167.コローナファミリア戦総評
「うま!うま!う~ま~~い!」
疲れ切って、フラフラと控え室に戻る所までは覚えているが、ぐったりそこらにあった手ごろな何かに崩れ落ちるように腰を落としたら、
何故か広い個室のご飯屋さんで、焼肉食べていた。
「ほらほら!どんどん食べな!」
「ありがとうございます!ところでここ何処ですか?」
「あ~やっぱりあんた若干飛んでたね。集中した状態が続くと偶に疲労で頭がボーっとなっちまうんだよね」
「確かに、4戦目か5戦目くらいから集中できなくなって、しんどかったですけど」
「それも踏まえての追い込みっす。そういう戦いを繰り返す程集中力が高まってちょっとやそっとの妨害で気がそれたりしなくなるし、持続力や粘り強さが身につくっす」
「まあここぞって言う時の一撃を当てられるか、もう一発攻撃を繰り出せるかって所に繋がってくるのかもしれないね。それでここが何処かって質問の答えだけど、私のスポンサーのやってる店の一つさ。会員制で全てが個室になってるから好きに食べな」
「え?高級店なんじゃないですか?」
「いいんだよ。上級【闘士】用にあるような店だし、アンタの事もかなり気に入ったみたいだったよ。その内声かけられるかもしれないね」
「え?自分がですか?上級【闘士】なんて一度しか戦った事無いのに?しかも強かったし」
「まあそりゃね。アタシだって相性で勝てない相手もいるし、拳同士の闘技でさえまだ技量差で勝てない相手もいるんだから、当然だよ」
「技量と才能と経験を兼ね備えた上級【闘士】を倒すのは難しいっす。ただニューターは身体能力が上がりやすいっすから、頑張って経験を積むっす。力押しも戦術っす」
「さて、食べながらでいいんだけど、うちの連中はどうだった?パッとしない奴らとは言え、アレだけの連戦で全員食ったんだ何かあるだろう?忖度はいらないよ」
「そうですね、順番に行くと初戦の二人は弱すぎてよく分らなかったです。瞬間移動だけは驚きましたけど」
「まぁ、あいつらは小手試しのつもりだったし、負けるとは思ってたけどね」
「二戦目は剣が捕縛用だったのは驚きましたけど、やっぱりそれだけでしたね。やっぱり攻め手が少なすぎた気がします。あと連携がもう少し出来ていれば、一人が妨害と一人が攻撃と役割分担できたんじゃないですかね?」
「それは仕方無いっす。ソタローの重装備は刃物で攻撃を当てられる場所が少なすぎるっす。攻めたくてもどう攻めていいか分からないまま終わってた感じっす」
「三戦目は大型武器使いでしたね。多分重装備の自分にも攻撃が通ると踏んだのかガンガン攻めてきて、この辺から疲労を感じ始めましたけど、やはり大型武器は攻撃が単調なので防ぐのもそう難しくないっていうのがネックだったのかもしれないです」
「なるほどね。でも足を止めて大技で片付けようとした時、発光して目潰し食らわしたアンタの手の多さは笑ったよ!あとは重装備にもかかわらず素早く動くっていうのも中々ズルイじゃないか。私は嫌いじゃないけどね」
「ソタローは術を戦闘の幅を広げるのに使ってるっす。何しろ物理攻撃も物理防御も高いっすから威力を上げる為の小技が必要ないっていうのが、強みっす」
「えっと……四戦目は手強かったです。連携が取れていた事と鉞の威力にかなり削られました。槍使いの方もバランスよかったですし、逆に何でパッとしないのか分りません」
「ふーん、それは伝えておいてやろう。でも二対一でアンタは勝ってるんだよね~。やっぱりシンプルな高耐久高火力に、ある程度制限があるにしても機動力も兼ね備えてる。しかも剣盾どころか体の何処でも攻撃を仕掛けてくる全身凶器っぷりに圧されちまうのかねぇ。術で一発を狙えば反射術まで持ってるんだからいやらしいね」
「五戦目は正直もうフラフラだったのでなんとも言えないんですけど、大型ナイフ使いはもう少し攻撃手段を増やされた方がいいですね。隠し武器使いの方は重装を抜く攻撃持ちだったので、もう少し手数か手札が多ければ、負けてたかもしれません」
「大型ナイフはダガーっす。あのサイズでもそれなりの威力がある武器っす。素早さと威力を兼ね備えているので普通の【闘士】相手なら十分通用するっす。<潜伏>能力も高いし個人的には評価高いっす。暗器使いも指弾には目を見張る物があったっすけど、当然それだけじゃ戦えないとは言えせめて針には仕込みをしておくべきっす」
「ああ~針の貫通攻撃はいいんだけどね。急所に確実に当てないとダメージにならないって話だから、毒針はありかもね。武器種的にはかなり器用な筈なんだけど常に急所を狙うって言うのはやっぱり難しいもんかね」
「急所攻撃が当たり前なんて、カヴァリーさんビエーラさん位しか知らないですよ。ビエーラさんの命中力は異常だし、カヴァリーさんは圧倒的な振りのスピードで首狩りますから、逆にそこに特化してると言うか」
「あの夫婦を基準にしちゃうちの連中が可哀想さ。ただもう一人確実に急所抉れるのがアンタの知り合いにいるだろ」
「え?他にいましたっけ?」
「隊長だよ。カヴァリーが剣速で防御をすり抜けるタイプなら、コントロールされたコンパクトな振りで確実に急所を抉るいやらしい使い手が隊長だよ。やっぱりどこかで特化しつつまとめていかないと頭一つ抜けるのは無理って事かね~」
「特化とまとめですか……」
「ソタローは重量装備を扱う筋力に特化してるっすから、あとはその方向性で戦い方をまとめていけば、十分強くなるっすよ」
「そうだね、アタシが一つ気になったのは、機動力タイプにシフトした時両手に武器持ってないんだから、抱きついて逃がさないのもいいけど、他にも使いようがあるんじゃないかって事くらいだね」
なるほど、武器を持ってないときの手の使い方か……、お腹一杯になったら眠くなってきた。