第40話 おしまい
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さて、その後の事を少しだけ話そう。
迷宮攻略は順調だ。
「体……重いです、先輩」
腹が出っ張って大好きなゴロゴロが出来なくなった西川は不満そうだが幸せそうに笑っている。
「ああ、西川殿、体が冷えますから直接寝転がらないでください。あと……体重管理をしっかり行わないと出産後に後悔しますよ」
西川の側にはミコとユウが付き添っているというのに、イッカはお付のように世話を焼いている。
「あの、族長、あまり体を激しく動かされましては……」
イッカに付いている鬼人族の少女も呆れ顔だ。
イッカのお腹も西川ほどではないが膨らんでいる。
迷宮攻略と言っても戦闘する場面は激減、ヤボ用でデスクワークが多くなった結果、そういうことになった。この小さい体でも子供が作れてしまうのだから不思議だな。
西川はともかく、イッカの懐妊というのは色々と配下で揉めたらしい。
鬼人族だけが妾を差し出すというのは今後の火種になりかねないからと、兎人族からは順当にウサコが、猫人族からは渋々な態度のシルヴィが、犬人族に至っては喧々囂々の話し合いの結果、未婚者であるワンコが選出された。
人族代表としてミコが候補筆頭にあがっているという怖い噂もある。
「まったく……どうして人族というのはこうも繁殖力に優れているのだろうね、根がスケベなんだろう、ぽんぽん数が増えるわけだよ」
お前が言うな、ヤハス。
ゆったりとしたチュニック姿で目立ち始めたお腹を大事そうに撫でているのはエルフだ。
実は女で――まあ、ヤハスの名誉のために経緯は伏せておこう。このエロフめ。
俺達が育てる迷宮は無事七層に進化した。
ヤハスが予想した通り、七層は人族が中心の国が乱立する世界で、異種族はかなり比率を減らし絶滅の危惧にある状態だった。
そこで一計を案じ、迷宮外にあった迷宮都市を遷都するという大胆な策を発動。
七層に引越しをした。
ヤハスは迷宮育成者の癖に育成は成り行きに任せるというスタンスだったので、北の国の消失でまた帝国と王国の戦争時代に逆戻りかと危惧したが、ここでおかしなことが起こった。
どこで噂を聞きつけたのか、迷宮都市の引越しに伴い、大量の冒険者ギルド加入者の殺到という事態が発生したのだ。
これは連鎖的に両国に広まり、国民が大量に流出。
様々な異種族もこれに便乗。
国の運営が出来なくなるまで減少したところで、帝国貴族も王国貴族も帝位や王位や爵位を捨てて冒険者ギルドに加入する事になった。
まあ、民が流出してしまい生活もままならない状況に追い込まれてしまえば仕方がない。
結果的に、王国と帝国の過疎化は爆発的に進み、最終的に人口はゼロとなった。
ヤハスの管轄である迷宮外六層は、これを攻略と判断して進化を開始。
結果、七層は人型の生物は一切存在しない、野生動物の王国となったらしい。
「まったく、こんな傑作な話はない。500年生きてきたけどこれほど笑ったことはなかったよコーキ」
ばしばしと背中を叩くヤハスは少しだけ涙ぐんでいた。
先代を思い出したのか、笑いすぎただけなのか判断が難しいところだな。
ヤハスはこの七層をこのままの形で放置するらしい。
迷宮七層におよそ一年の歳月を掛けて迷宮都市を建設。移設は完了した。
拠点の場所と入口が変わっただけで後は元通りだ。
近い将来外交も必要になるのだから、帝国と王国の貴族の希望者から役職としての貴族を選出した。公僕と言うやつだな。
貴族令嬢からの熱い視線は今のところ気づかない振りだ。
嫁は間に合っていますので。
七層のフィールドには魔物が存在するため、冒険者ギルドの活動は、主に七層の攻略となった。ハマンが大喜びしていたからまあいいだろう。異種族の勧誘を平行して行ってもらっている。
強敵もいるかもしれないのだから慎重に頼むぜまったく。
旧一層から四層までは訓練用兼生活用品の確保用扱いになっている。
セイフティネットの役目も果たしているので、食うに困る奴はいないだろう。
密かに迷宮教というよりイッカ教? 信者が困った人を救済しているらしい。どこにでも影響を受けるやつというのはいるものだ。
六層からの進化した街なので、どこかに迷宮教も残っているだろうし、その内、この国が総本山になったりするのかもしれない。期待しておこう。
ともあれ、俺が目的とする事はただひとつ。
人族以外の異種族を排除するなんてくそったれな方法ではない攻略方法を探すことだ。
そのために、この世界で絶滅危惧種とされている異種族を糾合して人族と対等に渡り合えるだけの数を確保する。地位も権利もな。
この世界の住人も出来れば旧一層から四層のダンジョンに入れるようにならないか、菊千代に調べてもらっている。
初期育成がかなり楽になるからな。
強すぎず弱すぎずのバランスのいい関係を作り上げよう。
攻略は始まったばかりだ。
のそのそと這ってきた西川が座る俺の横でゴロンと転がる。
ライバルは多いですが、きっと先輩を満足させてみせます、私のダンジョンで!
なにやらぶつぶつと呟いて、気合を入れているが、言ってる意味はわからなかった。
「西川、もう少しだけ待ってくれ。必ず元の世界――に近い所に帰してやるからな。ご両親に挨拶にいけないのは申し訳ないが我慢してくれ」
「いえ、先輩。私はここで先輩と一生を添い遂げても全然平気です。先輩がそのちんまい体で両親に頭を下げている場面は見物ですから非常に残念ですが――」
よいしょと、西川は俺の足に頭を乗せるとにへらと笑う。
「先輩の側が、私の居場所です」
読んでいただきましてありがとうございます。
楽しんでいただけましたら幸いです。
これで終了です。
なろう初挑戦でしたが、なんとか書き終えることが出来ました。
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ノクターン版はまだ連載中です。閲覧可能な年齢の方は、是非お読みください。
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