113.マネージャーと武技
「相変わらず凄かったっすね。どうするっす?もう一戦っすか?」
「いや、流石に連続で戦いすぎて疲れたんで、一旦情報整理したいなと思ってます」
「そうっすか!もし時間有るなら、近くに静かな店があるので、そこで話でもするっすか?この街の一般的なことなら教えられるっすよ」
「それは助かりますけど、何でそこまでしてくれるんですか?」
「そりゃ、マネージメント料が入ったからっす」
「え?マネージメント?」
「まあ、その辺も踏まえて話すから安心するっす」
何も安心でいないまま、闘技場の外に連れ出されそのまま閑静なお店へ、
近くのがっつり系と見られる定食屋さん?はいかにも肉体で稼いでそうなマッチョ達が列を成していたが、こちらは喫茶店風。
「さて、まずはこれが今回のファイトマネーっす。ランクが上がればもっと増えるっすけど、今回はそんなもんっす」
手渡されたのは袋に入ったお金。ほとんどが銀貨だが【兵士】の給料に比べればマシな方かな?
「ありがとうございます。それでマネージメントって言うのはなんですか?」
「まあ簡単に言うと闘技参加者の小間使いみたいなもんっすからあまり気にしなくていいっす。【闘士】の方ならある程度息の合うマネージャーが必要になるかもしれないっすけど、自分はフリーの参加者に便宜を払うだけの者っす。何なら普段は別の仕事してるっす。ちなみにマネージメント料は正規の物しか戴いてないっす。その辺は上のヒトが厳しいっすから非合法な事をやると、非合法な目にあうっす。それがこの都の理っす」
「そういう事でしたか、重ね重ねありがとうございます。それで【闘技場】の事をもっと教えてもらう事って出来ますか?」
「勿論っす。そういう説明するのもマネージメント料に入ってるっす。よく分からずに勝手なことするヒトが出ない様に自分達みたいなのが、声かけてるっすから。まずランクっすけど正式な【闘士】じゃないっすから、実はランクは特に無いっす。フリーの参加者とみなされてるっす」
「え……、じゃあガイヤさんと戦うのも無理?」
「そんな事無いっす。それなら最初から言ってるっす。もし炎の巫女と戦いたければ、人気を高めるしか無いっすね。お金持ちのイベントなんかに呼ばれるようになったら、戦える事もあると思うっす。イベントごとは動く金額も大分違うっすから」
「人気になるには自分についたファンにあった戦い方を繰り返すしかないんでしたっけ?」
「それなんすけど、まさかのお試し2戦で、かなりのファンがついたっすよ。後はもっと強敵を倒せればあっという間にイベントに呼ばれると思うっす」
「そうなんですか、何で自分にファンがつくのか……」
「そりゃ、武器持ってるのに敢えて使わないスタイルで負けたら格好悪いっすけど、圧勝っすからね。それも相手がギブアップするような戦い方なんて滅多な事じゃ無いっす」
「ギブアップって普段はあまりしないんですか?」
「そりゃそうっす。負けても勝手に医務室に戻されるだけっすから」
「じゃあ、なんで自分のときだけ……」
「そりゃあ、どれだけ自分が重いと思ってるっすか?その重さで踏まれたら誰だって嫌っす」
「まさか、そんなダメージが出るもんだなんて思ってなかったです」
「それでなんすけど、多分武技が出てると思うっすから、セットして使うといいっすよ。使うほど皆も盛り上がるっす」
「え?魔物倒して新たなスキルを手に入れたわけでもないのに?」
「それが【闘技場】の面白い所でもあるっすけど、普通に使ってる攻撃を一定数のファン達が技と認識すれば武技になるっす。だからフリーの闘技者があとを絶たないっす。新たな武技を手に入れるチャンスだと思って己を磨くにももってこいなんすね~」
「はぁ、なるほど。皆が技と認識すればですか……じゃあ敢えて意識的に変わった事をすれば技として認められるのか……」
「狙った技を手に入れるのは難しいっすよ。やっぱりそこは目の肥えた観客がそろってるっすから、半端な事はしないで、偶々手に入ったら運がよかったと思うのが丁度いいと思うっす」
「分かりました。じゃあ当面はフリーで色んなヒトと戦えばいい訳ですね。一応自分は【帝国】でも任務があるので、合間合間ですけど大丈夫ですかね?」
「何度も言うようっすけど正式な【闘士】じゃないんだから、余り深く考えなくていいっす。例えば週の同じ日にいつも現れる『火精日の斧士』なんていう人気フリー闘技者もいるっすよ」
「へ~自分は任務次第なんでバラバラになりそうですけど、また来ます!」
「そうっすか、いつでも来るといいっすここは【闘都】戦いたい者を拒まない都っす。あと自分みたいなフリーマネージャーは幾らでもいるっすけど、もし上手く掴まらない時はこの店に来たらいいっす。普段はこの店のオーナーやってるっす」
「え?お店のオーナーさんだったんですか!?」
「そうっすよ。闘技が好きなんで趣味がてらフリー闘技者の面倒を見てる趣味人っすけど。この店も趣味と変わらない代物っす。年一でフリー闘技者だけ集めた小さな大会開くのが一番の楽しみっすね」
なんとも、筋金入りのヒトに声をかけられたものだ。
一先ず闘技のやり方は分かったし、武技だけ確認して一旦【古都】に帰還しますか。
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新武技
踏殺・・・倒れている相手を踏むと発動<蹴り>熟練度及び重量でダメージ増加
鉄擁・・・敵単体の動きを制限、筋力差で拘束脱出判定変化