14.賑やか【巡回】スタート
「それでソタロー君の実力は如何程のモノなのかな?ん?やっぱり適正に合った狩場で戦うのが一番成長にいいですからね。そういう所大事にしないと!」
「え?知り合いと二人で灰色の狼10匹が限度でした」
「へー!【熟練兵】で灰狼10匹!ん~これは将来有望!山の方に抜けてちょっと強めの魔物でもやるか!それとも渓谷の方に降りていって川沿いの見通しのいい場所で……」
「おい!ちょっと待てルーク!一応小隊編成して行くからよ。俺が指揮、ルークが弓、ソタローが盾だろ。したらどうすっか……。長物使える【歩兵】にしておくか!ソタローが前線で踏ん張る【訓練】になるだろ」
「いいんじゃないですか?自分がいつでも弓で援護できるし!それで何狩ります?」
「俺はちょっと長物使える奴呼んでくるからちょっと考えとけや。ソタローは当面装備で困るだろうからその辺考慮してやれよ」
「確かにそうですね!【重装兵】はとにかく盾に鎧にとお金がかかるから、せめて素材だけでも自分で手に入れないと大変ですね!さすが先輩!気が効くな~。じゃあ甲殻系の魔物を倒して鎧のベースになる素材を手に入れましょう!そう言えば、ソタロー君は支給品以外の装備は無いの?」
「え?剣と剣鞘と剣帯は注文してますけど、それだけですね」
「じゃあ、鎧下になる革服も必要だし、甲殻も必要だし、大変だ!あっでも灰狼の皮は素材として使ってもいいと思いますよ!そうなるとやっぱり甲殻か~。渓谷の雪蠍の甲殻とかかな……小隊ボスだけど自分と先輩がいればいけなくも無いか?山中だと狼はまあいいとして大角とか厄介なのがいるしな~上手く鎧猪と当たれば……」
「馬鹿野郎!鎧猪なんかと【熟練兵】を戦わせる奴が何処にいるんだっつうの。まあ雪蠍はいいんじゃないか?〔解毒液〕だけはちゃんと用意しとかねぇとアレだが」
「じゃあ、雪蠍にしましょう!それでそちらのお二人は?どちらも見ない顔ですね!【熟練兵】ですか?」
「はい!スルージャと言います!よろしくお願いします!」
「自分はチャーニンです。よろしくお願いします!」
え?なんか二人ともしっかりしてる。スルージャは軽装なので【偵察兵】かな?チャーニンはガンモが使いそうな槍を持った【歩兵】って感じ?
そして5人で小隊を編成して【巡回】に向かう。なんか隊列って言うのを説明されたが、
取り敢えず自分が敵魔物前面に立って、挟まれた場合後ろからの攻撃に指揮官である先輩が対応。遠距離攻撃持ちのルークが真ん中、両サイドを先ほどの二人が固める。そんな感じ。
北砦から出て、黙々と丘を北に下る道をすすんでいると、途中雪百足と雪鳥蜥蜴が数匹出たものの、安定狩り。被害はゼロなので安心。
「それで!【熟練兵】の皆は何か質問無いんですか?一応隊を率いる事を許された先輩と自分がいるんですからこのチャンスに何なりと聞いていいんですよ!」
「あの他国の事が分からないので【教国】について聞いてもいいですか?」
「なるほど!そういうのもいいですね!【教国】は都1個で成り立ってる特殊な国です。この世界は神によって作られましたが、邪神の手によって脅かされてます!それは分かりますね!」
「えっと……はい。その邪神と戦うために自分達ニューターが呼ばれたと言うのは理解してます」
「そう!そして我々ヒュムのみならず多くの種族が生まれたのも邪神勢力と戦うためと言われています!そして邪神と戦うことを目的とした集団!それが【教国】の成り立ちです!世界中に【教会】が存在し【教国】の神官達が駐在しているので、最早国という枠を越えた集団な訳です」
「そうですか、それだと混血が進んで【教国】風の顔立ちって言うのがちょっと不思議な感じがしますね」
「ん~自分ではあまり意識した事無いから分からないですけど、兄弟も母も皆似た顔ですね。父は確かに【帝国】風かもしれません」
「顔が皆似るって、相当【教国】の遺伝子が強いような……」
「イデンシ?」
「ああ、いえ。それより顔以外にも【教国】の方の特徴ってあるんですか?」
「ん~どうでしょう。父は割りと冷静ですが、母や兄弟はちょっとよく喋りますし、暑苦しいですね」
「え?顔は爽やかなのに暑苦しいんですか?」
「ええ!兄弟は士官学校卒なのに『部下の気持ちも分からずに死地に送り込む事など出来ぬ!』って言って一兵卒からはじめるようなヒトなので……、流石に出世は早いですけど」
「ルークさんは違うんですか?」
「ルークでいいですよ。自分は父の勧めで【狩人】だった時期があるので、また違いますね」
「何でワザワザ【狩人】に?」
「戦地で一人残されてもそこらで獣狩りながら一人で帰ってこれるようにって……『家に帰るまでが戦』って言うのが家訓なんです」
「どんな家訓ですか……、でも戦うことが家訓なんてルークは武家の生まれなんですね」
「ええ、まあ、そんな所ですかね~……。ああっと!川が見えてきましたよ!そろそろ警戒してもいいんじゃないですか?」
「へ~こちら側にも川があるって、なんか【帝国】って大河と川に挟まれた地域なんですね」
「そうですね!こんなに寒いのに凍りつかない水源があるから木々がいっぱい育つんですよ。ただ食物を育てるのが大変な気候でもあるので、その辺りのバランスが難しいみたいですね」
「オラ!お喋りはそれくらいにして、そろそろ蠍狩るぞ!」
先輩隊長の号令で一気に気を引き締められる小隊。5人での連携戦は流石に初めてなのでちょっと緊張してきた。