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ヤンデレ彼女の躱しかた  作者: 負け犬
3/14

ヤンデレの戦闘能力は異常

ヤンデレはだいたいハイスペック



この小説は「pixiv」様にも掲載しています。





挿絵(By みてみん)









「行ってきます」


「行って参ります」



拷問以外のなにものでもない朝食を終え、俺とゆいは学校に向かって歩き出す。


季節は春。


冬を越したばかりのこの時期、朝はまだ少し肌寒い。


俺の暮らしているこの町、病雲町(やみくもちょう)は自然が豊かなド田舎だった。


というのも、ここ十年ちょいで病雲町に急速に開発の波が押し寄せてきていたりする。


そのため、ド田舎だったこの町も少しだけ都会の様相が垣間見えているってわけだ。


そのおかげで、現在の病雲町は都会よりは自然豊かだけどド田舎と呼ぶほどではないという、都会と田舎の中間くらいな中途半端な感じになった。


地方都市? 都会田舎(とかいなか)? フッ、好きに呼ぶがいい。


ここ数年で架けられた大きな橋を遠目で見つつ、俺は白線が消えかかっている傷んだ道路の端を歩く。


この道路も近々新しく作り変える予定があるとかないとか。


俺が物心ついたときには既にあったこの道路が作り変えられてしまうと思うと少し寂しい気がするけど、仕方ないね。


時が経ち、時代が変わればどんなものでも変わってしまうものだ。




俺達が通っている学校は俺の家から徒歩で20分くらいのところにある。


俺としては徒歩ではなく自転車で通いたいところだが、残念ながらとある事情によりそれは不可能だ。


とある事情というヤツはまた後で説明することにしよう。


俺は隣を歩くゆいに、もはや登校時のお決まりになっているセリフを投げかける。



「なぁゆい? もうちょっと離れてくれないか? 歩きにくいんだけど」



ゆいは俺の右腕にしがみつくように腕を組んで歩いていた。


傍から見れば恋人みたいな歩き方だよね、これ。


ゆいは俺と登校する時はいつもこんな感じに腕を組んでくるのだ。



「ふふっ、嫌です♪離れません♪」



ニコニコしながらゆいは俺の要望を即答で却下した。


うん、まぁ知ってた。


頼んでも離れてくれないのは毎朝のことですし。



「~♪」



どうやら今日のゆいは上機嫌なご様子。


ゆいの自己主張激しめな胸がいつもよりも強めに俺の腕に押し付けられております。


「当ててんのよ」ってやつかぁ?だが残念だったな。


俺はどちらかというと貧乳派なんだ。


水平線の如く真っ平らな胸が好きなのだよ。


成長し始めた膨らみかけの青い果実も捨てがたいがな。


おっとぉ!? 勘違いしないでくれ?


俺はロリコンじゃないぜ?


本当だぜ?


ちょーっと小柄な女の子が好きなだけのジェントルマンだ。



「っ!? 守さんっ!!」



俺が読者様に弁明していると、突然黒塗りのリムジンが猛スピードでこちらに向かって走って来た。


リムジンは耳障りなブレーキ音を響かせ、傷んだ道路を抉るかのようなドリフトをして俺たちの前で停車した。


その次の瞬間、リムジンから数人の黒いスーツを着た男が素早く降りてきて躊躇いなくゆいに向かって銃を発砲した。



「っ!!」



ゆいは教科書が入った鞄を盾にして銃弾から身を守る。


ときにはメタルスラ〇ムも真っ青になる華麗な身のこなしで銃弾を躱している。


黒服の男達はどうやら実弾ではなくゴム弾を撃っているようだが、当たり所が悪ければ痛いでは済まないであろう。


ていうか、今更だけど銃弾を躱すとかすごいっすね、ゆいさん。


運動神経が良いとかそんなレベルじゃないよね? それ。



「いつもいつもっ! 懲りない人達ですねっ!!」



ゆいはそう言って黒服の一人に向かって走り出す。


黒服の男は発砲して迎え撃つが、ゆいは鞄を盾にして銃弾を防ぎつつなおも突っ込む。



「眠ってください」



そして黒服の懐に入り込んだゆいは勢いそのまま、痛烈な掌底を黒服の鳩尾に叩き込んだ。


掌底をまともに受けた黒服の男は声を上げることなく倒れ伏した。


あらやだ、ゆいさんあっという間に黒服さんを1人倒しちゃったわ。


相変わらず強過ぎぃ!


どこぞの名探偵の居候先の空手部なお姉ちゃんを思い出しちゃう。


突然のバトル展開についていけない俺はゆいの強さに戦々恐々としていると、突然誰かが俺の腕をグイッと引いた。



「今のうちよ、早く」



そして俺は抵抗する間もなく、何者かにリムジンの中に引きずり込まれた。



「!! 守さん! 今お助けします…っ!?」



リムジンに引きずり込まれた俺のもとに駆け寄ろうとしたゆいを足止めするかのように、残りの黒服たちがゆいに向かって発砲する。


足止めされるゆいを嘲笑うかのように俺を乗せたリムジンはアクセル全開で急発進し、ゆいを置いてその場を走り去っていった。





「あの女、また性懲りもなく私の守さんを……!」



私はあの忌々しいリムジンが走り去っていった方角を思わず睨みつけます。


何度警告してもなお私から守さんを奪うなんて……余程死にたいようですね。



「うっ……ぐっ」



先ほど襲い掛かってきた黒いスーツの人達は全員地面に倒れて苦しそうにしています。


なかには気を失っているのか、ピクリとも動かない人もいます。


当然の報いですね。


むしろその程度では生温いくらいです。


私と守さんの二人っきりの時間を邪魔するだなんて、万死に値します。


私としてはここで全員殺してしまってもいいのですが、守さんに「殺すのは駄目だ」と言われていますので殺しません。


守さんの寛大なお心遣いに感謝することですね。


……倒れている有象無象はどうでもいいです。


守さんを攫ったあの女を今日こそは処分するとしましょうか。


殺すのは駄目だと守さんに言われてはいますけど、あの女は別です。


言いつけを破ることになりますがお許しください。


では行きましょうか。


愛しい人のもとへ。



「守さん……待っててください、今あなたのゆいが参ります♡」



そして私は1人、通学路を再び歩き出すのでした。






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