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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
134/363

133.追跡不能

 「自分が東部輜重隊の指揮をとるんですか?」


 「ああ、他に出来る奴がいないからな。そりゃ【古都】の守備隊や何かはいるが、輸送隊となると毛色もちょっと違ってくるし、育てた奴が育てた奴だからくせ者揃いだろ?」


 「くせ者なのは一番上だけで、メンバーは優秀な方ばかりだと思いますけど」


 「優秀だから早々指示できるような上官が見つからねぇんだよ。一番上は変人だが戦闘能力も指揮能力もギリギリまで部下を追い込む手腕も相応だったからな」


 「それでも今回ばかりは自分向きとは思えません。何しろあの隊長を捕まえるのが仕事ですよね?この重量で追いつくと思いますか?失敗すれば手心を加えたと言われかねないですし、適任とは思えません」


 「まあな。そりゃ俺も分ってるが、既にあらゆる国のあるゆる隊が出張って捜索しても足取り一つ掴めない。そんな中、情報提供者が現れた」


 「そんな……誰にも足取りが掴めないのに情報提供なんてありえないんじゃ?」


 「まあ世の中化け物はあいつに限った事じゃ無いって話だ。かなりの有力筋なんでこちらとしても無視出来ん。そこでどこぞの知らん隊をあいつにぶつけて全滅でもしてみろ。大損害だろ?」


 「東部輜重隊ならうかつに攻撃して来ないだろうって事ですか?」


 「ああ、そしてもう一つ秘密任務がある。あいつを一定方向に追い込みたいんだ。捕まえなくていいって言うか絶対捕まえられないのは分ってる」


 「なるほど最初からそう言ってくれればいいのに、それで何で追い込むかは聞いてもいいんですか?」


 「ああ、ここだけの話しにしろよ。今回の指名手配の件おかしいと思っているのは【帝国】(うち)だけじゃない。それで秘密裏にあいつをバックアップし、解決に導こうって言う協力者がいるんだが……」


 「そうでしたか。つまり協力者の方と隊長は何か解決の糸口を探しに【帝国】に来たんですね?それで追い込むとどうなるんです?」


 「いや、ちょっと話が先に行き過ぎたぞ。隊長の逃げ足が速すぎてまだ協力者と隊長が会えてないんだ。だから荒療治にはなるが、指名手配である隊長を追う賞金稼ぎにも情報を流して、隊長を極限まで疲弊させてからあわせようっていう作戦だ」


 「どんな無茶な作戦ですか!」


 「いや、だからお前も一緒に行って、やばそうなら賞金稼ぎの足止めをしてくれ」


 明らかに無茶な命令で【帝国】の森へ……。


 本当に森としか言いようの無い、都の中間地点。しかも【帝国】北部の起伏激しい地域と来れば、逃げる隊長圧倒的有利。


 普通に歩くだけでも兵達が疲れかねない地域なのだが、流石は東部輸送隊という体力と行軍速度。


 情報のあった地点周辺で広く展開しつつ、隊長を捜索。


 森だけあって魔物も出るし、単独行動をさせられない以上、小隊行動で森を歩かせるが中々見つからない。


 情報が本当に正しいのか不安になるが、まあ空振りした時はした時で兵長が責任を取ってくれるみたいなので、自分は真剣に捜索を続けるのみ。


 ただ【兵士】達の疲労も気になる所、そこは自分の責任なので寒くても歩いて食べられる食事を考えてきた。


 ポーさんに仕込みをしてもらったピロシキだ!


 食事は作った状態だと鞄の中とは言え保存があまり利かない。


 そんな中完成してない素材状態だと割りと保存が利く、更に保存用ケースや壷なんかに仕舞っておくと尚保存期間が延びる。


 そしてポーさんに仕込んでもらったピロシキは冷やして箱詰めしておいたので、かなり保存期間に余裕がある。


 何しろ素材を冷やしたければ、どこにでも雪と氷があるので、意外と便利。


 そして、皆が捜索しながら温かいものを食べれるように、拠点で油を温めてピロシキを仕上ていく。


 カリカリに揚がったピロシキを小隊ごとに配り、皆食べながら捜索を続けるが、匂いとかで隊長釣られて来ないかな~。


 そんな事を思っていると、配っておいた呼子の笛が鳴る。


 「全員全速で現地に向かって下さい!」


 揚げ終わったピロシキを仕舞いつつ自分も全速で現地に向かうと、息も絶え絶えのルーク。


 「隊長はどこに行きましたか?」


 「無理です。全然追いつけない……速過ぎて一瞬で見失いました」


 案の定隊長を見つけて追いかけるなんて到底無理な話だった。


 「おい!こっちに痕跡が残ってるぞ!」


 流石ルースィさん!【偵察兵】を束ねるヒトだけあって、こんな雪の中一瞬で痕跡を見つける凄腕。


 普通なら降り積もる雪の所為で足跡すら見つからない筈なのに……。


 「それで、隊長の状況は?」


 「ん~見たところ、5人に囲まれて一方的に倒した挙句更に奥に向かったらしい。もしこの方向に進めば崖だし……」


 「追い詰める事も可能ですか?」


 「いや、崖から飛び降りて、俺達では追いかけるのが不能だろう」


 「隊長は崖から落ちて大丈夫なんですか?」


 「木から木に飛び移る相手だぞ?崖下の木に飛びついてそのまま逃走だ」


 ふむ、やはり常識の通用しない相手。なんとか追いついて協力者との合流を促さないと!


 しかしその後も、ルースィさんが隊長の戦闘跡を見つけるも隊長が一人で圧倒している様子。


 そのまま逃げられ、辿り着いた場所は崖。


 東部輜重隊全員で崖を見下ろし、諦め引き上げる事になった。


 意気消沈する隊にポーさんに依頼して美味しいものを作ってもらうのがやっと。


 自分が作るにはちょっと疲れすぎた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 食事を用意しながら、隊長にも食べさせたいとかみんなで言いながら作ってたら横にいたりして(笑)
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