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魔法世界のプロローグ  作者: 菓島 大煌 かしま だいき
第一章 魔法の復活
6/82

MRCI 2/3

近づき、ダイヤがゆれるなり光るなりの反応を見せる。その結果に佐枝草はいったん満足する。そしてさっきの部屋へ戻るだろう。その途中で後ろから襲い…

脱出計画を練りながら歩いていると、いつの間にかダイヤの前に着いてしまった。


「これが…あのダイヤ…」

達也の前に立つ美羽の表情は見えないが声質から思うに、畏怖と憧れを感じているようだった。

ここまでは大丈夫。何かあってもダイヤがわずかに反応するだけのはずだ。

しかし、達也の時とは違い、ダイヤは何も反応しない。よし!これなら美羽はこのまま帰れる!

しばらくダイヤを眺めていた美羽がふいに

「温かい…」

というと、右手をすっとダイヤに伸ばした。

「危ない!」

何が危ないかわからないが、直感で危険と感じた達也は美羽を引き戻そうとした。

その時、ダイヤからまばゆい光が放たれ、あたりを包む。

一瞬だった。

達也たちが光に怯んだ隙に、美羽はダイヤへと吸い込まれた。

研究室に黄色いハザードランプがともり、緊急を知らせるブザーが鳴り響く。

「美羽ーー!!!!!」

ダイヤへ手を伸ばそうとする達也を佐枝草が羽交い絞めにして止める。

すぐに研究員たちが2人をダイヤから引き離す。

研究員たちがあわただしく動く中、研究員達に引きずられ、達也は研究室を後にした。


達也は暴れた。暴れまくった。佐枝草を殴り、研究員達を蹴飛ばし、美羽の元へ向かおうとした。が、すぐに鎮静剤を打たれ、行きたくもない夢の世界へと誘われた。


目が覚めるとベッドの上だった。拘束具に押さえつけられている。しばらく足掻いてみたものの、達也の体に息をする以外の自由などなかった。

横を見ると、頬を赤くはらした佐枝草がいた。

「佐枝草あああ!てめええええ!よくも…!」

「…本当に…すまない…我々にもああなることは予測できなかった…」

「ふざけんじゃねええ!!!!!!!!!!!」

「ふざけてなどいない。それに我々は…とんでもないことに巻き込まれたようだ。君も、私もだ」

「巻き込まれたのは俺と美羽だろうが!どういうつもりだ!どうするんだよ!美羽を返せ!」

「…君が鎮静剤で寝ている間、ダイヤが言葉を発するようになった」

「…え?」

「ダイヤが君に会いたがっている。いや、ダイヤだったもの、というべきか。君をこれから"彼女"に会わせる。拘束具を解くから暴れないと…約束してくれ」

「…嫌だと言ったら?」

「嫌でも構わない。我々はもう…後戻りはできそうもない…」

後戻りって…どういうことだ?

とりあえず暴れないことを約束し、拘束具を解いてもらう。約束したとはいえ、佐枝草が隙を見せれば、今度こそ全身全霊を持って暴れ、美羽を助け出し、脱出してやる。

恐れ、動揺、怒り、様々な感情を何とか抑えながら、ダイヤの前へ。


「…こ、これは…」

ダイヤは青く透き通る胸像になっていた。…胸像?美羽に似ている気もするが…

胸像は閉じていた眼をすっと開け、達也を見る。

「達也さん。まずはあなたに謝らなければいけません。私の我がままでこんなことになってしまって。でも美羽さんは私の中で生きています。直接言葉を発し、意思を伝達させるために、私の力を最大限発揮するために、美羽さんの体が必要だったのです」

