139.島上のペンギン戦
円陣のど真ん中に降り立ったイワトビペンギンは大きく息を吸う。
それに合わせて自分は、
「ここからが勝負です『行きます!』」
戦陣術 激励
殆ど同時に発された甲高い鳴き声は、どこまで届くのか、不気味なほど高く通る。
士気の調整をお互い中和しあい、イワトビペンギンと自分が睨み合う形に……。
下は土、滑る事の出来ないわずかばかりのフィールドに、イワトビペンギンは翼の叩きつけから開始。
鋼鎧術 耐守鎧
一歩踏み込みつつ、全身で羽を受け止めるが、それでも膝を折るほどの圧力。
震える膝に活を入れて立ち上がり、更に真っ直ぐ歩いて距離を詰めていく。
次の攻撃は頭上からのつつき攻撃。
紙一重でかわしながら、首に両腕を巻きつけ、
武技 鉄擁
天衣迅鎧で高まった重量に苦しそうな相手を膝蹴りラッシュで更にダメージを与える。
そして、自分が抑えている所にやっと周囲を囲む仲間達も輪を縮めて参戦し始め、イワトビペンギンの背中にダメージを蓄積していく。
その状況を嫌がったのか、自分を強引に振りほどいたイワトビペンギンが、包囲の一部に突撃をかます。
当然ながらそれを追いかけ、氷上に戻れないようにぶん殴っていると、必然隊列が崩れバフ効果が低下。
「全員固まってください凸隊形!」
戦陣術 突撃
全員でイワトビペンギンに突っ込んでいくと、荒波に飲まれたかの様にダメージを貰いつつ転げてしまう。
再びイワトビペンギンを囲み込み、攻撃を加えるが、ちょうどいい術が無い。
敵を囲い込むのに強い陣形を習いに行こうと、心に決めて攻撃を続ける。
嫌がるイワトビペンギンがペンギンとは思えぬ跳躍を見せ、頭上高く飛び、そのまま落っこちてくると、衝撃波で周囲を囲んでいた【兵士】達が吹き飛ばされてしまう。
幸い重量の重すぎる自分だけは助かり、再び一対一。
睨み合いから、イワトビペンギンの足踏みつけ。
爪先を踏み潰されて痛かったのか、一瞬怯んだイワトビペンギンの足の付け根を膝蹴り。
近すぎる位置にいる自分を黄色いヒレの付いた足で蹴ってくるが、強引に体重と筋力で耐える。
すると、自分にひっかっかり、つんのめって倒れこむペンギンに、走って戻ってきた【兵士】達の一斉攻撃。
一時的なダメージ量は間違いなく高いが、このままま押し切れるかちょっと不安だ。
「囲むのはムジークの部隊!重装備で徹底的に邪魔をして、吹き飛ばしも耐えられるようにコントロール任せた!」
「了解!」
言うが早いか、何かの術を掛けて部隊にバフを掛けているが、なんのバフだろうか?重装同士だし、自分も手に入れられるやつじゃなかろうかと、気持ちをもっていかれるが、今は我慢。
「クラークの部隊は多少距離をとってもいいから、安全圏から絶え間なくダメージを心がけて!」
「了解です!」
すぐに一回り遠くに布陣を変えて、一斉に矢が飛んでくるので、あとはお任せだ。
「チャーニン!攻撃の要で大変だろうが、とにかく仲間を消耗しないように十分に気をつけてくれ!まだ時間がかかる!無理させずに後方に下げるように!」
「分った!生命力が半分を切ったやつは確実に下げて回復させるようにするから、任せろ!」
「スルージャ!」
「部隊のメンバーは伏せさせて、敵逃走に備えてます。決め所までは潜伏してますので、合図ください!」
「ミール!」
「損耗率は1割未満まだまだ無理できます。序盤ソタローが稼いでくれた時間で、体勢は万全です。一先ず【重装兵】及び【歩兵】を中心にバックアップします。こちらの事は気にせず敵に集中してください」
了解です!
もうね、皆ね。優秀なんですよ!農家出身とか関係ない。皆が積み上げて来た任務の数がきっと皆の力を底上げしてるんですよ。
そう!誰だって何か目標を持ってそこに向かって突っ走れば、何か手に入れる事ができるんだと、
悟りを得た事で、自分の力もなんだか増してきた気がした。
そもそも仲間の士気が高まれば、その分だけ自分は強化されていく。
仲間の強さが自分の強さだと認識したら、一気に心強くなってきた。
剣を引き抜き、盾を左手に持ち、通常状態に戻る。
しかし盾も剣も仲間の士気のおかげで、強化がなされている。つまりペンギン如きに後れをとるものでは無い。
「皆さんまだ余裕があると思うので『行きます!』」
戦陣術 激励
更に士気を高めイワトビペンギンに対峙。仲間達は高まり続ける士気にテンションMAXだ。
壊剣術 天荒
でかいだけの的であるイワトビペンギンに飛び掛り、斬りつける。
先ほどまで何だかんだ羽毛に阻まれていた打撃が、やっと芯まで届く『ごん!』っという感触に変わった。
きっとその音は自分よりペンギンの方が強く大きく感じたのだろう、ちょっと怯んだ所に、畳み掛けるように連撃を加えていく。
圧倒的に自分より大きなペンギンが仰け反るよう様に、逃走しようとするのを【重装兵】隊と【歩兵】隊が止めにかかり、前後を挟まれるイワトビペンギン。
どう考えても正面の自分一人の方が組し易いのに、どうにか逃げ道を探しているように見える。
しかし、逃がす訳にはいかない。恨みは無いが、ここで沈んでもらおう。
自分の殺気に反応したかのように、グッと足に力を込めたペンギンに飛びつき、
武技 鉄擁
盾も剣も放り投げて反射で飛びついたら、空高く飛び、そのまま氷の張った湖に……。