125.銀の魔物
お金を手に入れるだけの魔物にすっかり飽きてしまったのだが、兵長は金稼いで来いと……。
仕方無しに、大河沿いの蟹ゾーンへと移動。
何しろここなら蟹がいっぱいいるし、沢山狩るには申し分ない。
クラーヴンさんの金属バットはちょっと強力すぎて、普通の蟹もやっぱり一撃。
なんだかな~。2周年イベントだし、プレイヤー同士で鎬を削るようなバトルなのかなって思ってたんだけど、もしくは戦闘→生産→戦闘→生産→戦闘だったから、次は生産系イベントかな~とかさ。
料理、鍛冶と来たし、次は木工か道具類か。ちょっと地味だから、楽しいサバイバルみたいに、今度は特殊素材がザクザク出てくるフィールドで、生活イベントとか?
そして、ふとした瞬間なんか一匹だけ違う色の蟹を発見。
何かシルバーの蟹だ。色以外は何にも違わないのだが、凄い気になる。
そっと近寄り金属バットで殴ってみると、一撃では倒せない!
驚いてすぐに横なぎにもう一振り、蟹の爪攻撃を盾で弾き、もう一撃ぶん殴るとやっと倒せた。
急に耐久力3倍の敵が現れて驚いたが、どうやらカラーリングが銀の敵はちょっと手強くなっているらしい。
鞄の中のお金を確認すると、3倍どころか10倍のお金が入ってて、一瞬息を呑む。
うん、理解したイベント用魔物は色違いを倒すと10倍ボーナスだけどちょっと手強い。
納得した所で、現れるのは銅のボス蟹。
流石にボスサイズだけあって一撃とはいかないが、攻撃パターンは慣れっこだし、難なく倒すとこれも金額は通常銅蟹の10倍。
つまり色違いかボスサイズを倒すのが、効率よくお金を稼ぐ方法になるのかね。
って事は銀色のボスだったらどうなったちゃうんだこれ!
その後も蟹を倒しまくり、ボス蟹すら作業と化したが、残念ながら普通の銅蟹に混ざってもう一体狩る事ができただけ。
それでも、二体狩れたって事はそれなりに、悪くないって事。ただボスサイズで銀が出るかはまだ謎。
ふむ……飽きた。
蟹を汁物にして食べたいが、銅の蟹はお金しか手に入らない。どうしたものか……。
「あれ?ソタロー。何やってるの?」
「隊長!【輸送】行ってたんじゃないんですか?」
「行ってたよ。でもイベント始まって任務関連が一旦止まっちゃったから、どうした物かなってさ」
「ですよね。自分も飽きちゃったので蟹の汁物に挑戦したかったんですけど、お金しか手に入らなくて……」
「その金属バットってイベントのやつじゃないの?それ鞄に仕舞ってみな」
言われた通り金属バットを鞄に仕舞うと、いつもの大河沿いの光景。
つまり、イベント装備を使うと特攻プラス敵の色が変わって見えると言う事だった。
「なるほど……、通常通りの狩りをしたい人は装備を通常にすればいいだけだったんですね」
「そう。だって魔物の素材で道具作って戦ってる人とかいたら困っちゃうし、特攻武器か道具で銅化させるとお金が手に入るみたいだね」
「ちなみに銀の魔物って言うのは?」
「ああ、そんなのいるんだ?自分は全く興味ないから倒した事無いし、分んないな~。蟹食べる?」
どうやら隊長は金より食事みたいだが、全面的に賛同せざるを得ない意見だ。
二人で蟹を狩り漁り、ボスサイズの蟹を二匹倒して、隊長の<採集>で必要な蟹素材は手に入ったので、調理タイム。
「ソタローが汁物に挑戦するなら、自分は試しにパスタにしてみようかな。蟹ガラ焼いて出汁とってさ」
「それはまた凝った食べ方ですね~自分は味噌持ってないから、ブイヤベース風にしてみたいんですけど」
「貝とか魚、ワイン、ニンニク辺りは持ってるけど、トマトは好きじゃないから持ってないな~」
「適当に臭み取りに使えそうな野菜をいっぱい入れて煮込んでみますか。ハーブの配合で風味が変わるって、調べたら書いてあったんで」
「ああ、現実の方の情報?確かにそういうのに沿って作った方が、おいしく仕上がるし、ある程度適当でもそれなりの味に調整してくれるからねこのゲーム。本当にありがたい。スキル様々」
「ですね!使い込めば勝手に料理がおいしくなるんだから、スキルの恩恵って凄いですよ」
そんな事言いながら二人共手の動きが止まらない所に、行軍で鍛え上げられた料理の熟練が見て取れる。
戦闘はまだまだでも、こういうところで隊長と肩を並べる事の出来る事があるのは自分の成長を感じれて正直嬉しい。
「おっ!いい匂いがすると思ったらやっぱり隊長!ソタローまで一緒とは幸先いいって言うか話が早いな!」
匂いで釣れたアンデルセンさん。この人は本当に神出鬼没って言うかなんて言うか……。
当たり前のように食べる準備とばかりに座るのに丁度良い石をそこらから集めてくるのは手際がいいと言うかなんと言うか。
まあ量はそれなりに作ったい別にいいんだけども。
三人でパスタとトマトなしブイヤベースを食べみるが、まあ十分ありな範疇。
「今日は洋風になったけど、結構いけるね~」
「ですね。これで少しレシピの幅が広がりましたよ。やっぱり行く先々の材料にあわせて色々な料理に挑戦したいですもんね」
「うん、うまいうまい。それで二人を探してた理由を話してもいいか?」
「別にいいよ。何か任務受けられなくて暇だし、暇つぶしに蟹食べに来ただけだから」
「自分もさっきまで蟹をお金に換えてましたけど、飽きちゃったので蟹料理に挑戦中でした」
「そうか~じゃあちょっと申し訳ない頼みになっちまうんだが、金のレギオンが見つかったんで、討伐手伝ってくれないか?」
「「金?」」