117.カモノハシ
『グァァァァァァ!』
水の中から出るなり叫ぶ魔物の目にはしっかりビエーラさんの矢が刺さってる。
「よく目の位置分かりましたね」
「勘なの。それに運が良ければ開幕の士気低下を防げるの」
出てくるなり怯んでいる魔物はまだ水の中、攻撃出来るのは弓隊だけなので、一先ず弓で一方的に攻撃を仕掛けていく。
サイズはレギオン級としては小さ目って事は、これから部下が出てくるのだろう。今の内にちゃんと観察しておかねば。
相手は確かに嘴の生えた獣でしかも二足歩行。
でも何となく知ってるわこの生き物。多分カモノハシをデフォルメした感じ。
何で二足歩行にデフォルメしたかは分からないが、ずんぐりむっくりなフォルムで湖の真ん中の岩場に座り込んでしまった。
そして、水掻きのついた足をばたつかせると一気に水柱が立ち、矢を吹き飛ばしてしまう。
さて、次はどうして行くかと思えば、
「おい、湖の中を見ろ」
チータデリーニさんから声が掛かり、確認すればうっすら黒く色ついた湖にびっしりと卵が産み付けられている。
正直な所、魚じゃないんだからと突っ込みを入れたい!でもこのカモノハシの部下はきっとこの卵から生まれるんだろうと言う事は間違いない。
「下手すると湖から大量に小さいのが出てくるかもしれないので、先に隊列を組みます。横隊!」
湖を突撃する訳にもいかないので、普通に防御しやすい隊形がいいだろう。
【重装兵】を前に出して、中は【弓兵】【衛生兵】、両翼に【歩兵】を配置。攻勢に出るときは両翼から攻め込む形になるだろうが、一旦は防御。
バタ足が終わり、水柱が消えた時にはカモノハシの姿も消えていた。
多分水の中に潜ったのだろうが、次はどうなるのか様子を見ていると、案の定水の中から小さいカモノハシが出てくるのだが、色が黄色いのはひよこイメージ?
カモノハシは鳥じゃないんだが……。やっぱりあの生き物はカモノハシじゃなくて、鴨のデフォルメ?
なんか、見た目の所為で混乱してきたが、いずれにせよ引っ掻かれたら病毒と混乱で困る事になる。
「さて『行きます!』弓の牽制で、戦況が変わります。極力水際で仕留めて下さい」
戦陣術 激励
とまあ、指示を出したが小さい魔物だからと言って耐久力が低いわけじゃない。慎重な対応が……。
大体普通の矢2発で倒れるくらい弱いので、虐殺状態だ。デバフ持ちだし、体力的にはあんまりなのかな。
再び湖の水が盛り上がると、相変わらずビエーラさんの一撃が吸い込まれていく。
『グァァァァァァァ!』
さっきとは反対の目に矢が突き刺さって怯んだカモノハシに、一斉弓攻撃。
それでも今度は逃げずに岸辺に寄り、死んで山積みになったヒヨコカモノハシに触れると、
小さいカモノハシ達が溶け、発生する黄色いあからさまに体に悪そうな靄。
一斉に病毒が蔓延。
「すぐに薬で治療を!」
言ってる傍から酷い悪寒で体が上手く動かない。何とか用意してきた物資の病毒対応液を取り出して飲むと、一瞬すっきりして、また悪寒。
こちらが苦しむのをあざ笑うかのように眺めているカモノハシが、また水の中に戻る。
靄の所為で治しても一瞬で病毒を再発する状況に困っていると、いつの間にか動けるようになった【衛生兵】が救護を開始。
どうやら継続治療可能な薬品もあったようなので、自分で回復。
まずは切り札のビエーラさんチータデリーニさんを回復に向かう。
その間にもヒヨコカモノハシが再び攻めてくるのを病毒に苦しみながらも何とか防いでくれる前衛。
回復した者からどんどん戦闘に加わるが、自分は治療で必死。
<治療士>付けてきてよかった。
それにしてもヒヨコカモノハシの数が多い。思わず、
「範囲射撃とかあればいいのに……」
ちょっとぼやいてしまった。
「残念ながら物理長距離高火力だから、面攻撃は苦手なの」
いつの間にかボヤキを聞かれビエーラさんに釘を刺される始末。
まずは、治療に専念しましょう!
