十恨歌
ひさかたの ひかりまいちる ひるのはら
ふみいりて ふりさけみるも ふとひとり
みゆるのは みはなされたち みとうのち
よるべなき よるにこごえる よすてびと
いくつもの いらえをもとむも いまいまし
むしられて むじつのつみで むらはちぶ
なをなくし なみにおわれて ながされて
やくもたつ やごころおもい やもたても
ころげおつ このみうらめし こけむして
とおからず とこよのそらに とらわれむ
原文
久方の 光舞い散る 昼野原
踏み入りて 降り放け見るも ふと独り
見ゆるのは 見放された地 未踏の地
寄る辺なき 夜に凍える 世捨て人
いくつもの 答えを求むも 忌々し
毟られて 無実の罪で 村八分
名を失くし 波に追われて 流されて
八雲立つ 八意想い 矢も盾も
転げ落つ この身恨めし 苔生して
遠からず 常世の空に 囚われむ
意訳
おだやかな光が草花に降り注ぎ舞っているようだ
足を踏み入れはるか遠くまで見てみれば自分一人しかいない
見えるのは誰も足を踏み入れたことのないような見放された大地だけだった
誰にも頼ることができない夜の寒さに自分の立場を思い出した
このような事態に陥るまでになぜ自分がと問い詰めるも忌々しいと切って捨てられた
全てを取り上げられ無実の罪で村八分となってしまった
名前すら失くし波に追われるように流された
八雲立つあの故郷や様々なことを思うと矢も盾もたまらない
どこまでも転落していく我が身が恨めしい
ついには苔むして そう遠くない日にあの世の空の下に囚われてしまうだろう