「生き…今すぐ!美羽を返せ!」

「…まずは今この世界でおきようとしている危機についてお話させてもらえませんか?その上で、返せとおっしゃるなら…」

胸像が動いて話をしている。そのことも驚くべきことだが、それが世界の危機を語る。良からぬことが起こる予感がする。


「達也君、私からもお願いする。是非、ムーアの話を聞いてもらいたい」

声を震わせながら佐枝草が言う。佐枝草もこの展開に戸惑っているようだ。

「そちらの佐枝草さんにもお話したのですが。このままだと地球の人々は滅びます。悪魔によって」

「悪魔?何を言って…」

「そしてその悪魔を魔法の力で倒してほしいのです」

悪魔や魔法と言われたところで荒唐無稽な与太話としか思えない。しかし、目の前でおきているこれは一体…

「魔法なんてこの世に存在するわけが…」

「突然のことで混乱するのは重々承知ですが…現在残っているまじないや信仰、妖怪などの伝説はこの地に魔法が存在していた名残なのです」

確かに…存在してないはずの魔法や妖怪などの概念がどこから出てきたのかの説明には一応なっているが…


「どのように説明して良いものかわかりませんが…なぜこんなことになったのか、説明します。まず、我々、あなた方のいうムーアは40億年前の人類の遺物です」

40億年前…生物が何もいなかった時代、か?

「ムーアを作った人類は別の世界の者でした。元々いた世界は悪魔たちとの大戦で復興できないほどの被害を被りました。ですので新天地を求めることにしたのですが、人類が住める可能性があるのは地球だけでした」

「そんな話が…」

あまりに話が理解の壁を越えていて二の句が継げない。魔法に悪魔に別の世界から人が移住?映画じゃないんだぞ…


「悪魔たちには敗北を喫しましたが、地球に移住したことによって人類は種をなんとか存続させることができました。そして魔法の力を使ってこの地球で再び繁栄したのです」

「それが俺たちの祖先だっていうのか?」

「いえ、無関係とは言えませんが違います。さすがに悪魔たちも数多ある世界の中から人類を探し当てるのに時間を要しましたが、再び人類は悪魔たちに見つかってしまいます。

そして大戦。以前よりも激しい戦いが繰り広げられ、今度は人類側が優勢になりました。しかし、最後の一体になったときには人類も100人足らず。戦力不足のためか倒しきれず、しかたなく悪魔を封印し、その場をやり過ごしたのです。

人類の滅亡は秒読みとなりましたが、太古の人類はこの星がいずれ生命溢れる星になることを予測していました。それなのに悪魔を残してしまいました。悪魔がもし復活してしまったら、生物はまた悪魔の歯牙にかけられてしまいます。

悪魔に対抗できる力は魔法のみだと考えていた人類は魔法をこの地球に残すべく残りの魔力を使ってムーアを作り、何重にも保護魔法をかけ、生物にとって安定した環境になるまで地中奥深くに沈めました。

そして人類滅亡。その人類が残したわずかな有機物が地に残り、進化していったものが今の生物です。長い時間をかけ地殻変動により地表近くまで移動してきた我々が、太古の人類に付与された魔法の力を使い、地球で育まれたその一部の生物を人類に進化するよう導いたのです」


「ムーアって…あの呪いのベッドとか絵画も埋められてたってこと…?」

「あれはムーアではありません。最近になって我々が少し魔力を付与しただけです。あなた方のような人物を探すために。ムーアは12体ありますが私はそのうちの1体。私は、その中でも人類に魔法の力を与えることに特化したムーアであり、人類の歴史を記憶したムーアでもあります」

「じゃあ…俺たちは…やっぱり異世界人の末裔ってことなのか…」

もともと頭のいいほうではないとは自覚していたものの、情報量が多すぎてよく理解できない。


「そうとも言えるでしょう。しかし、太古の人類とは遺伝子的なつながりはありません。あなた方は間違いなく地球人です。ですが、悪魔の目的はあらゆる世界の生物を蹂躙することです。太古の人類だろうと現代の人類だろうと関係ありません。生物を蹂躙すること、それが彼らの目的です」

まさしく悪魔…神に敵対する者。人類をだまし、怠惰にさせる者。悪魔とはそういう抽象的な存在だと思っていたのに…


「そんな…悪魔は…絶対に来るのか?」

「ええ、残念ながら、絶対、です。40億年前の人類は、悪魔を内側からは脱出不可能な"時空の狭間"に封じ込めました。いつの日か人類が再び隆盛し、魔法を以前にもまして発展させ完全に悪魔を滅ぼす力を持つことができれば、例え悪魔が復活してしまっても対抗できると考えました。これが、40億年前の人類が今の人類に託した希望でした。しかし人類が魔法を発展させる前に、その封印が弱まってしまったのです」