ふとした瞬間、いきなり仲間に斬りかかられ、殆ど反射で篭手で防御すると、どうやら正気じゃない。
ガンガンやたら滅多ら殴ってくるので、混乱もあったのだと思い出し、蹴り飛ばすと正気に戻った。
すでに混乱が広がっていたので、ガンガン蹴り飛ばし正気に戻しながら、病毒にかかっているヒトを探して治療。
なんか静かだなと思って辺りを確認すると、チータデリーニさんが斧を振るって積み重なるヒヨコカモノハシを片っ端から湖に落としてる所だった。
確かにさっきの靄はヒヨコカモノハシを媒介に発生させてたが、相手の攻撃がゆるい内に処理しちゃおうなんて、流石すぎる。
いつの間にか手の空いてる【兵士】達をうまく使って作業中のチータデリーニさんに【弓兵】を既に掌握してるビエーラさん。
もう任せてしまってもいいのではなかろうか?
多分だけど、カモノハシが水から出てくる時に士気低下攻撃とか使うんだろうが、ビエーラさんは攻撃タイミングを掴んでるようだし、
今も岸に寄ってきたカモノハシが、積まれてるはずのヒヨコカモノハシがいなくて困ってるし、
何なら岸に寄って来たのをいい事に両手に斧を一本づつ持ったチータデリーニさんがラッシュしかけてるし……。
何かを諦めたようなカモノハシは湖の水を水掻きの上に掬い、投げつけてきた。
一見ただの水遊びだが、水玉一つ一つが鉄球の様に振ってくる。
【重装兵】ですら持ちこたえられないその隙間を縫って【歩兵】達が岸辺に寄りカモノハシを攻撃。
相手の攻撃がランダムで飛んできてみんな避けるのに必死である以上隊列を利用した<戦陣術>は無理だろう。
「相手もかなり追い詰められてます。ここでこちらも畳み掛けます!『行きます!』」
戦陣術 激励
戦陣術 戦線維持
今のところ使えるのはコレくらい。あとはひたすら皆でラッシュ。
ただ皆岸辺に寄って自分が攻撃する隙間が無いので、
壊剣術 天沼
全力で精神力を込めれば、かなりの範囲をカバーできた。
術で味方の身体能力を高めて後は任せるって、なんか指揮官だな~。
カモノハシの動きを観察するのに集中していると、自然と【兵士】の動かし方も見えてくる。
念の為薬で精神力を回復しつつ、指揮に集中していると
カモノハシの動きが止まり、不穏な空気を感じたので、
「全員密集隊形!『行きます!』」
戦陣術 激励
戦陣術 岩陣
防御専用術で、様子を見れば大当たり!
大きく口を開けたカモノハシは口から怪音波を出して、そこら中の木が折れ、土がめくれる。
防御に徹したお陰で被害は最低限。そのまま全員でラッシュをかけ倒した。
頭の中でファンファーレがなると、
最多治療
を貰えると……ですよね。専念してましたもん。
〔水獣の治療鞄〕と言う事で、どうやら装備していると治療速度と効果に影響するらしい。
今後ももっと<治療士>使っていけよって言うメッセージかな。
ビエーラさんはなんか筒を手に入れたようだな?
「それ何の筒ですか?」
「これはアタッチメント用素材なの。ボウガンに取り付けるとデバフを追加出来るの。飛距離が短くなるから普段は使わないけど、戦闘中付け外し可能だし悪い物ではないの」
へ~色んな道具やら装備やらあるもんだな~。
しかしそれにしても、瘴気の臭いは消えない。てっきりカモノハシが元凶だと思ってたけど、違ったのか……。
湖の周りを散策していると、いつか見た石。
楔じゃんと思ったが生憎今日は<治療士>を付ける為<探険者>は装備してないので<言語>が無い。
出直そうか……でも、普段はここに来るの大変だって聞いてるし、どうすっか……。