143.吹雪の侵略者
[これは弱きを守り強きを挫く、遍歴の指揮官の物語。彼の目的も過去も誰も知らない。ただ、ヒトは力を合わせなければ生きられないと、そう説くのみ。ある時現れた氷海の略奪者にもやはり説くのは、共に力を合わせ手を取り合い一人でも多くを幸せに導こうと言う理想。返ってきた言葉は……]
「俺を納得させる力を見せろ!」
はい!と言う訳で【上級士官】と闘技と相成りました。
頭部と鼻筋を守る冑に全身チェインメイル。それでも動きは俊敏で尚且つ長柄斧は強力無比そのもの。
まだ前口上の最中なのに、すでに漂う強敵の匂い。
筋肉が盛り上がる度にバキバキと音を立てているのは幻聴だろうか……。やっぱり【帝国】の上のヒトは皆化け物なんだ……。
[それでは鉄壁の不屈VS吹雪の侵略者!Fight!]
ああ……始まっちゃった。
一切何の躊躇もないダッシュからの長柄斧強攻撃。
まともに受けたのでは自分が吹っ飛ばされるかもしれないし、バフを掛けてる暇もない。ならば!
殴盾術 獅子打
盾に術を載せて迎撃。斧に盾で殴りかかる。
盾攻撃は相殺され、寧ろ長柄斧で押し込まれるが、それならばと、
壊剣術 天荒
右手に持った剣で相手の肩口に斬りつけ、盛り上がった肩の筋肉に埋没する。
「ばはっ!!!いいぞ!もっと来い!」
何故かダメージと共に士気が上がる敵に、膝蹴りを入れようとすると、そのままするっと間合いを取り直されてしまう。
何なら相手の方が柄の分だけリーチで有利。
今度は自分から突っ込むべく、盾を顔の前に掲げ、
殴盾術 獅子追
習ったばかりの術で、一気に間合いを詰めそのまま盾でぶつかり、吹っ飛ばすつもりが……。
「甘いぞ!そんな捻りもない直線的な攻撃で我を倒せると思うたか!」
思い切り溜めた力で斧を一振りされると、横に転がされてしまった。
すぐに、立ち上がり敵の様子を確認すると、高くジャンプしながら大きく振りかぶる長柄斧。
重量装備はその分移動力やジャンプ力に制限がかかるはずなのでが、その辺のバランスはどうなったのか……。
盾で普通に受けたら、またジリ貧。
壊剣術 天崩
剣の攻撃範囲を広げ、今度は自分が横薙ぎに敵を転がす。
すぐに立ち上がった敵と再びにらみ合いから、大きく息を吐きながら歩いて、間合いを詰める。
敢えて自分を待ち構え、好きなだけ間合いを詰めさせてくれる上官に一つ質問。
「自分は今の【帝国】のあり方、特に軍本位で自由にやりたい事をやれない状況を変えられたらと思います。何か方法はありませんか?」
「あるにはある。俺もそれを求めて力を尽くしているが、そう簡単な事でもない。もし知りたければ俺を倒して聞き出してみろ!」
それならば力づくで自分に味方してもらおう。それが【帝国】流の作法。
お互いに頭突きをする程に前傾姿勢になった所で再戦開始。
殴盾術 獅子打
盾でぶん殴ると同時に、敵は長柄斧を力づくで振ってくるが、間合いが近すぎる。
そのまま重剣で敵の頭をぶん殴るのと、引き込まれる斧で後頭部を強打されるのが同時。
お互いグラッと体勢を崩し、そのまま自分はローキックを放ち、敵は長柄斧の柄で脇腹を抉ってきた。
そのまま、盾の縁で再びぶん殴り、更に重剣を体の内側から振り首を狙ったがそれは流石に長柄斧の柄で受け止められてしまった。
しかしそんな事で怯んでいられない、追い打ちのミドルキックで相手の脇腹を抉る。
敵の長柄斧の振りに合わせて、更に盾攻撃。
上手い事弾き飛ばし両腕を上げた敵の脇腹を重剣でぶん殴ると、流石にグッと息の詰まった上官。
武技 鐘突
頭突きをくらわせ更に攻勢に持ち込み、盾で殴り、程よい距離感を作って、重剣で頭部をもう一発ぶん殴る。
長柄斧を振りかぶる余裕を与えないラッシュに相手がクラッと足がもつれた。
すかさず、ロークックで足を払い、尻餅をつかせると同時に顔面を重剣で潰し、勢い余って後頭部を地面にぶつけた所に
武技 踏殺
武技 潰首
倒れた相手への追撃で、盛り上がる会場。
何でかしらないけど、倒れた相手を攻撃すると喜ばれるんだよな~普通卑怯とか言われそうなものなのに……。
どうやらそこで、相手は打つ手なしと判断したのか、降参した。
あからさまに【帝国】の野蛮なバイキング風上官との戦いだったが、手加減されたのか試されただけなのか、最後はあっさりした物。
拍手で見送られ、控え室に戻ると鼠のヒトが待っていたので、一緒に鼠のヒトの経営するお店へ移動。
正直な所、隊長と同格のヒトならもっと強くてもおかしくない筈だが、どういうつもりだったのだろうか?
疑問が頭をよぎりつつも正確な答えが見つからず、ちょっとモヤモヤしたまま店に到着。
何かいつもの席の様にカウンターに腰掛ると、自然と甘く温かいお茶が出てきて……声を掛けられる?
「よう!待ってたぞ!お前も宰相派だったんだな!」