134.上級士官への道
「何だかんだ上手くやってくれたみたいだな」
「いや自分は痕跡を追うのがいっぱいいっぱいで、追い詰めたって感じでは無かったですよ」
「まあそれでも結果としてはどうやら協力者と出会えたららしいぞ」
「そうでしたか、それは良かったですけど、やっぱり賞金稼ぎをことごとく跳ね返して逃げ切った隊長がタダ者じゃ無いんだと思います」
「ふむ、そうか……話は変わるが、当分何かあってもあいつを頼れないのは分るな?」
「それはそうですね。瘴気が満ちた場所なんかで集団戦となると大変そうですね」
「そうると、ここからはお前の出番……いや寄る辺はお前だけだソタロー!お前が英雄だ!」
「え?何言ってるんです?」
「つまり【上級士官】を目指して、試練を受けてもらおうと思う。既に白竜様の楔は二本攻略し【帝国】内の中隊級魔物も倒してはいる。資格としては十分だと思うが、表向き分りやすい形で昇進してもらいたい」
「はぁ……。ボスを倒せばいいですか?」
「流石話がわかるな。実際国務尚書も実の面では既に昇進したと同様に扱っていいと言っていたしな。一応今までは瘴気地帯なんかにおける先方はあいつだった訳だ。そしてNo.2がソタローというのが上の考え方だった」
「No.2でいきなり自分って言うのもどうかと思いますが、集団を率いて物事を解決するならそういう事になりますかね?」
「だがいつまでもNo.2でいてもらっては困るという事だ。あいつは【帝国】に所属はしているが、世界中と関わりを持っちまった。そうさせたのは俺達とは言え、この国専属の戦力も欲しいと言うのが実情って事になる」
「なるほど、つまり隊長と同格程度にはならないといけない訳ですか」
「そういう事だ。大隊長の称号となるとそれこそ世界を巡って、世界中の中隊級魔物を倒して回らねばならないが……」
「同じ事をすれば自分も隊長同様世界共有戦力になってしまう?」
「うむ、勿論戦力として他国に派遣すれば恩を売る事は出来るが、少々面白くない」
「そうなると、自分がやるべき事は?」
「一つ目【帝国】中の中隊級ボスを倒してもらう。二つ目【帝国】国内の【上級士官】及び【将官】を倒してもらう」
「あの……【上級士官】になるのに【将官】を倒すのはなんでですか?」
「結局の所、筋力でしかモノの分らん奴らが【帝国】の上層部だからだ。生まれついた身分関係なく実力でモノを分らせるには、殴るしかない」
「そんな……」
「と言う訳で、今お前が【闘都】に出入りして人気の闘技者であることは都合がいい」
「待ってください!【帝国】上層部って闘技に参加するんですか?」
「ああ、そりゃ一対一の実力試しにはちょうどいいからな。その所為で【帝国】は上に行くほど化け物とか変な噂を立てられてるんだ」
「そうなんですか……。つまり今後【闘技場】に行けば【帝国】上層部とマッチングされ……」
「任務を受ければ中隊級魔物との戦いが待っている。どうだ?武者震いで体温が上がるのを止められないだろう」
「いや、寧ろ体温が下がって雪国で凍死しそうですよ」
「ふん!面白い冗談を言う様になったもんだ。お前は既に軍狼、怪鳥、異形と倒している。あいつは世界で、【帝国】【鉱国】【馬国】【砂国】【教国】【海国】【王国】【森国】で中隊級魔物を狩った」
「つまり残り5体は狩るってことですかね?」
「ああ正解だ。ただ率いるのは【帝国】兵ばかりだし余裕はあるんじゃないか?それについては魔将討伐の功もあるので、十分認められるだろうって事だ」
「そうですか、つまり隊長は各国の慣れない中隊を率いてボスを倒して回ったと……やっぱり変人だ」
「そんな事言ってられないぜ。今のお前にどれだけの期待が寄せられてると思う?何だかんだ日に日に邪神勢力が力をつけているのが感じられる今、大事件がいつ起きるとも分らん。力をつけられるだけつけておいても損は無いだろうよ」
兵長に散々脅され、頭を抱えつつ今日は取り合えず【訓練】を受けに行く事に……。
こんな日は師匠兄弟に愚痴を言いつつ、鍛えなおしてもらった方が気分も晴れる筈だ。
「ソタロー!聞いたよ!重大な任務を任される事になったね……成長した……」
セサル師匠がいきなり全開で感動してて、ちょっと引いてしまう。
「本当だよソタロー!僕達ですら、敵するには手に余る【帝国】上層部と雌雄を決するなんて……。なんていう勇気だ!こうなったら僕達の持つ全ての技を授けようじゃないか!」
「本当にありがたいんですけど、それだけで果たして自分が勝てるかどうか……」
「そうだな。身体能力の点ではやはりニューターはとても伸びやすい。それこそ僕達をはるかに越える筋力を既に備えているのがその証拠。問題はそれを如何に使いこなすかだ!と言う訳で早速この術を授ける!」
壊剣術 天崩
剣に精神力を流し込むと、巨大な剣のエフェクトが発生し、範囲攻撃になるのだが……。
「兄さんのこの術は、見ての通り範囲を薙ぎ払うのに向いているが、攻撃力が特別上がる訳じゃ無いから気をつけるように」
「感触的にそうなのかなって思いましたけど、これでどうしたらいいんですか?」
「今後一対多数の戦闘もあるだろう。そういう時に使うといい。特にソタローは敵の数や味方の士気で筋力が上昇するのだから、使い勝手もいいはずだ」
「ただ、ソタローの追う隊長には気をつけるように!生粋のブロック使い、氷の剣鬼教官殿の直弟子ならば、受け止める可能性が高い」
「え?こんなでかい剣を受け止めるんですか?」
「ああ、普通は相手の攻撃を真芯で受け止めること自体非常に難しい筈なのだが、それを可能にするのが剣鬼殿なので、弟子である隊長にも気をつけねば駄目だぞ!」
何か術を教えて貰って、脅された。