145.雪原の豹
[遍歴の指揮官が訪れたのは何もない雪原。なんの資源もない場所でヒトは生きる事がかなわない。しかしその地には少ない資源を頼りに生きる一族がいた。鉄どころか木すらも得られぬ土地で生きるその部族の戦士。その力に見合わぬ貧しい戦士達を仲間に引き入れようと雪原に踏み込んだ瞬間、戦いが始まる]
[ここより先は我らの地。話す事があるならばまず相応しい力を見せよ]
まさかの【上級士官】二連戦。
全く遍歴の指揮官っていうのは一体何をやっているのだろうか?力を合わせた方がいいのは分かるけど、あっちフラフラこっちフラフラ、目的がさっぱりよく分らない。
まさか自分が遍歴の指揮官役だから、自分で決めなきゃいけないのだろうか?ヒトを率いる目的とか全くない。
何しろ隊長が気になって【帝国】の【兵士】としてプレイしてたら、率いる事になってたんだから、それ以上の目的といわれても困る。
まあ今は一応兵長から【上級士官】になる為にレギオンボスと現役【上級士官】と【将官】を倒せって言われてるからやってはいるが、正直意味分からない。
そんな事考えている内に向かいに現れたのは皮服装備だけのヒト。
グローブは魔物の革なのだろうか、何となくオーラを感じる一品だが、他は普通の皮服。ローブですらない。
一応耳まで隠れる帽子は被っているが、服も帽子も毛皮になってない所を見ると【王国】で着るのはちょっと暑いのかもしれない。
そう言えば設定が何の資源も無い土地なんだし、そうもなるのか……。
だが、油断は一切出来ない。何しろまず速いって事だ。更には【帝国】の【上級士官】がそんな弱い筈がないって事。
まだ言うなら、結構細身に見えるって事は西部タイプ……軍の西部タイプは皇帝派の可能性がある。
まあその辺の区別の仕方は今一まだよく分っていないのだが、皇帝派の幹部は細身らしい。ただ国務尚書も結構細身だし、確実な見分け方とはいえないだろう。
[鉄壁の不屈VS雪原の豹!Fight!]
と言う事で、始まってしまった。
真っ直ぐ走りこんでくる相手。
【帝国】は雪国なので軽くても足を雪に取られるし、多分皆ステップなんか使わないのだろう。
それにしても力強い足取りで間合いを詰められ、構えた盾の上からぶん殴られると、体がちょっと浮く。
いや待って……その軽量でそれなりの重量の自分が浮く攻撃とか何?
拳は握っているのに妙に肩は柔らかく、力強いんだかなんだか分らないまま、
追撃のボディフックを剣を持った右腕で<防御>すると息が詰まる。
突き抜けてくる衝撃に体が固まった所で盾を捕まれ、強引に引き剥がされてしまう。
壊剣術 天荒
すぐさま剣を振りぬけば、綺麗に転がって距離を取り直され、そこからエフェクトの掛かった拳で地面をぶん殴る相手。
足元から氷塊が突き出してきたので、膝で蹴りつけるが、術の威力は物理じゃ相殺されずダメージを貰ってしまう。
更にそのまま地面から突き出た氷柱をぶん殴って割る事で、細かい氷片が襲い掛かってくる。
自分の全身をくまなくダメージを与えてくる礫に体を固めて急所を守る事しか出来ない。
しかし相手は待ってくれる訳もなく、後ろ回し蹴りで吹っ飛ばされ、転がった所を
開いた左手の上に氷の塊を作り出し、それを右拳でぶん殴ってまた氷片攻撃。
妙にいやらしい範囲攻撃を剣と防具で受け止める。
しかし、今度は距離を詰めてこないのはどういう事だ?
……そうか最初は盾を剥がす為にリスクをとって近づいてきたけど、本当は外側から削る方がいいのか。
つまり相手は術士ってことだ。杖とか持ってないけどそういう事だろう。
うん、納得した。相性が悪い。
何とかして盾を拾いたいけど、多分阻止されるだろう。相手からすれば術への対抗手段封じの為に盾を奪ったんだから、当たり前の戦術。
範囲中距離攻撃でちまちま削ればいいんだから、そりゃ余裕だろうが、流石に一矢報いたい所だ。
剣一本でブロックできる隊長の様にはいかないが、一応自分も剣を持っていることだし剣士としてやれる事をするしかない。
再び飛んできた氷片を
鋼鎧術 耐守鎧
防御力を高めて受ければ、思った以上にダメージが少ない?防御力が上がる術って聞いたけど、術に対してもなのか?
そのまま距離を詰めていくと、再び足元を殴るモーションが見えたので、
壊剣術 天沼
確か地面に影響のある術を相殺できる筈だったと思い使えば、案の定氷柱は自分を攻撃するほどのサイズまで育たなかった。
氷柱を殴るつもりで距離を詰めかけた相手に、
壊剣術 天荒
思い切り剣を振りぬくとちょっと剣先に掠った感触、そのまま追撃とばかりに袈裟切りにすれば、
相手が差し出した左手の平に氷の盾が発生、
一瞬剣が止まったが、強引に振りぬけば何ともない。
ただ相手はその稼いだ一瞬で転がって、距離を取り直されてしまった。
しかし、今は進むしかないので思い切り剣を振りかぶりつつ、突っ込む。
左手で何かを掬い上げるように下から大きく天に向かって振ると、氷柱が何本も立ち並び行く手を阻む。
それでもその柱を剣でぶん殴れば割れた。
同時に横合いから別の氷柱を割って礫攻撃を仕掛けられて、仕舞うが寧ろ居場所が分ったのでそっちに向かう。
どうやら氷柱は壊せるが、それでダメージを与えられるのは術者側のみらしい。
まあ仕方ない自分の氷柱じゃ無いし、壊して道を作れるならそれでいい。
そして遂に追いついたところで、顔面を殴られそうになるが、
それは流石に回避……掠ったのは当った内に入らない事にしよう。
相打ち狙いで振った重剣は間合いが詰まってクリーンヒットとはいかなかったが、十分にダメージを与えられたのか、相手の動きが止まる。
更に追撃の膝で距離を調整、重剣の袈裟切りを再び左手から出す氷の盾で受け止められてしまう。
それでもそのまま強引に踏み込んでローキック。
後ろにジャンプされて避けられてしまうが、代わりに自分は近くに落ちてた自分の盾を拾えた。
かなりダメージを貰ってしまったが、立て直したぞ。