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第9話 迷宮LV4


 009


 迷宮の分かれ道は全部で8本。

 索敵のおかげでボスらしい個体の場所がわかるので後回しにして既知の魔物を蹴散らしていく。

 今は効率より経験値と戦闘訓練だ。


 途中でどう見てもレベル1の時にやっつけたぶよぶよのボスと遭遇。難なく倒して1メートル程の槍、ショートスピアを獲得した。これといった武器を定めていなかった西川に渡す。


「先輩! 私、男の人からプレゼントなんて生まれて初めてです。大事にします」


 顔を赤らめているが腕に抱いているのはショートスピアだ。

 プレゼントという認識は持っていないが、初めてが槍とかで大変申し訳ない。まあ、テンションが上がっているので問題ないだろう。


 何故か姉妹に自慢を始める。ユウはにこにこ聞いている。

 いたたまれない顔をさせて申し訳ないな、ミコ。


「一条様は女心についてもう少し学ぶべだきと推察いたします」


 菊千代が目を閉じて首を振っていた。やかましい。

 大体、そんなスキルは手に入らなかったぞ?


「あの、それは実生活でのお話ですか?」


 もう黙れ、サポートプログラム。


 あと、歓喜しているのは分かったから槍を振り回すな西川。


 姦しい中、魔物を倒しながら先を進む。


 → 一条光輝はレベルアップ Lv.6→Lv.7

 → PM西川はレベルアップ Lv.6→Lv.7

 → PMミコはレベルアップ Lv.5→Lv.6

 → PMユウはレベルアップ Lv.5→Lv.6


 分岐の最後の1本に来るまでに全員レベルアップだ。

 スキルポイントの補充が出来てよかった。迷宮ポイントは残り25だ。

 姉妹のスキルも帰ったらあげてやろう。戦闘ばかりの生活では味気ないからな。


 右の通路に固まっていたキャベツを排除して、いざ未踏の通路へ。

 今回も野菜が沢山手に入る。とても食べ切れないな。謎のアイテムボックスの保管期間が心配になる。


 決して油断していた訳じゃない。

 最終通路に足を踏み入れる前に索敵もした。だけど、やはりどこかで慢心していたんだろう。スキルという絶対的な異能に驕っていたんだと反省する。


 背後のミコが横から飛び出した狼に襲われた。

 俺の危機察知が遅れて発動。

 ミコがあわあわしている。それをスローモーションで見せられる。


 狼は口を大きく開いて飛びかかってきている。

 ミコの細い首なんてひと齧りだ。


 必死の俺の突きを狼は首を捻って避けやがった。

 そのまま伸びきった腕に噛みつかれる。

 激痛で気を失いそうになるのを歯を食いしばって我慢だ。食いちぎられた訳じゃない!


