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第8話 迷宮LV3

誤字を修正しました。


 008


「最初に出てくるぶよぶよは弱いけど、途中から強い魔物もでてくるから、油断はしないようにな」


 姉妹二人が緊張気味にこくこくと頷く。


「せっかく服を新調したのに。先輩、もうお仕事なんですか?」


 姉妹とお揃いが良いと言って勝手に布の服に着替えた西川が唇を尖らせている。

 年の差ほども身長差がないのであれだが、西川の装いは、布の服をオーバーサイズのドルマンチュニック風に着こなしていて、ミニ丈ワンピースを髣髴させる。


 うん。どこから見ても、今から戦闘に向かうという格好ではないな。


 タイトスカートより若干丈が短くなっている。こんな装備で大丈夫なのか? 魔物の攻撃に対する防御力を心配する前にスカートの裾の防御力を何とかして欲しい。


「先輩、えへへ、足とか見すぎですよ」


 いいから、足を見せようとポーズを取るな。


「個人的にはOLの格好で戦う姿の方が好みだったな」

「やっぱり、私服と戦闘服は別物ですね。着替えてきます」


 しまった。本音が漏れてしまった。つまらないことを言ったことを後悔する。姉妹が微妙ににまにましている。


「一条様、もちろんこの菊千代は一条様のプライベートに深く首を突っ込むことなど致しませんが、正直に申しまして、引きます」


 菊千代が若干距離をとっていた。やかましいわ。


 西川の着替えを待って攻略再開だ。


 ぶよぶよを姉妹ふたりに蹴散らしてもらってから索敵を発動。

 左に4匹、ウリボーだ。右に8匹。ウリボーが2で後は不明が6。

 道が増えた分数が増えたな。

 まずは、肩慣らしに左に進む。


「小型の猪が出てくるぞ。真っ直ぐに突っ込んでくるから真横に避けるように」


 言ってから気付いたが、通路が広くなっているな。幅は2.5メートル位だ。天井も少しだけ高くなっている。


「いました」


 ウリボーだ。2匹がこちらに気付く。いきなり複数かよ。

 これは先手必勝だ。突進してくる前に仕留めよう。遠距離攻撃は楽だな。


「ミコの撃つ魔法は俺達には当たらないから気にせずに撃っていいぞ。ユウは注意して撃ってくれよ?」


 背中を撃たれるのは勘弁だ。

 姉妹を壁側に配置して、俺が真ん中若干前気味、斜め後ろに西川を立たせて壁役になる。


「はい」「うん」


 二人の声が重なる。


「よし、攻撃開始。ミコ、ユウ、正面の敵に攻撃」

「はい!」


 ミコのファイヤーボールとユウの放った矢がウリボーを殲滅。

 後の2匹も同様に殲滅。威力ありすぎるな。ミコのSP残量を気にしつつ前進だ。


 迷宮は前回行き止まりだった所がふたつに別れて延長していた。このままねずみ算式に道が分かれていくと考えると気が重い。次で8ヶ所、その次が16ヶ所、32、64か。物理的に全部が分かれ道で独立するのは無理なんだろうけど、探索する範囲が増えるということは敵とのエンカウントが増えるということで、疲労も増える。


