夜さん
ぼくもきみも同じだと、
信じていたいのです。
朝が来れば、スッと消えてしまう、
そんな性がぼくにもあるのだと、
信じていたいのです。
だけれども、ぼくは、ぼくでしかなくて、
きみの声や言葉のひとつも掴めないまま。
朝が来て、きみがいなくなって、
ぼくはぼくの影を見つめている、
かなしいことだけど、
それがぼくにできる全てでした。
おやすみなさい、その一言で、
あの子は泣いてしまいます。
きみの息が澄んで、ぼくは泣いてしまいます。
目を閉じて、息を、吸って、吐いて、
夢のひとつも見られないまま、
大切な音も抱けないまま、
目を開けるときには、もうきみはいない。
そして、朝の光で、ぼくの涙が散って、
きれいだ、なんて思ってしまうのです。