「コーキ様!」


 どちらの叫び声なのか聞き分けられない。腕からは血飛沫が上がる。


 → 一条光輝はグラディウスをファンブル


 親切にどーも。

 手から武器が落ちた。丸腰だ。予備の武器は調理用に使用しているナイフくらいだ。


 西川のスピアでの必死の突きは難なくかわされた。槍スキルを上げておくべきだった。後悔なんていつも役にたたない。

 だが、狼は余裕で後退する。まさかの一撃離脱だ。

 薄々感じていたが、ワンパターンしかない攻撃という制約に助けられた形だな。


「3人とも下がれ! 戻るんだ!」


 推測だが、分岐地点を跨いで魔物は襲ってこないはずだ。さもないと今頃迷宮内部の秩序は失われている。わざわざレベルの低い順に魔物を配置している意味がなくなるからな。


 3人が慌てて下がる。

 予想通り追撃はなかった。腕が痛い。痛いというか感覚がない。


「バッドステータス、右手損傷です。回復しますので左手を」


 菊千代に急かされてポーションを使用する。


「先輩! 血がこんなに」

「コーキ様、コーキ様! しっかりしてっ」

「ごめんなさい、ごめんなさい」


 出血のわりに1本目のポーションで完治した。何気に凄いポーションだな。追加ダメージとかで狂犬病とか無いことを祈っておこう。


「ああ、痛かった……」

「はい?」

「え?」

「あれ?」


 青い顔の西川と、涙を流している姉妹がキョトンとした。


「ああ、悪い悪い。回復ポーションがあるからあれくらいなら大丈夫だ。二人が頑張って集めてくれたから助かったよ、ありがとな」


 頭をぽんぽんしてやる。子供には刺激が強すぎただろうR-15だ。ここはことさら軽い感じでおどけておこう。


「西川も、心配しすぎだ」


 むうと睨まれる。許せ、子供にトラウマを与えないためとはいえダシに使って申し訳ない。


 だが、ミコには効果がなかったらしい。

 光を失った目と暗い悲壮の顔色は絶望に彩られている。おいおい、子供がしていい顔じゃないぞ。


「ごめんなさい、私のせいで……私はコーキ様の身代わりにならないといけないのに……」


 ミコは脱力した様子で俯く。やはりそういう風に捉えていたか。

 役に立たなければ捨てられる。そんな必死の思いで気を張り詰めていたのだろうな。


「違うぞミコ、ふたつ違う。ひとつは俺はミコ達を捨て駒に使う気はない。俺が二人を守ると言ったし決めた。ふたつ目はこの仕事はそういうものなんだ。怪我もする。ここからは気を付けていくさ」


「でも……はい、わかりました」


 赤い目だが気丈にも笑おうとしているミコをよしよしと西川が慰めていた。


「菊千代、俺の索敵スキルが何故効かなかったんだ?」

「おそらく、保護色による擬態スキルではないでしょうか?」


 なるほど。索敵で見えたけど、常時発動している訳ではないから移動されれば位置は変わる。保護色で擬態されていれば見落とすこともあるか。


 危機察知も同様だと考えていいなこれは。相手に隠れるスキルがあれば察知もできないか。

 アナライズは相手を見ないと発動しないみたいだ。


 打てる手はあるか? 索敵スキルはまだ3だから上げることが可能だ。でも感覚的にソナーみたいだからレベルを上げても距離が伸びるだけの可能性が高い。


 スキルに頼るのは極力避けたいが頼らなさ過ぎるのも本末転倒でバランスが難しい。


 じっと、通路の先をうかがう。隠れていないか? 必死で目を凝らす。


 → 一条光輝は気配察知スキルを獲得した。


 拍子抜けしてしまった。そういえば忘れていた。

 気配察知のレベルを3にあげてもらう。

 壁に寄り添うようにぼんやりと狼の輪郭が見えた。バッシブ型か……SP消費もない。

 イージーモード発動だよ。そういう設定なんだよ、ここは。


「……いくぞ」

「え? はい」

「うん」

「先輩、大丈夫ですか?」


 西川の心配そうな顔に応えるように、通路に踏み込んですぐに壁の輪郭部分に投石する。

 キャウンと悲鳴が聞こえた。

 狼の姿が現れた瞬間、姉妹が矢と魔法で攻撃。

 狼は弾けとんだ。


 さっきまでの緊張感はどこにいったんだよ?

 更にドロップアイテムに銅のインゴット。

 どないせえと。


 忘れずにさっき落としたグラディウスを拾っておく。


 最終地点に到達するまでに4人ともレベルアップ。狼、意外と美味しいな。腕を齧られた分のお返しとしては充分な物だ。迷宮ポイントは計32だ。


 → 一条光輝はレベルアップ Lv.7→Lv.8

 → PM西川はレベルアップ Lv.7→Lv.8

 → PMミコはレベルアップ Lv.6→Lv.7

 → PMユウはレベルアップ Lv.6→Lv.7


 最終決戦の前に戦力増加だ。

 ユウの格闘(弓)をレベル10に上げる。

 出し惜しみはなしだ。


 →PMユウは派生スキル追加攻撃(弓)を獲得した。


 見慣れない派生スキルとか出てきたぞ?


