137.巨大湖のボス討伐作戦会議
「各々情報収集して分ったと思うけど、今回のボスはちょっと厄介です。提案を募ります」
各部隊の部隊長を集め、作戦会議を行う。
正直今まで、行き当たりばったりで戦ってきてしまったが、これからはもう少し作戦を練って、せめて方針だけでも決めてから進まないと苦しいだろう。
もし自分が本当に1000人率いる事になったなら、いくつもの事柄を同時に捌かなくてはならない。
それは予め作戦を決め、それを伝えておき、理解した上で戦ってもらうから出来る事であって、思いつきでほいほいと方針転換していたら、誰も付いてこれないし碌な事は無い。多分。
そしてチャーニンから順に意見が出始める。
「作戦って程のモノじゃないが、聞いたところ鳥だが飛べないようだし、戦う場所も湖に限定。鳥の魔物の割りには戦いやすそうだなって、思ったぜ。その分強いかもしれないけど、変な癖がないだけマシかなって」
こういう時、率先して普通に感想を言ってくれるチャーニンは助かる。
確かに周辺のヒトの話を聞くと危険な相手に思えたが、そういう意味では戦いやすい?ただ湖限定って言っても、巨大湖と言われるだけあって、本当に広い。もし全域逃げ回られたらお手上げだ。
「話を聞く限りかなり好戦的みたいだし、単体の中隊級ボスだけあって巨体の持ち主みたいだから、正面から受け止める事は出来ないかもしれないね。滑る事で機動力もあるみたいだし、どうやって動きを止めるかが問題じゃない?」
確かにそれは問題だ。仮に攻撃を避けられたとして、追いかけてちくちく弓で攻撃を当てるだけじゃいつ倒せるんだか分らない。
どこかで動きを止めて、戦う場所を作るのは大事だ。スルージャの意見が作戦の根幹を作る基盤になるかな?
「自分はやっぱり湖に潜られるのが厄介だと思うんですよね。この極寒の【帝国】で水に潜るヒトいますか?となると釣り上げる必要が出てくる訳ですよ。もしくは潜らせない工夫か。いずれにしても厚い氷の下から攻撃されて水に落ちるだけで、大変な事になりますから、その辺を考えておかないと」
そうだった!湖に潜るんだ!それが一番厄介なポイントだった。氷上を滑るだけなら隊を固めてぶつかってみる事も可能だが、水の中の敵をどうするのか、釣り上げるか……【海国】のあの人に協力を仰ぐしかないか?クラークはルーク隊で鍛えられただけあって、一番大事なところが見えてるな。
「ここの魔物が泳げるほどの水深の深い場所はある程度限定されているようです。勿論氷上に出れば幾らでも追いかけてくるでしょうが、水中から攻撃してくる場所はある程度限定されますので、まずはそこにマーキングなりして、入らない様に気をつければいいんじゃ無いでしょうか?」
あれ?自分がどうしようか迷ってる内に、ムジークが答えだしてるじゃん。そうか大きい魔物だから、湖なんかじゃ泳げる範囲限定されるのか……そりゃ気が付かなかった。
「じゃあ、意見を纏めてしまうと水中からの攻撃は範囲が限定されるので、そこには近づかない。氷上で動きを止められる方法を考える。水中に逃げられた時つり出す方法を考える。コレが今回の作戦の根幹になると思うのですが、それであれば最初から決戦地を選定してそこに誘い込めばいいと思います」
うん、色々相談するつもりだったのに、全部決まってた。ミールは頭いいんだもんね。
そっか、決戦地か。
つまり滑れない、潜れない場所まで誘導するのね。いいと思う。
「じゃあ、決戦地になる場所を探そうか」
「それなら湖中央がいいんじゃないか?」
「自分もそう思いました。なんか中央はまるで湖上の島のようになっているそうですよ。雪で見えないけど、下は土の地面になってるって……」
「凍ってなければ滑れないでしょうし、そこを決戦地にして全員でかかりますか。問題は逃げられる可能性ですけど、それは相手の出方を見てからでいいんじゃないですか?流石に単体の中隊級ボスサイズの魔物を拘束する方法なんて思いつかないですし」
「あとは誘い込む方法になりますが、湖上をある程度進めば魔物の方から攻撃してくる程好戦的な相手のようですから、ひたすら防御しつつ逃げるが基本になると思います」
「中央の島には目立つ木が生えてるそうなので、目印に事欠きませんし、湖に入ったら逃げの一手。決戦地に誘い込んだら、全力戦闘。それが今の最善手ですね」
うん、作戦全部決まってたね。
「じゃあ、戦闘前にご飯食べようか。この湖って何か小型の魚がいっぱい取れるんでしょ?」
「はい!揚げ物にして食べると美味しいって話です。ただ湖のもう少し中央寄りの方が沢山取れるようなので、魔物退治が終わってから手に入れた方がいいと思います」
流石、パン職人になりたいムジーク。食べ物情報が早い。
でも、今すぐ食べれないとなると、一旦は普通の食事になるか。
「じゃあ、普通に汁物作るから、それとパンでお腹満たして、戦ってお腹減ったら魚にしよう」
と言う事で、自分は料理長から貰える青い瓶を使って、さっと食べられる野菜スープを作る。
100人分まとめて作るとなると、やっぱり汁物が一番楽。
トマトと香草を効かせて、豆も入れればミネストローネ風スープ完成!
氷麦農家出身のパン職人志望がいるおかげで、パンもおいしいし。体力に少しだけバフも付いたようだ。
ここから湖の中央まで走る訳だし、体力勝負だ。頑張りますか。