水追加ー
控え室に戻って待機していると、予選二戦目が始まった。
自分の出番を待っている内に係りのヒトに呼ばれ、引換券を回収された代わりにカタログを渡される。
「ふむ、鉄壁の不屈のポイントは10だ。10ポイント以内でそのカタログからボーナスを選ぶといい」
「10ポイントっていうのはどういう判定なんですか?」
「勝ち点4にアイテム2×2=4に短時間決着で2だ」
と言う事で引き換えポイントを貰ったのでカタログを確認。
パッと目に付くのは武器防具を最初から携帯出来る権利だな。権利だけで2。
それにプラスして盾や重剣のポイントがあるわけだが、これは性能によってピンキリみたいだ。
他にも気になるのはフロートっていう浮かぶ為の道具なのだが、
「このフロートって言うのは場外負けも無効化したりしますか?」
「残念ながらそれは無理だが、次の対戦では役に立つかもな」
他にも色々と追加で持ち込むことは出来るが、肝心の重量軽減は存在しない。
まあ、何しろ重量部門で軽くて勝っちゃいました!なんて事になったら冷めちゃうし、仕方ないか。
あ~!あともう一個気になる!足にタイヤを付けられるらしい。
「このタイヤって言うのは、動力はなんですか?」
「ああそれは、かかとを地面に付く角度でタイヤを接地させて滑るように移動できる道具だな。動力は足漕ぎだ」
どうやら小学生とかが履いてるローラーシューズ的な追加装備らしい。どうするか……。
いやちょっと待て!膝にドリル付けられるじゃん!
「こ!このドリルって、どうやって回転するんですか?」
「それはドリルじゃなくて角だ。回転はしないぞ」
つまらない。絵で見る限りどう見てもドリルなのに回転しないただの螺旋状の角とは、はめられた気分だ。
いいや、フロートと四角い中盾と重剣で丁度10ポイントにしておこう。
選び終わるとフィールドに上がるための陣に向かい、出番を待つ。
重すぎる鎧の所為か姿勢がずっと悪いので、大きく仰け反って腰を伸ばし体を緩める。
前の出場者が隣の陣で戻って来たら、係りのヒトが無言で次は自分だと伝えてくるので、陣の上で待機。
一分もしない内に足場が動き闘技フィールドに運び出された。
そして先程迄とは様変わりし、中央がやや盛り上がるやや球状のフィールドになっており、
更にはフィールド中央部に水が湧き、四方に四本の川が形成され場外の水場に水が流れ込むようになっている。
相手はフィールド中央を挟んだ丁度真反対に位置しているようだ。
つまりどうにかして川を渡らねばならない。
フロートは昔懐かしのビート板だが、しかし自分は<水泳>のスキルを持っていないので浮くだけじゃどうにもならない、万事休す。
[予選二戦目!Fight!]
うん、まだ考えがまとまってないぞ。どうするか?
すると一回戦同様宝箱が目の前を歩いて通り過ぎたので、反射で飛びつき中身を確認すると一回戦で使った鎖鉄球。
はたと思いつき、その鉄球を水辺まで引きずっていき対岸に投げると、鎖が水幅ギリギリ届く。
フロートに捕まって、鎖を頼りに対岸に渡る事ができた。
何気に水の流れがあって、かなり幅の狭い水道でも渡るのに苦戦した。そもそも超重装備で川を渡るものじゃない。
軽量のヒトなら平気な顔して飛び越えるような狭い水を越えたが、相手はいない。
どうやら相手は完全に立ち往生してしまって川を渡るのを諦めたのか、はたまた有利な立ち位置を確保する為に待ち伏せしているのか。
するとまた宝箱が近くを歩いていたので、すぐに捕まえて中身を取り出すと、何か金の延べ棒?
それもわざわざ下げやすいように金具がくっ付いていて、借りてる鎧にまで付ける場所があるんだから、完全にやらせる気だ。
更に重量が増して嫌になるが、そういう闘技だと思って腰に下げる。
そして、更にもう一個宝箱を見つけ捕まえると、また金延べ棒。思わず汚い言葉で叫び出しそうだが、まだ動ける範疇だし諦めてそれも腰に下げ、足を引きずるように次の水辺へ移動。
渡り方は同じ、鎖鉄球を対岸に投げ込んで、鎖を頼りにフロートで浮いて移動。
水に使っちゃえば浮力で多少はマシになるが、やっぱり流れが早くて怖い。
そして、対岸と思った所で自分の上に影がかかる。
ゆっくり見上げると対戦相手だ~。待ち伏せられてるよな~そりゃ。気配で近くにいるのは分ってたし、水を渡るまでは待ってくれるかなと、思ったけどそんな事はなさそう。
思い切り勢いをつけ踏みつけてきた足を肩で受けて、そのまま抱え込むが、
代わりに鎖を手放す事になり、水の流れに身を任せ相手を水に引きずりこむ。
相手が水底に沈み動けない間、自分はフロートに掴まってただただ流されるしかない。
このままでは場外負けなので、最後の悪あがき!
盾を水の流れに垂直に向けて方向を微調整する事で、ジワジワと岸側に流されていく。
そして、少し低い位置にある場外の水溜りに水が流れ込む音が鮮明に聞こえ始めた所で、岸にフロートが引っ掛かり、何とか止まった。
そのままはたから見たらかなり格好悪い体勢で、ずるずると岸に上がり、仰向けに倒れこむ。
【帝国】とは大違いの綺麗に抜けるような青空を眺めている内に、自分の勝ちが決まった。
元の陣まで戻るのが大変だなと思っていたら、中央の水源地に誘導されそこから帰還。
また引換券を渡されたが、中には230ポイントと書かれている。随分増えたな~。