129.上級【闘士】
「こんにちは!今日も登録お願いしていいですか?」
「構わないっすけど、実は上級【闘士】からお誘いがきてるっす。どうっすか?一勝負いってみるっすか?」
「上級ともなると、やっぱり一筋縄じゃいかないんでしょうね……。でもやらなきゃ次へは進めそうも無いでしょうし、やります!」
「そうっすか。一つの試練になると思うけど、頑張るっす」
最近すっかり慣れた筈だったが、また一段強い相手と戦うとなれば話は別だ。
高い緊張感を保っていつもの趣のある【闘技場】に移動。
この【闘技場】にもずっとお世話になっていて、既に常連さん達にはここがホームだと思われてるらしい。
【闘技場】対抗戦みたいなイベントもあるらしいので、その時はここの代表として頑張ってくれと言われてる。
いつも通りの控え室、そして呼び出し。
先にフィールドの中央に立って待っていると現れたのは大盾と鈍器を持った巨漢。
フルプレートでこそ無いが、重量は互角?何となくそう思わせるだけの肉感、しかし決して鈍重な感じは受けない事から、相当戦える相手だと悟らされる。
開始の合図と同時に、お互い盾を前に距離を詰め、お互い盾でぶつかり合う。
武技 盾衝
武技を使ってもビクともしない相手、全力を込めて押し込む。
自分のスタイルは防御力と重量を生かした押し込み。力づくで相手の領域を占領する事だ。
小手先の技やスピードで負けてしまうんだから、力で負けるわけにはいかない。
奥歯をかみ締め、幾ら押しても敵は動かず、だからといって一瞬でも力を抜けばやり返される事が容易に想像で出来る盤面。
場面は全く動かないのに、不思議と緊張感の絶える事のない客席はこの展開を予想していたのだろうか?
ふとした瞬間、手応えを失いつんのめった所を横から跳ね飛ばされてしまう。
転びながらも、すぐに横回転して立ち上がり構えなおす。
そこに迫って来た鈍器。風の唸る音が聞こえる危険な一振りに、思わず盾で受け、更に跳ね飛ばされた。
しかし気合で負けるわけにはいかない。
壊剣術 天荒
術を発動し、全身に精神力を巡らせて重剣を振り回す。袈裟切りからの横薙ぎ。
巨漢に似合わぬ身のこなしで軽々かわされたが、知った事じゃない。どこでもいいから当れ!と突きこむ。
それを綺麗に盾で受け流され、頭に向かってくる鈍器。
鋼鎧術 耐守鎧
寧ろ頭で受け止めてやったが、クラッときた。
そこに再び、盾で突撃をくらい、今度こそは地面に転げてしまった。
追撃はくらうまいと上半身を起こした所に、走り寄ってきた敵。
間合いに入った瞬間、腹に一撃<蹴り>をくらわす。
相手の一瞬の怯みの間に立ち上がり、思い切り剣を振り込めば、盾で受け止められてしまう。
逆に相手の鈍器の振込みの初動を捉えて、こちらも妨害の突き飛ばし。超接近戦で頭同士がぶつかったので、
武技 撃突
逆に敵は鈍器を握ったままの拳でこちらの頭を殴りつけてきたので、またもや頭がクラッと来る。
更に鈍器を振りかぶっているのを認識しながら、揺れる視界に偶々写った膝を蹴り潰す。
体勢を崩して前のめりになった所で、顎を膝で打ち抜く。
右手に持った剣を体の内から捻りこむように横に振りぬき、敵のこめかみを冑の上から打ち抜いた。
敵がその場で盾の縁を地面に叩きつけると、
足元が大きく揺れて立っているのがやっとの状態に……行動妨害の術なのだろう。警戒を解かずに踏ん張っていると、
揺れている間に立て直した敵が鈍器で腹を突いてきたので、
盾をぶつけて逸らし、お返しに重剣で頭頂部を狙って振り下ろす。
それは盾で受けられてしまったが、逆に言えば胴体はがら空き。腹に膝蹴りをもう一発くれてやる。
一歩下がってゆっくり息を吸い、そして吐く敵。
妙に空気が弛緩したと思った直後には張り詰める。
相変わらず盾を前にし巨漢を隠すような構えだが、無駄な力みが一気に消失。
嫌な予感がしたのは一瞬の事、盾での突撃に盾で受けたつもりが、あっという間に軸をずらされ、鈍器で足元を打たれ体勢を崩され、いつの間にか空を見ていた。
そこから流れるように、踏みつけ。
呻いた所鈍器が飛んできたが、盾で受け止める。
盾を強引に引き剥がされ、再びの踏み付け。呻きながらも足を狙って重剣で攻撃。
綺麗に盾で受けられ、そのまま盾の縁で攻撃をくらってしまう。
くの字に体が折れた所にエフェクトの乗った超重の鈍器が振り下ろされ視界が一瞬真っ暗に……。
すぐに空が見え……何か体が軽い?
<総金属>装備をしているのを忘れたように跳ね起きてしまった。
そこに再び距離を詰めてくる敵だが、いつの間に距離取ったんだか?
まあいいか、妙に遅いし……。剣を地面に突き立て
壊剣術 天沼
鋼鎧術 空流鎧
鈍器が向かってくるのを腕で受けるようにかわし、そのまま組み付く。
あとはひたすらその位置から出来る攻撃をひたすら繰り返す。
膝蹴り、頭突き、締め上げ。それだけ。もう会場の音も耳に入らない。
敵の両腕ごと締め上げ、ひたすらできる暴力を振るう。
気がついた時には光の粒子に変わっていた巨漢の敵。
「ああ……強かった……」
控え室に引き上げた時には、何かもう足も腰もガクガクで、何がなんだか分らない。
鼠のヒトに連れられて、そのままお店で休憩させて貰う。