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魔法世界のプロローグ  作者: 菓島 大煌 かしま だいき
第一章 魔法の復活
5/82

MRCI 1/3

「改めて自己紹介しよう。私は佐枝草俊之 (さえぐさ・としゆき)という。ここの研究員兼責任者だ。君は、総元達也君、だね」

「ええ、はあ…」

「さて、結論から言うと、あのダイヤには何か不思議な力が宿っている」

「呪い、のことですか?」

ダイヤには何かあるとは思うが、この地球に呪いや魔法の類があるとは正直まだ思えない。ダイヤが冷蔵庫にあったことも、何か理由があるに違いない。が、未知なる力が想像通りのものであったなら、それはそれで面白い展開ではあると達也は思った。

「呪いというとちょっと語弊があるかな。我々はこのダイヤと同じような未知の性質を持つ物質、ミステリアス・アンノウン・アーティファクトの頭文字をとってMUA、"ムーア"と言っているのだが、それらを主に研究しているMUA研究協力機関(MUA Research Cooperating Institute)、MRCIという組織だ。公にはされていないが、世界各地にある。

最初は超常現象を個人的に調べていた小さな研究所だったが、ある時持ち込まれたものの中に、"本物"が見つかったんだ」

「本物?」

「ああ。それがあのブルーダイヤだ。調べれば調べるほどに謎が深まるそれをムーアと名付け、我々は国を巻き込んで本格的に研究し始めた。その後、ムーアは世界各地で発見されるようになったのだが、基本的にはすべての国、団体、個人が所有権を放棄し、MRCIで共通の財産として管理しようということになったのだよ。分かった事実を共有することを条件にね。こういった研究というのは…研究段階ではなかなか外に出づらくてね。共有させる条件を受け入れてもらうのに苦労したもんだよ…」

「大変だったんですね」

まあ…どういう苦労をしたかは別に興味ないけどな。

「いやすまん、話がそれたな。そういったわけで連携を取りながらそれぞれのMRCIでムーアを研究している。普段ダニエルスダイヤは大英博物館にあることから表向きはイギリスの所有物扱いだが、今このように日本においておけるのはそういう理由があるからだ」

「へえそうなんですか」

それも違う。所有権にも興味ない。

「で、今どんなことがわかっているんです?」

聞きたいのはこれ。

「一つは、なにがしかの波動をムーアが発していること。この波動を計測する機械を開発できたのは偶然だったのだがね。まあその話は追々。もう一つは、特定の人物に対してムーアが反応するということが分かった。ムーアが伝えたいことがある人に近づかれると振動する、というような、ね。まだこれだけだが、そこから推察を重ね、我々が出した答えは"ムーアは意思を持っている"ということだ」

「意思って…ムーアって無機物ですよね、なのに生きているってことですか?」

「生きているかどうかの定義は実に難しいところでね。そのことについて君と議論するつもりはないが、何か不可解なことがあれば仮説を立て検証する。違っていれば別の方法を試し、答えが出るまで研究する。それが科学者というものさ」

ますます興味が湧いてくる。ダイヤが…意思を持っている。そんなの完全にファンタジーの世界だ!難しいことはわからないが、昔ならいざ知らず、現代の世界の一流の科学者たちがこんな施設まで作って研究した結果、無機物が意思を持っているかもしれないという答えにたどり着いた。その研究結果に、一般人の俺が疑問をはさむ余地などないだろう。


「それにしても、ムーアが出す謎の波動を見つけただけでこんな大きな組織ができるっていうのも不思議なんですけど」

「世の科学者が尊敬する科学者がイギリスにいてね。先日亡くなってしまったのだが、その科学者がここの初代所長だ。その彼がムーアには大きな可能性があると断言した。他の科学者が言ったのならこうはならない。この件に関して彼に限っては間違いはないし、研究資料を何度査読してみても彼が正しいことが立証されてきている。ま、これもそのうち説明しよう。といっても、それだけではなかなか国は納得しない。そこで、彼が残した他の功績や、研究員が開発した新技術などを小出しに発表して、資金を確保しながら研究しているのさ。とはいえ、裏では国も興味津々でね。表立って支持を表明できない代わりにいろいろグレーな部分で便宜を図ってくれている。私はそんな国とMRCIの橋渡し係、といったところさ」

一般人が知らないところでこんな大きな組織が立ち上がっていたのか。世界は広いな。

「すると、俺に反応してダイヤが飛んできたと?」

「そう、君に反応して、だ。ムーアを展覧会形式にして各国を回らせていたのは、ムーアが反応する者を見つけるためだ。もっとも、今回の騒動を受けて展覧会は中止になり各ムーアもMRCIに戻されたがね」

