127.変人極まってる
さくっと金のレギオンを倒し、皆でご飯タイム。
船を止めた砂利場から少し離れた場所が岩ばかりの磯になっていて、貝がいっぱい取れたのでそれでご飯って事になった。
中には明らかにフジツボがあるんだけど、あれって珍味みたいだから、確か茹でると出汁が出るんだっけ?
まあ、最近は水質の問題とかで、食べると危ない貝も多いみたいだから、そういうの気にしなくていいゲームってのは、やっぱり楽しいな。
やっぱり貝と言えばパスタがいいかな。少な目のお湯で濃縮貝出汁パスタってどうだろう?
実際に濃縮してる訳じゃないけど、貝の出汁って凄い味出るよね。
そんなこんな相変わらず嵐の岬の面子は楽しげに自由に過ごす人ばかりだけど、何となく居心地がいいのも分る。
「戦闘態勢!なんかやばいの来たヨ!」
食後の休憩時間中、急に叫び出す道具鑑定の子。
海の向こうに大波が立っているのを見た瞬間に思わず息を飲む。
そして、金の大きな塊が島にぶつかってきた。大波に飲まれ皆頭からずぶ濡れ、そんな中、
「悪い、何かなって思ったら、亀だった」
よく見れば確かに亀だが、小さな島がぶつかってきたようにしか見えなかった。未だに止まらない動悸。
「あれ?いつの間に隊長帰ってきてたんですか?」
「あの亀に追われて泳いで逃げてた」
「いやどういう状況ですか!」
「どうする?皆逃げるならもう一回連れまわして時間稼ぐけど、レギオンだし倒しちゃう?」
「ったく……隊長がレギオン連れてきたから全員で倒すぞ!こっちは特攻武器持ってんだ、速攻片付ける!」
流石クランの代表バルトさんはあと言う間に頭を戦闘モードに切り替えて、既に亀に殴りかかっている。
「悪いね『行くぞ!』」
一気に高まる士気と防御力。遠慮無しに一斉に殴りかかる嵐の岬の面子。最早作戦も何もない。
でっかい亀をいじめる子供状態。
亀は手足を引っ込めて固まり、何も出来ないまま時間が経ち、急にそれまで溜めていたダメージを放出するように大爆発。
激しい衝撃に軽装の多い嵐の岬クランメンバーの大半は吹き飛ばされ近くの木にぶつかるか、森の中に消える。
ゆっくり顔を覗かせる亀が反転し、逃走をはかるが自分では、追いようがない。
しかし、隊長がそんな事許す訳なかった。
爆発の寸前、海に潜り吹き飛ばされるのを回避し、逃げようとする亀を追いかけ甲羅の上によじ登り、何かステッキのような細い棒で殴りまくってる。
甲羅じゃたいしたダメージになってないと踏んだのか、頭の方まで行き一人で亀の頭を殴りまくっているが、アレで倒せるのだろうか?
続々と戻ってきて回復した者から小船に乗って亀を追いかけ始める嵐の岬の面々も亀によじ登り殴り始め、小さい島に上陸して島を殴ってる人達みたい。
自分で何がなんだかよく分らないけど、そうとしか見えないのだから仕方ない。
なんだかんだかなり優勢の状態。多分本当ならダメージを中々与えられない強敵なんじゃないかと思うが、何しろ特攻武器がいけない。
本来の魔物の力を完全に削いでて、適当にやってるだけで圧倒できてしまう。
そんな事を考えている内に、海の向こうからまた別の波。
亀と比べれば大分小さいが、幾つもあるのは何でだ?まさか海で集団VS集団?
「何か近づいてます!気をつけて!」
一応船で亀を追った人達に警戒を呼びかけると、何故か戦闘が止まる。
海から顔を出す人々と嵐の岬でなにやら話し合ってるみたいだ。
その後、嵐の岬は続々と引き上げてきて、海を泳いでるヒト達が亀に止めを刺してしまった。
そして、数人が残り他の人達は亀を引っ張って海の中に消えていく。完全に蚊帳の外の自分には何がなんだかよく分らない。
数名残った海の中から上がって来たヒト達は、何か凄い派手な色をしたヒト?
「ああ、ソタロー。こちら魚人さん普段は海の底で暮らしてるんだけど、あの亀の甲羅が海で休む中継所にするのにちょうどいいんだってさ。だから譲った」
と、隊長が説明してくれるが何がなんだか全くよく分らない。
「まあ、金もいいが折角レギオンやったら、特殊なアイテム類が欲しいだろ?海底素材を色々くれるらしいんで、それと交換ってことで話がついたんだ」
アンデルセンさんが補足してくれて少し理解できた。
しかし意味が分らないのは、そんな初めて会った様な種族とすぐにコミュニケーションを取って交渉出来ちゃう事なんだけど……。
「亀を狩ってる中に少年がいたから、頼んでみて正解だった。アレを手に入れられるかどうかで、漁の安全確保と範囲がだいぶ変わるからな」
代表して喋ってくれるのは唯一色の地味な鯨風のヒト。少年って誰だ?
「まぁ、変な島があると思って近づいたら、襲われただけだし別に自分は何でもいいよ」
隊長って少年って呼ばれてるんだ?何でだろう……何か聞いちゃいけない気がする。
しかし、何より隊長の顔の広さだ【輸送】して世界を回ってるとは聞いていたけど海底も【輸送】範疇だったのか。
やっぱりスケールが自分とはちょっと違った。
その後海底素材の分配で、大して活躍できなかった自分も肩当の素材に使える二枚貝をもらったり、意外と有意義なレギオン討伐。
その後も自分はマイペースに【訓練】したり【闘技場】に行ったり、任務を受けたり。
隊長は【輸送】であちこちフラフラ出歩いて、
気がついたら指名手配犯になっていた。