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第7戦陣  作者: あした・の・β≪ベータ≫
5/5

第5陣 「1回裏 その4」

 黛の手から離れたボールは、ホームベースの手前で若干変化した。少しツーシーム気味ではあるが、フォーシームに近い軌道、ただ縫い目をしっかり握ってたかというとそうではない。少しだけ斜めにして、その分少しだけ変化を加えた。ガスリーンもしっかり反応したが体勢が崩れるも、打球は一塁線側に転がる。しかし、一塁ベースの手前でファウルゾーンに飛び出した。


 2ボール1ストライク。ひとまず一つストライクは入った。では、4球目どうするか。


 ガスリーンのホットゾーンはほぼすべて。なおかつボール球でも余程外れてない限りは、安打にすることもできるし、外した球はきちんと見るし、状態もそこまで悪くはない。


 内角低めは打ちにくいから捨てているかな、外角に来たら振ってくるであろう。


 では、フォークを投じるか、それもすっぽ抜けでややチェンジアップ寄りにして。


 そう結論付けた黛の第4球、20秒生じさせてしまった。グローブに入っていたボールを握り、人差し指と中指の間にボールを挟んで、でもその様子は当然ながら直前まで悟られないように。


 一方のガスリーンもその構えと傾向から、少なくとも変化球がやってくると推察はしていた。思い切ってレフトスタンドまでが理想ではあるが、軌道次第では右中間に持っていくのも悪くはない。ランナーなしで得点圏に持っていくためには、最低限二塁打に相応するものは必要である。そう考えていた。


 その考えが纏まったときに、黛は投球モーションからガスリーンに向けて第4球を投じた。ガスリーンはそのボールが外角高めに来ると予想し、バットをそこに伸ばした。だが、ボールはバットを振った場所よりも一段高い位置にやってきて空振り。これで2ボール2ストライクとなった。


 見逃せば3ボールになっただけに、ガスリーンは若干悔やんだが、すぐに次の投球を待った。


 その一方で、黛はあるデータを思い出す。ガスリーンは2ストライクになってから、なかなか三振しない。粘りに粘って、失投を痛打されるというケースを、過去の試合で研究の一環としてよく見ていた。まだ黛からは安打は放っていないものの、打たれるんじゃないかという雰囲気がよぎった。3球目のファウルも4球目の空振りも、ストライクを取って追い込んでいるのだが、ほぼガスリーンは読み切っていたように感じた。ボール1個分ずれてれば、異なる結果になっていたかもしれない。


 だが、それだからこそギリギリの攻防で勝負をしたい。黛が珍しく序盤から静かに闘志を燃やし始めた。そして、その勢いで5球目のセットに入って、ほぼ無心でインコース方面にストレートを投げ込んだ。外れてボール。これでフルカウント。いわゆる見せ球。ここからどう決めるか。そう感じていた時、キャッチャーの子島(ねじま)は、間をとってマウンドへ駆け寄った。


「おい、黛。初回からアドレナリンを上げるなよ。早く力尽きてしまうぞ」

「子島、後悔したくないんだ。あと次の球はしっかりと落とす」

「裏、かかないよな」

「そこは正直だ、打たれても点は入らないくらいのボールを投げ込むよ」


 そうやり取りした後、すぐさま子島はホームベースの後ろにしゃがむ。それを確認してから、黛は投球動作に入る。オーバースローから放たれた6球目は、黛の宣言通りベースに向かって軌道を描くチェンジアップだった。あとはストライクゾーンのギリギリに収まれば・・・。


 子島は真ん中低めのストライクかボールかというギリギリの線で黛の投げた球を待った。ただ、ガスリーンのスイングスピードは速い。加えて、チェンジアップという球種からしてもかなり最後の段階まで見ていけることに懸念はあったが、そういうことを考えてもしょうがない。


 ガスリーンのバットはまだ動じない。程なくして、ボールがベース上にやって来る。その時、ガスリーンは振り抜いた。そして、振り抜いた先に黛の球が引っ掛かり、打球はフェアゾーンに飛んだ。


 ガスリーンの打球は三遊間に向かっていった。ショートの服部幸雄(はっとりゆきお)が飛びつくも届かなかった。だが打球は落ちずに、レフトの正面までダイレクトにボールは向かった。レフトの左沢三樹(あてらざわみき)がしっかりとボールを捕まえて3アウト。


 1回裏、ドリーマーズの攻撃は古瀬彦一の先制先頭打者ホームランで1点を先行。これより2回表、タイタンズの攻撃へと移ってゆく。

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