10.ランクアップクエスト
あくる日、ログインして兵長のいる受付に向かう。ちなみにゲーム内では【兵舎】で寝る事でログアウトって扱いだ。
ゲーム的にはニューター(プレイヤー)は寝てる事になる。
「おはようございます。兵長」
「よう、起きたかニューターは相変わらずよく寝るな」
「そうですかね?それで今日の任務は?」
「ああ、それだがなお前は結構戦闘をこなしている上、勤務態度も悪くない。そろそろベテラン兵として一つ上に行ってもらいたい」
「いやベテラン兵って、まだほんの数ヶ月ですよ?」
「ああ、かまわん戦力としては十分だ。どれだけ手があっても魔物を倒しきるなど不可能。少しでも多く戦力を世に出す必要がある。戦闘力の高いお前には戦闘職に付いてもらう【歩兵】か【重装兵】か【偵察兵】から選べ」
「いや急に選べって……」
「安心しろ。どの戦闘職からでもちゃんと出世は出来る。一旦戦闘職として腕を磨いた後、そのまま戦闘職の長となるか、指揮官としてやり直すか選べるから心配するな」
「えっと、何で自分が指揮官になりたいと?」
「あ?なんかあいつ目指してるんだろ?東部輜重隊隊長!あいつは全然自分から戦闘しないんで最初から管理職として育てたが、お前はちゃんと戦えるんだから、戦闘力を高めてから指揮しろよ!いいな!」
と言って、任務票を渡されたのでそのまま訓練場へ移動し、仁王立ちで待ち構えてた教官に任務票を渡す。
「すぐに任務は始まるから、5分ほどそこで待機していろ」
と、言われたのでそのまま待機。数名自分と同じ指示を受けたであろうNPC達と特に喋るでもなく静かに待機していると、その後もぱらぱらとヒトが集まり、
「それでは適正試験を始める!この結果如何によって配属が決まるが、ある程度希望も聞くので安心しろ!とはいえ、もう見習い【新兵】ではない!その事は肝に銘じて、心して臨むように!」
うん、ゲーム内でも数ヶ月しかたってないのに【新兵】じゃないって、早すぎだと思う。まあゲームだし仕方ないのか。
「兵員に緊急出動命令が下った!北門側丘陵地帯にて、魔物の大量発生だ!ここにいる者は各自15分以内に装備を装着し北門へ集合。尚、装備は屋内訓練場に置いてある物を使用するように!任務開始!」
そう言われたので、急いで室内訓練場へ移動する。
山と積まれて転がっている物の中から、自分に合うものを探すが、微妙にどれも中古品?未整備品?って感じだ。
それでも状態のいい物を探して、装着し北門へ大急ぎで向かう。
割と皆ガタガタの装備だが、それでも遅刻する者がいないのは日頃の【訓練】の賜物かな。
全員の状態をチェックした教官から、次の指示が出る。
「よし!それでは次の試験だ。ここから北門を出て北砦へと向かう。ここにいる者達は戦闘職として今後活躍を期待されている。それ故不利な装備のまま魔物のいるフィールドを抜けてもらう。実際には【熟練兵】になった諸君達はすでに新たなスキルを取得できるが、現時点での実力を評価させてもらう!では出発!」
有無を言わさず、北門から全員ガタガタ装備のまま出発。一応武器だけはちゃんと手入れされたものなので、まあ何とかなるかな?
そのまま真っ直ぐ全員で、丘を登っていけば雪百足が飛び出してくるものの、数人で突いたり斬ったり、瞬殺!
からの更に飛び出してきた雪百足も瞬殺だった。
どうやら雪百足はこの集団の敵ではないらしい。
丘の上、橋を抜ければ真っ直ぐ丘の縁の方に向かい、そこには渓谷を下に臨む崖っぷちに建てられている北砦が雪に埋もれて建っている。
いつもは横目に見てるだけの大きな建物の中に全員で入っていくが、正面は広場、奥はどうやらおおよそ三つの棟に分かれているようだ。
現状、試験と言われても拍子抜けなのだが、この後何をするのだろうか?
「ふむ、今回は即戦力となる戦闘経験のある者を集めた試験だったが、個人の戦闘力は問題無さそうだな。当面はこの北砦を中心に任務をこなし集団行動を学ぶといい。では解散!」
え?えぇぇぇ……試験ていう話だから多少は緊張して参加したのに、もう終わり?
皆中央の棟に向かうので、ついて行くと見慣れたカウンターに五厘刈りのいかついおっさん。なんかもう慣れた。
【兵士】の拠点だからって来るもの拒む、おっさん受付に、
取り敢えず大人しく列に並んでいると、割とすぐ自分の番がくる。
「今日配属になった【熟練兵】だな。お前さんの適正は今の所【歩兵】【重装兵】【偵察兵】だが希望はあるか?」
「いや、その職種の違いもよく分からないので……」
「ふむ【歩兵】は汎用的な戦闘職だ。【重装兵】は重量のある装備を扱い仲間を守る戦闘職。【偵察兵】は軽装で隠れたりしつつ情報を集め、時には伏兵などで混乱させたりする役割になる」
ん~……、この前ガンモにタンクが合ってるって言われたし、【重装兵】かな?
「後から変える事も出来るから、そんなに深く考えなくても大丈夫だぞ?」
「そうなんですか?じゃあ【重装兵】でお願いします」
「分かった。じゃあ向こうで装備品のサイズ合わせをするから行ってこい」