168.師匠に相談だ
「エレス エクセレンッッッテ!」
「え?なんて?」
「そうだね兄さん。やはり僕達の弟子は最高だね!」
「弟子の成長とはここまで嬉しいものなのだね!これからはもっと後進の育成にも力を入れるとしよう!」
いつものキラキラ三倍増しで何か感動している師匠達。自分はただ壊剣術使ったら爆発したって伝えただけなんだが?
一応5連戦のあと、食事して流石に眠くなったので【古都】に帰りログアウト。その日はよく眠れた。
ゲームは仮想現実だが、プレイしているのは自分なのだから、十分に休息を取って無理のないゲームプレイを楽しもうと心に誓った。
「あの、結局あの爆発ってなんですか?」
「まあ一言で言うなら必殺技だね!必ず殺す技だ!まさか何もいわずに辿り着いてしまうなんて!ファンタスティコ!」
さっきから何語かさっぱり分らないが、多分褒められてるんだろう。
「一体どういう条件で発動するものなんですか?」
「その術の名前は 壊剣術 天破 簡単にいうと剣で相手を貫いた状態で一気に精神力を流し込むと、敵は爆死する。ただ必殺するには十分に相手にダメージを与えている必要があるからその点は要注意さ!」
「うん、大型の魔物なんかは生命力がかなり高くなっているから 天破 で倒すのは難しいと思うよ。あとは敵を貫くって言う条件も装備次第になってくるから気をつけないと」
「成る程、十分に削った相手を一気に倒しきりたい時に使う追い込み術なんですね」
「そういう事さ!生命力をギリギリ残しながら死力を尽くして粘られるなんて、中々面倒な事だ。そういう時に便利なトドメ用術だと思ってもらって構わない」
ふむ、自分は割りと攻撃力は高い方の筈なので当りさえすれば大きいが、確かに後一発が当らないまま粘られたら辛いものがある。これは便利な術じゃなかろうか?
「ところで、師匠相談があるんですけど」
「な!なんだって!自分で歩き出したというのに、まだ頼ってくれるなんて、なんていい弟子だ!」
「そうだね兄さん!ソタローは驕ることを知らず、常に先人の知恵や力を借りる事の出来る素直で他人から好かれる気性だ。これは天性と言ってもいいだろうね!さあ何でも聞きたまえ僕らの弟子よ!」
何か相変わらず師匠兄弟はテンション高いが、ちゃんと教えてくれるのだから構わないか。
「あの、武器を持っていない時の手の使い方を聞きたいんですけど」
「ホアンの術 空流鎧 を使うときは確かに武器を持てないからね!素早く動いた方が有利な時にはいい選択だ!私の 天沼 と併用すれば、ソタローの筋力なら十分な攻撃力を得られるだろう!」
「問題は武器を持っていない状態の攻撃方法という事だね。基本は<蹴り>になるのだろうが、それについては僕は助言する知識を持っていない。手と言うと篭手を使った身の守りになるかな。ソタローは<素手>系のスキルを持ってないからね」
「是非それを教えていただきたいんですけど」
という事で、ホアン師匠との【訓練】開始。何しろセサル師匠は重剣の師匠なので、素手ではやる事がない。
「基本的には、ソタローはただでさえ<総金属>なので全身どこで受けても<防御>は発動するので、正直あまりこだわらなくてもいい」
「でも師匠は一応篭手を使った身の守りを習得しているんですよね?」
「うん、その通り。篭手で相手の攻撃を防ぎつつ、何なら相手の妨害をする事でこちらに有利な状況を作る術を使う」
両手の平を胸の前にあわせ祈るようなポーズをして精神力を流すと、
鋼鎧術 灰塗鎧
両腕にボンヤリとエフェクトが発生する。多分この腕で相手の攻撃を<防御>すると妨害になるのだろう。
「これはどんな効果が乗るんですか?」
「うん、その腕で相手の攻撃を受け止めると受け止める度に相手の武器の重量が増すんだ。なんなんら受け止めなくても相手の武器にぶつけるだけでもいい」
「なるほど!それが妨害ですか、投擲武器や弓矢以外ならかなり使い勝手が良さそうですね」
「そうだね……説明する前に察してしまったか。接近戦で使える術になるね。機動力の上がる 空流鎧 と併用すると尚便利だろう。じゃあここからは実践訓練だ」
そう言うなり剣を構える師匠に、術を発動して両手を前に構える自分。
先ずは真っ直ぐ正面から斬ってきたのを両腕で受け止め、早速注意を受けることに。
「ソタロー幾ら重量級とは言え動かないのはどうかと思うよ?動けないなら考えないといけないけど、極力動いて胴体や頭が剣の軌道に入らない様に避けつつ、篭手で横から当ててやるんだ!」
再度真っ直ぐ振られた剣を横に避けながら篭手で横に弾く。
「うんいいよ!ソタローは弾くのが得意だから、それで行こう!」
次は袈裟切り、斜めの軌道をどうやって避けたものか思案のしどころだが、くぐるか一歩進んで打点をずらすのが良さそう。
その上で篭手で、こつんとやってやれば相手の武器重量が増して、振りづらくなるのだから、これは使い勝手がいい。
その日は飽きるまで【訓練】に付き合ってもらい、術の使用感を確かめた。