154.Aトーナメント観戦からの
隊長が現れたと噂の【闘都】上げての大型大会『獅子英雄杯』高い技巧戦が見れるAトーナメントを見物にきたが、
仮面を被っていても正体が分かる人が多いのが一番の特徴かもしれない。
例えば赤騎士さんは装備がいつも通りの赤の<半金属>じゃ幾らなんでも身バレが過ぎると思うのだが……。
まあ大会規定としての仮面って事なのだろう。
赤騎士さんはやや長めの両手剣を自在に操る正統派剣士って感じ。
正眼と言うのだろうか、真っ直ぐ切っ先で相手の眉間を狙うように構え、真っ直ぐ振り上げ、真っ直ぐ振りおろす。
非常に綺麗でキレのある剣の振りは、ちょっと真似できそうも無い。
何しろ自分は振って当ればいいな!の剣筋も何も関係ない。そう考えると自分の剣はただの暴力何じゃ無いかとすら感じてしまう。
袈裟切りは剣の柄近くで相手を捉えて一気に引き斬ると、押してる訳でもないのに相手が吹っ飛ぶ。
強いて言うなら、斬る時の距離が近いので、盾と<蹴り>の間合いと合う。力づくのノックバックで剣の間合いを調整すれば、攻撃が当らない相手じゃ無い。
<半金属>は硬いが、それにダメージを与えられるのが自分の重剣。やってみたら相性はいいのかもしれないな。
基本の通常攻撃はそんな感じだが、術を発動すると切っ先を当てるだけでも大ダメージを与えている。なんなら防御の上からのダメージ量もありそう。
つまり完全に噛み合っちゃう相手だ。もし今後赤騎士さんとやりあったら、完全に泥仕合だな。
お次は嵐の岬の拳士の人。
どうやら元々ガイヤさんのところにいたらしく、恩義があるっぽい。
攻撃の当て方が細かくて、尚且つ接近の膝も強力。距離を取っても素早く間合いを詰めて、術を纏った攻撃がまた強力そう。
しかし、吹き飛ばし系は自分の重量でどの程度効果があるか微妙なところだし、力づくで抑えられない事もなさそう?
<蹴り>勝負にならなければ、やれない事もなさそうかな~。<蹴り>で一日の長を取られてるかな~位の印象なので、装備が完成したら勝負してみたいかな。
問題はPKの人
今更他人からなんて呼ばれているのか知ったのだが、『剣聖の弟子』と呼ばれてる大層な人だった。
そりゃそうか……魔将戦中軍先鋒って感じで、プレイヤー最強の騎士殿と敵を斬りまくってた訳だし、強いに決まってた。
何が凄いって、消える。
魔将戦の時も思ってたけど、完全に短距離ワープの使い手。
いきなり相手の後ろに回って、鞘から刀を引き抜いてそのまま斬っている。そこに術も乗っているので威力もかなりのもの。
種類は少ないが、鳥型のエフェクトが出る遠距離攻撃も持ってるし、術を纏って突っ込む突進攻撃もあり。
隙がないとはこの事か……、何しろ間合いを取りたい相手には瞬間移動。
間合いを詰めたい相手には瞬間移動からの遠距離攻撃。
ただ攻撃が全部術を纏っているのは、通常攻撃の打撃力が少なめなのだろうか?
つまり接近戦の殴り合いは苦手?
移動さえ封じる事ができれば、戦えるかもしれない……。このタイプと戦う事も考えて移動封じの手段を考えておこう。
そして目を引くのが、ガイヤさん。
ガイヤさんも常時術タイプみたいだが、拳に火を纏ったままあとは技量で当てにいってるので、完全に接近戦も得意。
なんなら拳の火を飛ばすので、離れても強い。何なら火の玉を浮かせて追尾弾みたいにして使ってるし、離れちゃ駄目だ。
かと思いきや、地面に対して術を使う事で足元からも攻撃してるし、狙う場所をや距離感を散らしてくる闘技巧者。
伊達に闘技場最強とは言われてないか。
この人と戦うにはもうちょっと修行が必要だなと、再確認できた。
自分が気になったプレイヤーはコレくらいだが、NPCも絡んでいつの間にか一戦一戦かなり集中して観戦していたら、
気がつくとゲーム内で寝るという何とも器用な事をしていた。
昼の日程が終わり観客は皆引き上げ、自分だけ客席でひっくり返っていたのだが、酔っ払いだとでも思われてしまっただろうか?
急にこみ上げてくる恥ずかしさに、頭をかいて恥ずかしさを誤魔化す。勿論誰が見ているわけでもないのは重々承知の上。
ふと気がつくと【闘技場】のリングの上に二つの影。
一人はBトーナメントに出場していた筈の黒い鳥みたいなプレイヤー。
もう一つの影は筋骨隆々の拳士風。
何を話しているのかは分らないが、
何をどうしたのか、拳士風の体がみるみる膨れ上がり人サイズを明らかに越えて巨大化。
普通の人の倍はあるであろう巨体ながら、鈍さを全く見せない鋭いパンチで黒い鳥の人を攻撃。
しかしそれを難なく回避した黒い人の武器は鞭?
敵の巨体に巻き付き、一気に引かれると、全身からダメージエフェクト。
巨体と黒い鳥の人が同時に地面を殴ると、エフェクトがぶつかり合い相殺。
更に巨体のパンチに黒い鳥のヒトもパンチを繰り出すと、爆発したような轟音と共に巨体が吹き飛び、転がる。
最早サイズも重量も超越してしまった、戦いに頭が痛くなってきたので、音をたてないようにそっと帰る。
何しろ黒い鳥の人は明らかに重装なのに動くスピードが速すぎる。自分も空流鎧とか使うけどその比じゃなかった。
敵の巨体のスピードもおかしいけど、あのサイズ差で吹っ飛ぶのが巨体の方っておかしいし。
何となく夢を見ている気分で、一旦【古都】に引き上げ、何しろ【闘都】の宿屋は満員だそうな。