142.弱点と補強
さて自分は集団戦だけをやっていればいいかと言うとそんな事は無い。
何しろ【上級士官】やら【将官】達と闘わねばならない。
まあここからはただの予想だけど、多分本当は闘わなくてもいいんだろうなっていう……。
いや本当にただの妄想だけど、これから上に来る奴の腕を見てやろうみたいな事じゃない?
何しろ【帝国】の上の人ってやたら面倒見がいいって言うか、教えたがりだし、なんならもっと強くしてやろう位のスタンスじゃないかって予想なんだけど。
とは言え、あまりにも醜態を晒したら何を言われるか……何も言わずに地獄のような【訓練】を受ける事になるか考えるだけで寒気がする。
自分は今迄師匠に恵まれて比較的安全な【訓練】を受けてきた。
ただ話によると一定範囲から出られず周囲から矢を射掛けられるような【訓練】も存在するらしい。
そんなのはただの処刑だが、噂と斬り捨てる事も出来ない実力の猛者プレイヤーがいるのもまた事実。
つまり、もっと真剣に修行に打ち込まねばならない。
そして【闘技場】で戦う事になるのだから、盾の師匠に話を聞くのが一番いいんじゃなかろうか?
「……と言う訳で【帝国】の上官達と闘わなくちゃならなくて、上は化け物揃い、負ければ処刑の様な【訓練】が待ってるので、なんとか力を貸していただけませんか?」
「それはそれは、難儀だの。まあそれだけ期待されてるという事だ喜んだらいい。だが処刑の様な【訓練】は可哀想だし、何よりお主の目標は炎の巫女だったのぉ。ふむ弱点補強と行くか……」
「弱点ですか?」
「うむうむ、まず一つ目、自分より早く動く相手にすぐ得物を手放す事じゃろうの」
「速さで翻弄されない為に術を使ってるんですけど、条件が武器を手放す事なんですよね」
「なるほどなるほど、そりゃ便利じゃが、そもそもその装備じゃ大抵の相手はお主より速いのだから、その度に武器を手放してたんじゃ不利に決まっておる。打ち合いに持ち込めれば圧倒的有利な立場なんだから、間合いを詰める方法さえ手段を用意しておけば、武器を手放す必要はなくなるぞ」
「先日お弟子さんと打ち合いになって、やられかけたんですけど……」
「違う違う。アレは武器が噛み合った所為よ。鈍器は重装によくダメージが通る上、攻撃を頭で受け取ったろう。ありゃいかん。だから盾でぶん殴れと術を教えたわけだ。さらには術で遠距離攻撃してくる相手への対処も教えたし、あとは出入りの素早い相手を捕らえる事と物理遠距離への対応となる」
「物理遠距離はじりじり行くしかないですよね。問題は素早い相手にどうやって距離を詰めるか……」
「うんうん、攻め気はいい事じゃ。相手の足止めをする。もしくは相手を慌てさせて向こうから攻めさせるのもいい方法じゃよ。多分お主の師匠がどんどん自己強化術を教えるのもそれさ。敵からしたら得体の知れない強化を次々とされたら緊張するもんさ。ただ儂はお主に盾しか教えておらんから、ただ直線の移動速度が上がるだけの術を教えてやろう」
殴盾術 獅子追
盾を顔の前に掲げて術を発動すると、本当に真っ直ぐ走る移動速度だけやたら速くなる。自分の様な重装備じゃなきゃただの的だろうし、他のヒトじゃ使いどころを選ぶかもしれない。
ただどうやらこの状態でぶつかると、重量差で普通の相手なら突き飛ばしてしまう様なので完全に自分向き術なのは間違いない。
「これは、助かります。距離さえ詰められればかなり闘いやすくなるし、コレで一つ目は何とかなるかも……」
「そうさそうさ。ただ相手も日々進化するものだから力を求める事を忘れてはいかんぞ。次に二つ目接近術への対応策が無い事だのぉ。炎の巫女は拳に火精の術を込めてくるから接近で術ダメージを食らう事になるぞ」
「術は術で相殺と言っても、手数ではこちらが負けてしまう……。術防御の強化が必要って事になりますか……」
「よく気がついた、よく気がついた。どうしたって攻撃はくらうんだから、そのダメージを軽減する手段を用意して相打ち……いや振り遅れてもお主が与えるダメージの方が大きければ勝てる。それくらいの気概でいかんと、そのスタイルはきつかろうて」
術防御の強化か……。よく考えたら今迄術の相殺は習ってても術防御に付いては何にも教わってない!
「術防御ってどうやったら上がるんですか?」
「そうかい、そうかい、そうきたかい……。基本的に術は術で相殺軽減するか耐性で受けるものでな。一般的な装備だとローブになるが、お主ならサーコートに多少耐性がある筈だし特化した物も作れるぞ。他を希望なら精霊との契約や少量ならアクセサリーにも期待できる」
あれだ……術士骸骨から手に入れたサーコート!あれは精神力とコントロールに補正があった筈!
【帝国】で着るには少々寒いが【闘都】で活動する時はこちらに着替えよう!
いつガイヤさんと戦う事になるか分からないが、術対策を早目に考えておいて損は無い。
あとは【帝国】の上官達とも闘らなきゃいけないけど、どうしたもんかなぁ。