あの展覧会、ここが主催だったのか。

「MRCIの本部がここですか?」

「いや、MRCIに本部はないのだよ。主導権はそれぞれの施設が持っている。私は日本支部の代表に過ぎない。ちなみに関東理化学研究所というのはMRCIの隠れ蓑だ」

「他のムーアに反応した人たちは、今何を?」

「君以外にはまだ1人だけだが、彼には実験に付き合ってもらっている。と言っても、脳波を測ったりたまにムーアに近づいてもらったりする程度で、あとは快適な部屋で"待機"してもらっている」

「他に1人だけ…その人のところにもムーアが移動したんですか?」

「いや、ムーアが瞬間移動したのは今回が初めてなんだ。もう1人にムーアが示した反応は少し輝いたり、かすかに動いたり、対象者の体温が少し上がったり、その程度さ。しかし、我々が押し入ったときに君になんの身体的変化がなかったし、ダイヤにも反応はなかったので瞬間移動は何かほかの要因かもと思ったものだが…先ほど君が再度近づいた時に反応があったことで、あのダイヤはやはり君を選んで移動したと判断したのさ」

「でも、それで俺に何ができると…」

「それは私にもまだわからない。もう1人と同じように、できるだけ安全と思われる環境で実験に参加してもらう、ということくらいだな。あまり意味がなさそうに思うだろうが、ムーアが現在の科学では証明しきれない、破壊的な力を持っていたとしたら…確実に人類の危機だ。あらゆる手段を使ってでも解明に勤しまなければいけない。無益に見えるような実験でも、倫理的にグレーな実験でも。しらみつぶしに試すしか今のところ方法はないのだよ」

破壊的な力と言われると危険なものに思えるが、達也にはダイヤがそれほど危険なものにはなぜか思えないでいた。


ふいに部屋のドアが開き、スーツ姿の男が入ってきて佐枝草に耳打ちをする。

「うむ…達也君、実は、もう1人ここに来てもらった人がいる。うん、入ってもらってくれ」

警察官姿の男の後ろから美羽が顔を出す。

「美羽!」

「達也!」

まるで永遠の別れから解放されたような熱い抱擁をした。

「達也、私何が何だか…ここ、警察署じゃないの?」

美羽は警察に事情聴取があるとでも言われてきたのだろうか。

「俺も、まだ何もわかっていないんだ。佐枝草さん、これはいったい…」

「展覧会会場では入場者を様々な機器で監視していたのだが、サーモグラフィーによると、ムーアに同調するように体温が上がっていたのは君たち2人だけだった。ダイヤと相対した時に『温かい』と言っていたことも確認している。加えてダイヤの移動先である君の彼女。何か関係があると考えてもおかしくはないと思わないかね」

「美羽も…選ばれた…?」

「ちょっと待って、なによムーアって!選ばれたって何よ!」

美羽は勝手に進む話にいら立ちを隠せない。

「ここから出して!」

暴れ始めた美羽を達也はそっと宥める。

「美羽、大丈夫、大丈夫だから。不安なのはわかる。俺もわからないことだらけだけど、この人、佐枝草さんっていうんだけど、この人は信じられる人だから」

正直、信じられるかどうかはまだわからない。というか、いまだ不信感が拭えない部分はある。

しかし、ここで暴れても何もいいことはないだろう。まずは情報収集だ。

「佐枝草さん、話を続けてくれ。美羽も一緒に」

「ふむ。まずは、君と同じように、彼女も確認したいのだが」

逆らえない状況とはいえ、未知の物体に彼女を近づけさせたくはない。なんとかならないものか。

「あれは俺だけで十分だろ?美羽は関係ない!」

「…君たちには悪いが、先ほど話したように彼女にも反応した可能性がある以上、協力を仰ぎたいのだ。心苦しいところもあるのだが…」

歯切れが悪い。

「やっと見つかった手掛かりなのだよ…わかってくれ」

その有無を言わさぬ圧力に、達也は恐怖を感じた。やっぱりこいつらは信用できない!国がかかわっている組織とはいえ…いや、国がかかわっている組織だからこその恐怖だ。魔法や呪いなどという世迷いごとにうつつを抜かした俺がバカだった。このままでは人体実験や死に直結するような実験を課せられるかも…外との連絡手段はない。おとなしく携帯を置いてきた俺がバカだった!隙を見つけて脱出しよう。それまではおとなしく従うふりをしていたほうが良い。最悪、美羽だけでも何とか助けなければ。

さきほど佐枝草が話していたこと、自分がやったことをかいつまんで美羽に説明しながら、おとなしく従ってもらえるよう美羽に話した。

美羽は時折声を張り上げ反論したが、ここから脱出できるように達也がなにか策を考えているのがわかると従うふりを始めた。

「その…ムーアっていうのに近づけばいいのね…」


背景好きが爆発。



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