 さすがにこの先1回の探索で終了とはいかなくなる時がくるな。

 誰だよ暇になるとか考えてたやつは。


 左側の通路を制圧完了して、てくてくと戻る。効率良くいこうと思ったら一度迷宮から離脱すればいいと気付いたのは最初の分岐地点に戻ってからだ。次からはそうしよう。


 右通路のウリボーをやっつけたところで姉妹のレベルがアップ。


 → PMミコはレベルアップ Lv.2→Lv.3

 → PMユウはレベルアップ Lv.2→Lv.3


 今のところポイントは温存だ。

 姉妹と西川のステータスも菊千代に依頼して上げてもらう。イージーモードで良かったよまったく。


 自分達のスキルポイントを溜めないとな。獲得経験値をパーティー単位での習得にして人数分で割る形に変更する。これで楽してレベルアップだ。


 さて、ここからは初見の敵だ。


「この先の敵は初めてだから様子見しながらいくぞ」


 全員こくこく頷く。よし精神的にも大丈夫そうだな。

 次に見えたモンスターは少し毛色が違った。


「キャベツかな?」

「おやさいみたいです」


 姉妹が首をかしげている。

 緑色のサッカーボールくらいの大きさの植物が不自然に洞窟内に発生している。怪しいってものじゃない。

 攻撃パターンが不明なので戦いにくいな。ちなみに地面に生えているので動かない。


「少し距離を詰めるから、ここで待っててくれ。危なくなったら攻撃してよし」


 遠距離攻撃の手段があるので楽勝かもしれないが、この先いくらでも出てくるのだ、情報収集が必要だ。

 一歩ずつ近付いていく。近付けば近づくほどキャベツだな。この迷宮はまともな感性を持っていないのか? 何故こんなに魔物が個性的なんだ。

 残り1メートルの所で植物の茎が伸びて攻撃してきた。なるほど。

 下がって茎を避ける。


 → 一条光輝の回避スキルが上昇しました。 Lv.0→Lv.1


 回避スキルを自力でゲットできたか。熟練度が上がったらしい。意外とスキルは簡単に上がるものなのか? いや、戦闘系スキルの最大値は10だから低レベルの時は良く上がる仕様だろう。でもポイントであげると1ポイントだよな、チート感すさまじいな。


 待てよ。この先迷宮ポイントを節約しようと思ったらレベル2程度までは自力で上げたほうがよさそうだ。緊急時は除いて試してみる価値はあるか。


 後ろで心配そうにみている3人に合図を送る。


「ユウ、攻撃だ」

「はい」


 矢が植物に突きたつ。さすがに一撃では沈まないか。


「次、ミコ」

「はい。レベル1ファイヤーボール!」


 ファイヤーボールがぶつかるとキャベツはあっという間に燃え尽きた。火が有効な敵なのか。

 次は攻撃の順番を変えよう。効率よくいかないとね。

 ドロップアイテムは野菜各種だ。バランスのいい食生活は大事だからやはり野菜をドロップする魔物がいたか。


「よくやったぞ二人とも」


 しっかり褒めると姉妹ははにかんでいた。うんうんなんだか兄になった気分だ。

 褒められなかったからって拗ねた顔をするな西川。子供か。

 残りは遠慮せずに姉妹に遠距離攻撃でキャベツを殲滅。野菜がたんまり手に入った。


 → 一条光輝はレベルアップ Lv.5→Lv.6

 → PM西川はレベルアップ Lv.5→Lv.6

 → PMミコはレベルアップ Lv3.→Lv.4

 → PMユウはレベルアップ Lv.3→Lv.4


 全員仲良くレベルアップだ。

 迷宮ポイント残り21ポイントか。

 西川の回避スキルだけでもあげておくか。

 姉妹はとりあえず温存だな。


 予想通りボスもキャベツで、大きさが違うだけだったのであっさり姉妹に制圧された。


 → PMミコはレベルアップ Lv.4→Lv.5

 → PMユウはレベルアップ Lv.4→Lv.5


 姉妹がさらにレベルアップ。

 ドロップアイテムのひとつに米俵が出てきて脱力してしまう。

 嬉しいけど調理用の器具がないから宝の持ち腐れだ。

 ぽんっと宝箱が現れた。迷宮からのお祝いか。西川とユウは大はしゃぎしている。


「え? 宝箱?」


 子供のミコですら頬を引くつかせている所を見ると相当この迷宮はイタイ。

 西川、お前よりミコの方が精神年齢が高いぞ、反省しろ。

 宝箱からは魔法の書が表れた。


 → 一条光輝は魔法書(回復)を獲得した。


 あとはノミと万能やすり?