「菊千代?」


「派生スキルですね? 種類によって設定されているスキルです。前提スキルが決まっているものなどがありまして、条件を満たすと獲得が可能になります」


 つまり、弓レベル10が追加攻撃というスキルの条件だったわけか。

 追加攻撃(弓)の説明を見てみる。


 → 弓で攻撃の場合、5%の確率で矢が分身してダメージを2回与える。レベルが上がる度に確率が5%加算される。スキル発動より60秒間有効。クールタイムは60秒。


 10まで上がると2回に1回は発動か。恐ろしく高性能だな。

 もちろん最大まで上げておく。


 続いてミコのファイヤーボールを10に上げる。


 → PMミコは派生魔法ファイヤーフレイムを獲得した。


 またか。


 → 任意の場所に炎の柱を立てて10秒間の継続ダメージを与える。レベルが上がる度に範囲が広がる。


 最大レベルは5らしい。さくっと上げておく。範囲攻撃をゲットした。敵の数が多いほど効率が上がる魔法だな。フレンドリーファイヤーがなくて良かった。


 二人には簡単にスキルの説明をしておく。

 確かに強力なスキルだが、使いこなせるほどのSPが育っていないので発動は緊急事態か俺の指示が出たときだけと言い聞かせておく。


 姉妹は真剣にこくこくと頷いている。本当に素直で良い子達だな。


 さて、ボス戦だ。


 ボスは1.5メートル程も体長がある狼だ。頭に角まで生やしているぞ?


「ミコ、俺が足止めできたらファイヤーフレイムで連続攻撃、ユウは右側から弓で攻撃。無理に当てなくていいからとにかく撃て。追加攻撃も許可する。西川はユウを守りつつ隙を見て一撃離脱攻撃だ。欲張って攻撃を繰り返したりするなよ?」


「はい、先輩。男の人に命令されるなんてステキです」


 はいはい。


「はい」

「うん」


 一角狼は俺が通路に踏み込むと躍りかかってきた。角をグラディウスで受ける。

 生臭い息と牙が獣の怖さを醸し出していて、鋭く睨みつけてくる目も大迫力だな。

 前足の爪とか牙とかで攻撃されたらどうしようかと思ったが杞憂だった。


 動きが止まった所でミコのファイヤーフレイムが発動。

 直径1メートル程の炎が地面から噴き出す。目の前で火炎が揺らめいてちよっと怖い。でも熱くないからそのうち慣れるんだろう。


 狼はごおっと音を立てて燃え盛る炎の中で苦しそうに悶えた。だけど俺に一撃を入れていないから離れられない。予想通りだ。グラディウスと角の鍔迫り合いをしているうちにどんどんHPバーは減少していく。


 右から危なげに打ち続けるユウの攻撃ダメージも加算されている。たまにズババンという音がするのはスキル追加攻撃の発動だろう。


 西川も言われた通りに一撃離脱を繰り返している。そういえば、西川の槍スキルを上げるのを忘れていた。菊千代、頼む。


 おお、何だか西川の槍捌きが華麗になったぞ。OLの格好も相まって様になっていて少し悔しい。西川のくせに生意気すぎる。


 少し間を置いた後、2回目のファイヤーフレイムが消えると同時に狼は痙攣して弾け飛んだ。


 → 一条光輝はレベルアップ Lv.8→Lv.9

 → PM西川はレベルアップ Lv.8→Lv.9

 → PMミコはレベルアップ Lv.7→Lv.8

 → PMユウはレベルアップ Lv.7→Lv.8


 レベルアップだ。今日一日だけですごい勢いだな。迷宮ポイントは計42だ。


 ドロップアイテムにハンマーを確認。これはインゴットとワンセットだな。

 あと鉄板とかある。焼肉が出来そうだ。


「先輩! 焼き肉ですよ!」


 落ちているのは鉄板だ、気が早すぎだ。落ち着け西川。

 おなじみの宝箱がぽんと出現する。

 中には鈍く光る銀の腕輪があった。


 → 一条光輝は腕輪(未鑑定)を獲得した。


 未鑑定って何だ? まあ外に出てから考えよう。


 → 迷宮が成長しました 迷宮Lv.4→Lv.5


読んでいただきましてありがとうございます。

楽しんでいただけましたら幸いです。

ブクマ、評価、ありがとうございます。励みになります。

では、失礼しまして。

もし、気に入っていただけたり、続きを読んでみたいと思われましたら、ブックマークとこの下にあります評価の入力をお願いします。(評価感想欄は最新話にしかないそうです)

感想もお待ちしております。続きを書く励みになります。

よろしくお願いします。

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