「40億年も大丈夫だったのに?」

「ええ。少し前までこの地球にも確かに魔法はありました。この星の生物は太古の人類の影響もあり、有史以前は弱いながらも皆、普通に魔法を使っていました。魔法がある限り封印は解けないはずですし、このまま魔法が発展していくものと思って安心していましたが、なぜかある時、大気中の魔力が急激に減りました。

大気中の魔力が少なくなると、魔法は使いづらくなります。なので人類は魔法以外の文明を発展させましたが、そのことにより、さらに大気中の魔力は失われていきました。我々はどうにか人類に魔法の力を取り戻してもらおうと働きかけてきましたが、肉体を持たぬ身では直接は語りかけられません。

そうこうしているうちに大気中の魔力が弱まったことで悪魔にかけられた封印の力も弱まりました。今の封印の状態では、どんなに魔力を注ぎ込んでももう復活を止めることはできないでしょう。復活の時までもう時間がありませんが、人類の科学の力では悪魔には勝てません。ムーアに残された魔力も底をつきかけていました。こうなってしまったからには、多少強引にでも肉体を手に入れ、人類が再び強力な魔法を使える世界へと導けるように直接人類に語りかけるしか方法が残されていませんでした。

しかし、ムーアと肉体を融合するにしても、今の人類は魔力が少なすぎるせいかなかなか融合できる人が見つかりませんでした。とはいえ、相性が良ければ融合できることがあります。それが美羽さんだったのです」

話はなんとなく分かったが…他に適任者がいるはず。絶対に俺らじゃない。ただの大学生だぞ…


「ちょっと待って、これだけ人類がいるなら相性の良い人だって過去にも何人かはいたんじゃないか?」

「ええ。そのとおりです」

「ならなんでもっと早く他の人と融合しなかったんだ?そうすれば魔法だってもっと発展したはずじゃないか」

「何度か融合したことはありました。おっしゃる通り、その度に魔力も魔法も強くなりましたが、同時にその力を悪いことに使う者も出てきてしまい、人類はそのたびに大きく数を減らしてしまいました。急な魔法の発展が人類に悪い影響を与えてしまったのです。なので、できるだけ特定の人物が強い力を持たないよう、魔法の切っ掛けだけ与え、自然に繁栄するよう様子を見ていたのですが…もうそんな悠長なことを言っている場合ではなくなってしまったのです」

「じゃあ、今からでも他に融合できる人を探せば…」


「達也君、それはもうできない」

佐枝草が口をはさむ。

「確かに我々のネットワークを使えば探すことは可能だろう。しかし、それは情報を外へ漏らす、ということに他ならない。いくら切羽詰まっているとはいえ、まだ誰も魔法を使えない今、公に魔法の存在を明かすとその所有権をめぐり人類同士で争いが起きることは今のムーアの話から考えても、我々が知る人類史から考えても明白だ。悪魔に滅ぼされる前に人間自身がその手で人類の歴史を終わらせかねない。今はムーアの指導の下、我々が魔法を発展させ、悪用されない形にしてから公表するしかない」

「確かにそうだろうけど…せめて美羽に説明してからではだめなのか?」

「ムーアの中にある限り意識もないし、時間も立たないという。ならば恐怖心を抱かせて再び融合するよりも、何も知らずにいる今の状態のほうが良いだろう」

「でも…じゃあなんで俺の部屋に…」

達也は、どこかに自分たちが解放されるような条件はないものか、必死に考えた。

「美羽さんのところに行こうと思っていたのですが、私の魔力が弱くなってしまったため魔力操作に誤りが起こり、美羽さんと絆の強い達也さんの家の冷蔵庫に移動してしまったのです。また、あなたは現在、私が見てきた中で一番魔力が強く…強いと言っても、誤差の範囲ですが…地球で最高の魔法士になる望みが高いのです。なのであなたには悪魔と対抗する魔法士のリーダーになってもらいたいのです」

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