 迷宮め俺の思考をトレースでもしているつもりか? 欲しいものをポンポン出しやがって。

 アイテムを拾って迷宮攻略終了。次は4時間後だからご飯を食べる余裕は十分にある。

 それから定番の回復魔法だ。誰に覚えさせるかは後でいいか。今の所、必要に迫られる場面はない。

 そろそろ強制排出されるだろうし。


「コーキ様、なんかヘンだよ?」


 ユウが怯えて近付いてくる。ミコも不安そうだ。西川がミコの頭を撫でて安心させている。

 俺も安心させるようにユウの頭を撫でてやる。


「ああ、心配ない。迷宮を攻略したら外に送ってくれるんだ」


 おなじみのマーブル模様に辺りが包まれて、晴れると迷宮の外だった。


 → 迷宮が成長しました Lv.3→Lv.4


「おつかれさん。休憩してからもう一度行けるか?」


 姉妹はこくこく頷いている。

 その前に腹ごしらえだな。


「食事の準備をしたいから手伝ってくれ」

「はい、でも……」


 ミコは困った顔だ。ま、調理器具がないからね。三食リンゴ生活だったし。


「せめてまな板があればいいんですが」


 いや、そういう問題じゃないだろう。


「ああ、少し待っててくれ」


 試したいことがある。

 待てといったのに不安なのか興味に負けたのか3人はとことこついてきた。

 まずは、服の端を少し水で濡らす。息を吹き掛けて乾燥させる。


 → 一条光輝は乾燥のスキルを獲得した。


 菊千代にレベル3まであげてもらう。


 次に適当に木を斬り倒す。伐採スキルがあるから楽勝だ。

 倒れた木に手を当てて、ここで覚えたての乾燥スキルを発動。

 生木は燃えにくいし加工もしづらいからね。

 見た目で変化はわからないけどSPが減少しているのだから大丈夫だろう。


 斧で適当な大きさにぶったぎるのはさすがに手強かった。ノコギリがほしいな。

 大きさに合わないものは薪にしていく。


 → 一条光輝は木工細工のスキルを獲得した。


 よしきた。レベルを3まであげてもらう。残り15ポイントだな。

 斧とグラディウスで器用に木材加工をしている俺に姉妹の目は釘付けだ。


「先輩、前世は木工職人ですか?」


 いや、会社員だよ。知ってるだろうが。というか、前世ってなんだ? 俺は死んでないし生まれ変わってもいないぞ。まったく。


 ブロック状の木材を4つ用意できた。

 ドロップアイテムからノミを出してサクサク木を削る。最後にやすりをかけて簡易木皿の完成だ。あとは、肉から油を取って馴染ませればいい。残った材木からフォークっぽいものも作成。スキル半端ない。まな板は簡単だった。


「すごいです、コーキ様」

「すごいすごい」


 姉妹がはしゃいで褒めてくれる。

 ありがとうよ。ま、スキルの恩恵だけどな。

 鍋とか鉄板がないから凝ったものは作れないが、りんごをかじる生活から一気に文化的になった。


 食事の後は暇潰しに予備の食器をいくつか作成。角材も作成。拠点をグレードアップするために暇を見て作成していこう。


「一条様、迷宮が開かれました」


 さて、お仕事再開だ。


読んでいただきましてありがとうございます。

楽しんでいただけましたら幸いです。

ブクマ、評価、ありがとうございます。励みになります。

では、失礼しまして。

もし、気に入っていただけたり、続きを読んでみたいと思われましたら、ブックマークとこの下にあります評価の入力をお願いします。(評価感想欄は最新話にしかないそうです)

感想もお待ちしております。続きを書く励みになります。

よろしくお願いします。

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[良い点] なるほどねー。 草汁混ぜ混ぜが先かと思ったらそんなものを……。 [気になる点] そんなにダンジョン育てて大丈夫?
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