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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
116/363

115.ビエーラさん夫妻の【黒の森】掃除

 「と言うわけで、緊急事態なんですけど力を借りてもいいですか?」


 「勿論なの最近変な魔物が出て狩りをお休みしてたから丁度いいの。共同作戦で【黒の森】の湖に潜む厄介者を狩るの」


 【黒の森】で単独で戦えると言えばこの人しか思い浮かばなかったビエーラさん。


 状況を説明するとかなりやる気を見せてくれたが、変な魔物が出たって言ってるって事は、既に敵の見当も付いてるのかな?


 「一応作戦としては、まず【黒の森】の魔物をある程度掃討、その後一気に戦力を集めて湖まで進軍すると言うものなんですが、変な魔物について聞いておいてもいいですか?」


 「変な魔物は変な魔物なの羽が生えてるわけでもないのに嘴が生えてて、二足歩行で歩きながらそこいらの別の魔物を引っ掻いて回ってるの。そうすると魔物が苦しんで、そのままこっちの砦の方に向かって行くの。嘴の魔物はそんなに強くないけど、そこら中にいて次から次へと他の魔物を凶暴化させてるの」


 ふむ、同種の魔物がいっぱい発生してるって事は相手も集団の可能性が高い。


 問題はその凶暴化だよな。病毒持ちで病毒を振り撒くまではわかるが、その凶暴化がヒトにも効く場合、攻撃を受けることすら許されないって事になる。


 「これはまず、凶暴化対策からですね。【黒の防壁】内の施設は自由に使ってもらって構いませんので、待機お願いします。もし暇なら他の【兵士】たちと一緒に【黒の森】から出てくる魔物を狩ってても構いませんので」


 「分かったの。旦那様と一緒に手当たり次第魔物狩っておくの」


 「ああ……はい、よろしくお願いします」


 うん、自分は最近ちょっと学んだ。この手のトッププレイヤー達のやる事は自分の常識では測れない。


 でも皆悪気はないし、何なら他人の為にやってる事が多いので、放って置くのが一番幸せだと言う事。


 気持ちを切り替えて、チータデリーニさんに相談だ。


 「と、言うわけで病毒に関しては必要な物資を届けてもらっていますが、凶暴化が不安です」


 「なるほどな。俺も何だかんだこの砦に配属されて長いが、あいつが事件を起こすのははじめてだから、なんともな」


 「え?でも魔物自体は知ってるんじゃ?」


 「ああ、見た事はあるし、昔の古い記録なんかで生態も分かってはいる。あいつに病毒を移された魔物に攻撃されるとこちらも病毒が移るってこともな。ただ俺達はまだその凶暴化の魔物とはやり合ってない」


 「なるほど、森の中で他の魔物を凶暴化させるだけさせて、本人達は高みの見物ですか、いやらしい魔物ですね」

 

 「確かにいやらしい魔物だ。しかし何か手を打たないわけにもいかん」


 「凶暴化なんていう状態異常は初めて聞きましたからね……。これは一旦【古都】の兵長に相談ですかね……」


 そんなこんな相談していると憔悴したカピヨンさんが、どこからともなく現れ、


 「今回の作戦はソタローが指揮ですか、それなら安心ですね」


 「カピヨンさん!お久しぶりです。随分と憔悴してますけど大丈夫ですか?」


 「ええお久しぶり、ちょっと無理をしていたので今は休憩中ですが、既に病毒用の物資は届いていますし、手を離れたので大丈夫ですよ」


 「まあ一時は悲惨な状況だったからな。戦闘要員を組みなおしていく内に交代要員がいなくなったりな……カピヨンが来てくれたお陰で、なんとか持ち直せたようなもんさ」


 カピヨンさんの様子を見る限りよっぽど大変だったのだろう。少しでも早く解決する為に、まずは物資及び兵員の確認。


 いざと言う時どれだけの兵を引っ張れるかで状況は変わる。何しろ確認したらいまだ病み上がりで完全復帰とは行かない【兵士】も多かった。


 こうなると、物資よりも周辺地域からの応援が必要なんじゃないか?


 まずは砦守備、次に森掃除、最後にボス討伐と少なくとも3隊は同時に動かせねばお話にならない。


 となると指揮官も必要か……自分はボス討伐に任命されてる。砦守備がチータデリーニさん。って事は森掃除がビエーラさんか……確か『六華』とか言うボウガン系クランを率いてた筈だけど、指揮系スキル持ちじゃないんだよな~。


 でも、森内の通常魔物狩りなら任せてしまってもいいのかな?


 ボス戦で協力してもらえないのは辛い所だが、そこはやむをえない。あるもので何とかする。


 十全の準備とは行かなかった魔将戦で乗り越えてきた事だ。自分が任命される時点で多分レギオンボスだし、ここでやれなきゃこの先も言い訳ばかりになる。


 「ただ今なの」


 意を決した所で、ビエーラさんが帰ってきた。確かカヴァリーさんと狩に行ってたはずなんだけど、飽きちゃったのか?


 「お帰りなさい。早かったですね」


 「うん、獲物軒並みやられてたの。湖行くなら今なの。行く?」


 「え?急すぎますよ!まだ凶暴化の秘密も分かってないのに……」


 「それはちゃんと調べてきたの。それが一番ネックなんだから最初に調べるのが当たり前なの。アレは病毒と一緒に混乱を掛けてこちらに攻めさせてるの。それでヒトが攻撃したら元々魔物はヒトを敵と認識してるからそのまま攻撃を仕掛けてくるって言う単純な話なの」


 「ああ、そうだったんですか。じゃあ味方が混乱したら」


 「死なない程度に殴るの。病毒対策は物資を送ってもらったって聞いたの。じゃあいざボス退治!」


 「わ、分かりました!ところで、一体誰が森の魔物を根こそぎ狩っちゃったんですか?」


 「何言ってるの?軍の物資が運びこまれたんだからあの人もいるの」


 ああ……あの人か……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 配達した後はお任せされたらヒャッホーいと、森を散策した(笑)隊長(笑)
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